日本は地震大国です。
地震発生率が低いと言われていた熊本、北海道、能登半島でも
大きな災害に見舞われたことを考えると、
国内で安全と言えるところはないようです。
そして、
この地震災害は賃貸経営にも大きな影響をもたらします。
今回からシリーズとして
「賃貸経営と地震災害」について特集してまいります。
そのテーマは、
1.地震災害がもたらすリスクとは
2.オーナーが準備できること
3.地震に備えるための保険加入を考える
4.起きた時とその後にやるべきこと
以上の4回に分けてお伝えする予定です。
第1回は「地震災害のリスク」です。
地震が賃貸経営に与えるリスクは大きく分けて2つあり、
一つ目は「想定外の修繕費負担と家賃収入の減少」です。
地震による建物の被害は全壊・半壊・一部損壊など程度は様々ですが、
いずれにしても想定していなかった莫大な費用負担となります。
このリスクを軽減できるのが地震保険への加入なのですが、
その詳細は第3回目の「地震に備えるための保険加入を考える」
で解説する予定です。
さらに建物修繕している期間は家賃収入が途絶えるので、
これも想定外の甚大な被害です。
少しでも建物被害を軽くするためには必要な耐震補強をしておくべきですが、
これについては第2回目の「オーナーが準備できること」でお伝えいたします。
さて二つ目は、
今回のメインテーマである「大家さんが損害賠償請求されるリスク」です。
地震による建物倒壊で入居者が下敷きになったり、
外壁などの落下で怪我をするなどの被害が発生し得ますが、
その被害者や遺族から建物所有者が訴えられる、
というケースが実際に起こっています。
これは建物所有者には、
建物・設備の不備で他人に損害を与えた場合は責任を負う、
と法に規定されているからです。
「建物が壊れるほどの大きな地震は不可抗力なのに、
なぜ大家が責任追及されるのか!?」
という疑問はもっともですが、
あくまでも「建物・設備に不備がある場合」という条件がつきます。
その不備とは何なのか? これが気になるところです。
その答えのひとつは「建物の耐震性能」です。
ご存じの通り、
建築時のベースとなる建築基準法という法律で
耐震基準が定められています。
1950年(昭和25年)に制定されましたが、
31年後の1981年(昭和56年)に耐震基準が大きく改正されました。
この3年前の1978年(昭和53年)に
仙台市を襲った宮城沖地震による被害を受けて法律が改正されたのです。
改正前(旧耐震基準)と改正後(新耐震基準)に建てられた
建物の耐震性能には大きな差があります。
旧耐震基準の建物は築44年前後になるので数は多くはないと思いますが、
もしこの建物が、耐震診断とそれに伴う耐震補強をしていないとしたら、
前述の「不備」に該当することになるでしょう。
その後も、1995年(昭和60年)には、
新耐震基準に満たない建物は積極的に耐震診断や改修を進めると
いう主旨の「耐震改修促進法」が施行、
さらに2000年(平成12年)に「建築基準法と建築基準法施行令」の改正で、
木造建物にはさらに高い耐震基準が設定されています。
「建物・設備の不備」と評価される範囲が広がることで、
賃貸経営のリスクも増大しているわけです。
実際に損害賠償の判決が下された事例をみてみましょう。
1995年阪神淡路大震災の、
神戸市の3階建てマンションで下敷きになり4人の犠牲者を出した裁判では、
所有者に1億2900万円の支払いが命じられています。
2011年の東日本大震災の、
築50年以上の建物(旧耐震基準)が倒壊し住人が重傷を負う事例では、
耐震診断と補強が実施されておらず、
貸主に1,000万円以上の損害賠償が確定しました。
また築40年のアパートの、
外壁が崩落して通行人にケガを負わせたケースでは、
修繕不足が原因とされ300万円以上の賠償金が発生しています。
これらの判決の判断は、
通常予測される範囲の地震に耐えられる構造か、
建設当時の耐震基準を満たしているか、などが基準となっているようです。
では、建物所有者としては、
これらのリスクにどう備えればよいのでしょうか?
以下にまとめてみました。
建物の耐震診断を実施する
ある程度の築年を経ているのに、
まだ耐震診断をしていないなら、一度 点検してはどうでしょうか。
特に外壁のひび割れや劣化部分は見逃されがちです。
耐震補強を行う
検査によって必要と診断された補強については
実施しておいた方が安心です。
補助する自治体もあり、調べることができます。
詳細は次回の「オーナーが準備できること」でお伝えいたします。
地震保険に加入する
地震による損害に備えるには地震保険が重要です。
こちらも3回目のレポートで詳述いたします。
賃貸経営のリスクはゼロにはできませんが最小限にとどめることは可能です。
シリーズを通して、ご一緒に考えていきましょう。
【賃貸経営と地震災害①】 地震災害がもたらすリスクとは への3件のコメント