マンション高騰で地価上昇傾向が続く
2024年度の公示地価が3月26日に公表されましたが、
今年も全国的に住宅地や商業地の上昇傾向が続いています。
特に都市部や交通至便エリアの周辺の上昇が顕著になっており、
三大都市圏などではマンションの高騰によって、
価格が手頃な周辺部へ需要が拡がっているようです。
一例として、千葉県市川市や流山市など、
都心へのアクセスが良い住宅地が
10%を超える上昇率を記録したように、
都心はマンション価格が高くなりすぎて、
子育て世帯の中には郊外に新居を求める人が増加中で、
平成のバブル期を彷彿とさせます。
地方都市でも、再開発や交通インフラの
整備が進むエリアで地価上昇が見られていて、
東名阪に次ぐ札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢都市では
全体で7%の上昇率を示しています。
半導体バブル。熊本、北海道の次は宮城
半導体工場の進出による雇用創出と住宅需要の増加で
20%前後も地価を押し上げているのが北海道千歳市や熊本県菊陽町です。
最近では、地価上昇の代表としてテレビ・新聞で紹介されていますが、
工場の本格稼働は、熊本で2024年末、
北海道では2027年4月頃の予定といいますから、
周辺への影響はこれからも続くとも予想されていて、
半導体威力の凄まじさを感じます。
昨年、仙台市近郊で半導体工場が新設されると
報道された宮城県内の公示地価は、
仙台市周辺9市町村で上昇が続き、
特に、仙台市近郊の富谷市や大和町では
これから本格的な地価高騰が期待されています。
その一方、沿岸部の23市町では下落傾向が続いていて
二極化が顕著になっています。
ちなみに、半導体工場の建設地はまとまった平地があることに加え、
豊富な水資源の確保が必須で、
さらに輸送に便利な空港に近い土地が求められるそうです。
確かに、熊本、北海道、宮城は全てこの条件に合致しています。
同条件を満たすエリアは、
いつか半導体バブルの恩恵にあずかれるかもしれません。
北海道・長野ではスノーリゾート開発
昨年から続くインバウンド需要の回復も地価に好影響を与えています。
北海道富良野市では、
外国人向け別荘やコンドミニアムの需要増加により、
住宅地の上昇率が27.1%で住宅地として全国トップとなりました。
北海道札幌市内の不動産投資家は、
「北海道ニセコの開発を牽引した
香港系の不動産ファンドが大量に土地を取得している。
ニセコで稼いだ2匹目のドジョウを探す動きが活発になってきており、
富良野が上昇気流に乗ったのは間違いなさそう」と地元の事情を語ります。
長野県では白馬村が最高19.5%(住宅地)、
野沢温泉村が15.0%(住宅地)を記録しました。
どちらも国内でも有数のスキー場があり、
スノーリゾートへの開発マネー流入が背景にあります。
リゾート開発に詳しいビジネス誌の記者は、
「日本には80年代のスキーブームの頃から
設備投資されていないスキー場が多数ある。
雪質の良さに加えて、設備投資することで
価値を引き上げられる点に気付いた海外の投資家が
国内のあちこちに目を付けている。
富良野や野沢温泉に加え、
岩手県の安比高原も次の開発候補に上がっている」
と語っています。
北陸新幹線延伸の福井、影響は限定的か
鉄道の新路線整備も地域の地価を押し上げる要因となっています。
福井県内の商業地の平均変動率は0.2%増となり、
実に32年ぶりの上昇を記録しました。
北陸新幹線金沢―敦賀間の開業で、
福井市を中心に地価が上がり、全体を押し上げたことが好影響を与えました。
地元の不動産会社は、
「新幹線効果で福井駅や敦賀駅周辺で
ホテル建設や商業施設などの需要が増している。
ただ影響はまだ駅周辺だけで、
住宅地も併せた県全体の地価は0.1%のマイナスなので、
新幹線効果がどのくらい続くかはわからない」
と影響を見計らっている状況です。
今後の地価の見通について経済メディアの記者は、
「マイナス金利は解除されたが日本銀行の緩和傾向は続いており、
住宅ローン金利の大幅な上昇は考えにくく、
地価は緩やかな上昇傾向を維持すると予想する声が多い。
ただし、都市部と地方の格差は拡大傾向にあり、
不動産オーナーは、立地条件や周辺環境を十分に見極めた上で、
安易に上昇を期待するのではなく、慎重に投資判断を行う必要がある」
と語っています。