まだ記憶に新しい静岡県熱海市での土石流災害(2021年7月)
がきっかけとなった盛土規制法が今年5月に施行されます。
先の土石流災害では実に27名もの尊い命が犠牲になり、
今も1名の行方がわかっていません。
この大災害の要因は放置された盛土と言われています。
行政も盛土の存在を把握しておきながら、
実効的な対策がとれなかったことが大きな反省点となっていました。
盛土に関しては、これまでも高さや角度、
排水などの義務が課されていましたが、
森林法 宅地法 農地法など、
土地の用途に応じて規制が異なっていました。
結果として、
それぞれの法律規制を逃れる土地が多数あることが
熱海災害以降の調査でわかったのです。
こうして見過ごされてきた抜け穴を防ぐため、
新しい法律では盛土の安全基準を
一定のルールで統一して規制します。
さらに、違反者には厳しい罰則が課されることになっています。
国交省によると、盛土規制法は、
1)隙間ないルール
2)安全性確保
3)誰が責任を持つか明確に
4)効果的な罰則
の4つを基に作られました。
具体的には、都道府県知事や市長らが、
住宅に被害が出るかもしれない地域を
盛土の規制エリアに指定して、
その場所での盛土は許可が必要になりました。
盛土する場所には、
地形や地質に合わせて災害を防ぐ基準を作り、
工事の途中と終わりを行政が検査します。
国は各都道府県に公表が必要な不適切盛土についての
ガイドラインを示しているとされます。
熱海での災害が法改正のきっかけとなった静岡県では、
ガイドラインを基に、
調査でわかった不適切盛土196カ所を公表する予定のようです。
地元紙によると、
県はこれまで土地の所有者が特定されることを理由に
非公表としてきましたが、
公表することで不法行為を抑止する公益性が
高いと判断したようです。
言うまでもなく、不適切盛土が周知されれば、
周辺の土地利用や資産価値への影響が考えられますが、
行政も人命を優先した対応に舵を切ったようです。
今後、全国の自治体でも同様の動きが予想されます。
静岡県では法改正以前の昨年7月に
独自の盛土規制条例を施行しており、
所管の静岡県警は条例に違反している土地の捜査のために
ドローンを活用しているようです。
悪質な盛土は不動産オーナーにとっても対岸の火事ではありません。
人命と財産を脅かす悪質な盛土を規制する動きに注目しましょう。