今年も残り3ヶ月となりました。
学期末というと、
先生からいただく成績評価を思い出しますが、
賃貸経営でも通信簿をつけてみてはいかがでしょうか。
その目的は成績を客観的に知ることと、
来期によりよい成績を収めるめの行動計画を決めることです。
では、どんな数値で賃貸経営を評価すればいいか?
これが問題です。
すぐに思い浮かぶのは「稼働率」。
一年間で貸室が埋まっていた割合です。
とても重要な数値ですが、
一年の実績を稼働率のみで評価するのはお勧めしません。
もし適正賃料よりも安い条件で貸し出されていたら、
それが原因で部屋が埋まっているのかもしれないからです。
行き過ぎたフリーレントや、
多く支払い過ぎた入居斡旋の謝礼金も同様です。
もちろん、入居条件のサービスや、
適度な販促費を否定するわけではありません。
「収益」はどうでしょうか。
賃貸経営の目的のひとつは「収益の確保」ですから、
通信簿に使うことに異論はありません。
しかし、これも、この数値のみで評価するのはお勧めしません。
もし、3年か5年の期間を見据えて、
リフォームなどの投資をした場合は、
単年度の収益では正しく評価できません。
賃貸経営は短期的視点よりも長期的視点でみるべきなので、
「今年の収益」だけでは判断できないのです。
さらに、収益だけでは来年の課題が見えません。
つまり、収益の結果を見るだけでなく、
「あるべき収益」を知る必要があります。
「取り逃がした収益」ともいえます。
もう少し、収益について掘り下げてみましょう。
以下が収益を算出する計算式です。
———————
家賃等収入-運営費=収益
———————
収益を確保するには、収入を上げるか、運営費を下げる、
ということになります。
じつは、この計算式の「家賃収入」は、
“満室なら得られるべき家賃収入”から
“発生したロス”を差し引いた結果です。
つまり、
———————
満室時の家賃等収入-発生したロス
=(結果としての)家賃等収入
———————
となっています。
つまり、来年の家賃収入を増やすには、
「満室時の家賃収入を増やすこと」と
「発生するロスを減らすこと」が課題ということになるので、
この2つが、来期の行動計画に無くてはならない数値になるのです。
満室時の家賃収入を増やすには、
外壁塗装や貸室のリフォームかリノベーションという投資が必要になるでしょう。
しかし投資をすれば、運営費が増えて収益を圧迫するので、
その判断は単純ではなく、前述した長期的視点が必要です。
一方、発生するロスの代表は空室です。
空室は「退去の発生」と「空室期間」に分けて考えると分かりやすくなります。
退去の発生はゼロにはできませんが、
不要な退去(施設や管理や他の入居者への不満によるもの)を減らす工夫はできます。
空室期間も、募集を早く効率よく行う、
原状回復工事の期間を短縮するなど、
取り組むべき項目はいくつもあります。
これらを工夫することで、
今期より来季の家賃収入を増やすことを目標にできるなら、
通信簿をつける意味があるのではないでしょうか。
「結果としての家賃収入」だけ眺めても課題は見えてこないので、
「本来あるべき家賃収入」と
「ロスの削減」を目標値とすることをお勧めしています。
以上から、通信簿に採用する数値として
「満室時の家賃等収入」「空室ロス」を加えることを提案しています。
———————
①満室時の家賃等収入-空室ロス=家賃等収入
②家賃等収入-運営費=収益
———————
この2つの計算式の、
一年の結果と、来年の予算と、両方を併記することで、
「今年の反省と来年の計画」を明確にするための材料とする、
ということです。
そして、リフォームやリノベーションなど、
多額の費用を投資する予算計画のときは、
目標計算式は3年か5年の複数年でを作る必要はあります。
もし、リノベーションに500万円をかけたなら、
一年で100万円ずつ計上するなどして
運営費を適正化しないと本当の評価とならないからです。
この通信簿は面倒だと思いますが、
経営に事業計画が必要という意見にはオーナー様も異論はないでしょう。
たしかに、賃貸経営は事業計画がなくても運営できますが、
知らないところで機会損失を起こしているかもしれず、
気づかずに、もし手元のキャッシュが失われているとしたら怖いですね。
以上のように、適切な通信簿をつけることをお勧めするのですが、
これが簡単にできるのは不動産投資の専門家くらいです。
では、誰がこの予算計画を作成するのか? というと、
それが管理会社の役目です。
管理会社はオーナー様の賃貸経営の収益に貢献するのですから、
この知識と能力を持っていることが期待されます。
一度、相談されてみてはいかがでしょうか。