大家様から空室のご相談がありました。
物件の概要は以下の通りです。
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・1992年3月築の木造アパート(築32年)
・総戸数12戸で空室は7戸(空室率58%)
・間取りは、1R(26.4㎡)と1LDK・2DK(41.25㎡)
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このように、
当社以外の不動産会社さんが募集していた物件のご相談を受けた時は、
原状について詳しくヒアリングをさせていただくことにしています。
その結果、以下の事情がわかりました。
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・管理は新築時から同じ不動産会社に依頼している
・築20年超の頃から空室の長期化が目立ちはじめた
・不動産会社からは空室対策の提案はない
・募集はすべて不動産会社に任せている
・建て替えも売却も考えていない
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以前、大家様に「賃貸経営で困っていること」を尋ねたことがあります。
結果は、
1位「長期空室」、
2位「管理会社から提案がない」、
3位「空室率の悪化」でしたが、
今回のご相談は、これらの全てに当てはまっていました。
同様の悩みを抱えている大家様は多いのではないでしょうか。
ご存じの通り、長期空室には原因があり、
それを取り除けば必ず決まります。まず原因を知ることが第一歩なのです。
そのステップなしで、
「家賃を下げる」
「設備を取り付ける」
「間取りを変える」
などと提案するのは早計です。
診察なしで、いきなり注射を打とうとする医者のようなものです。
そこで現地確認と近隣物件調査をしたところ、
以下の3点が原因としてピックアップされました。
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インターネットへの掲載が大手ポータルサイト1社のみで反響が少ない。
ターゲットとしている入居者層が求める必須設備が付いていない
上記設備が付いている近隣競合物件と同等の賃料設定なので見劣りしてしまう。
礼金も設定されていた。
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以上のように、
原因が想定できれば対策案を検討することが可能になりますが、
ここで重要なのは「答えは1つではない」ということです。
大家様の賃貸経営に対する方針によって処方箋は異なります。
今回の大家様は「建て替えも売却も考えていない」と仰っていました。
もし「10年でも20年でも続けたい」と考えているなら、
外壁塗装やリノベーションもあり得ます。
もし「5年くらいで終わりにしたい」と考えているなら、
大きな投資は控えて、賃料や募集条件の調整を主にした方がよいでしょう。
それらを考慮して、
今回のご相談では、以下のような提案をさせていただきました。
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1.設備の追加
近年の防犯意識の向上でTVモニターホンは必須の設備といえます。
また近隣のファミリー物件の半数に温水洗浄便座が導入されています。
この2点の追加を提案しました。照明は備え付けとし、
リモコン付きシーリングライトを設置しました。
2.インターネット無料
10代~40代のネット利用率は90%を超えていて、
部屋でネットが使えることは不可欠であり、募集条件としても必須となっています。
3.賃料の再設定
上記1と2を追加したうえ、周辺競合物件の調査・比較により賃料査定を行い、
客付けが可能と思われる一番高めの賃料に設定しました。
4.インターネット掲載
3つの大手ポータルサイトと、地域で反響率の高いサイトのすべてを活用。
写真もサイトの上限枚数を載せ、特に新しい設備と「インターネット無料」を強調しました。
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この提案によって、オーナー様は一部屋あたり10万円近い出費となり、
募集賃料も少し下げることになりました。
経費を投下しても募集賃料は下がる、という苦しい提案となっています。
しかし、空いていた7部屋は、再募集を開始してから4ヵ月で埋まり、
何年ぶりかで満室となり、投資した費用は数ヶ月で回収できました。
さらに大家様には、前から入居している5部屋にも、
TVモニターホンと温水洗浄便座を付けて差し上げることを提案しました。
後から入居した人の設備を知れば不満となりますので、
それを先回りして回避する必要があります。
12世帯を一緒に工事することで割安にもなりました。
ここで紹介した必須設備やサービスは、
地域の状況や物件タイプによって異なりますので、
それぞれの実情に合わせて、効果のある対策を講じる必要があります。