Q.
私の400坪の月極駐車場は、
稼働状況も悪く土地を活かしていないように思います。
そこで、あるテレビCMが目に留まりました。
タレントの岡田准一さん演じる営業マンが
「土地の半分を売却してテナントビルを建てて
家賃収入を得ませんか?」と提案していたのです。
「これはいい!」と思ったのですが安易でしょうか?
ご意見とアドバイスをお願いします。
A.
このCMは具体的に、
資金の工面方法と、何で家賃収入を得るか、
という部分に言及しているところが興味深いのですが、
質問されたオーナー様は、
CMのどの部分に注目されたのでしょうか?
「土地の半分を売却」の部分でしょうか。
それとも「テナントビルを建てて」の部分でしょうか。
実はこの2つは土地活用を考えるうえで重要な課題なのです。
資金の工面方法で事業の大枠が決まる
もし「土地売却」に注目したなら、
これは「事業資金の工面」の問題です。
CMのように土地を売却する手段もありますが、
金融機関から借入れたり、
等価交換で資金なしで収益物件を手にする方法や、
店舗展開するチェーン本部などが資金を負担して建築し、
その家賃収入を得る方法もあります。
もちろん、土地の特性によって選べる方法は限られますが、
資金調達手段によって、土地活用の大枠が決まります。
まず、この資金手当についての、
ご自身の希望や考えをまとめておいてください。
土地活用は企画が命、十分な吟味を
もし「テナントビルで家賃収入を得る」に注目したのなら、
これは事業の根幹をなす「企画」の問題です。
これが土地活用の一番重要なところですね。
テナントビルか、駐車場を備えた店舗か、
マンションなどの賃貸住宅か。
もし賃貸住宅としても、
間取りタイプは?
入居者層は?
建物の構造は? など、
周辺状況を分析し特性に適した企画を
選べるように準備しておきましょう。
提案する会社には得意分野がある
このCMで土地の売却を勧めているのは、
この会社が仲介会社だからでは? と思います。
彼らの得意な分野ですし、それが利益につながります。
もし建築会社の提案なら、
土地のすべてを活用して、
より建築面積が大きくなる企画を考えると思います。
各社は、自分の得意分野の方がお客様の役に立てますし、
利益にもなりますので、
これは当然のことだと思います。
それだけに、提案を受けるオーナー側は、
土地活用に対する自身の希望や考えを
整理・整頓しておく必要があるわけです。
複数の案を検討することで課題が分かる
複数の計画案を考えてもらい、
それをシミュレーションすることで比較ができます。
事例として2つの計画案を検討してみましょう。
1つは、土地の半分を売却して無借金で賃貸建物を建てるA案です。
2つめは、売却せずに借入れして賃貸建物を建てるB案です。
前提として計画する土地を以下のように定義いたします。
——————————
・土地面積 400坪 ・土地の市場価格 坪75万円
・容積率 200%(建築できる延べ面積の限度を表します)
——————————
【A案】
残った土地200坪に、容積率に少し余裕のある150%で、
延べ面積300坪の建物を計画。
鉄骨造マンションを坪50万の見積りで
建築費用は1億5,000万円です。
土地を売った1億5,000万円を充当するので借入はありません
(別に諸費用がかかりますが計算を単純にするために省いています)。
オーナーは土地建物合計で3億円の投資をしたことになります。
この地域の適正な実質利回りが5%と仮定すると、
オーナーが年間で得られる収益は1,500万円となり、
これがキャッシュフローになります。
※実質利回りの収益とは、家賃収入から運営費を差し引いた純利益です。
投資額3億円×適正利回り5%=収益1,500万円
【B案】
土地400坪に容積150%で、
延べ面積600坪の建物を計画。
鉄骨造マンションを坪50万で建築費用が3億円になりますが、
全額を金利2%の30年返済、
元利均等払い(年間返済額約1,330万円)で借り入れます。
土地建物合計の投資額は6億円。
実質利回り5%として年間収益が3000万円。
そこから元利返済額1,330万円を差し引いた
キャッシュフローは1,670万円となります。
投資額6億円×適正利回り5%=収益3,000万円
収益3,000万円-返済額1,330万円=1,670万円
2つの案を比較することで検討課題がいくつか炙り出されます。
単にキャッシュフローの比較なら、
土地を売却しないB案の方が多いことが分かります。
このキャッシュを得ながら30年後には借入れはゼロになっています。
土地も失っていません。
一方でB案には金利が上がるリスクもあります。
(ちなみに、固定金利3%、30年返済で計算すると
キャッシャフローはA案B案で同じくらいになります)
さらにB案には「3億円の借金」というプレッシャーがあります。
普通の人にとっては大きな負担と感じるでしょう。
これらの課題は、
1つの案を検討しただけでは浮かび上がらなかったものであり、
このような比較が、最善案を選ぶためには必要な検証となります。