質問
20室の賃貸マンションを相続した新米大家です。
教えていただいたように不動産会社の協力で
繁忙期前から空いてた3室を埋めることができました。
お陰様で満室になり一安心なのですが、
これから賃貸経営で特に気を付けることが
ありましたら教えてください。
回答
満室おめでとうございます。
理屈では、
このまま誰も退去しなければ満室が続きますが、
残念ながら退去をゼロにするのは不可能ですね。
退去は大きく分けると2つあり、
1つは転勤や結婚や住居購入などの理由による退去です。
これは防ぐことができない退去です。
もう1つは絶対的な理由はないけど、
不満がある、同じ条件ならもっと良い住居がある、
ちょうど更新なので、などの理由による退去です。
こちらは、不満を解消したり、
周りと比べて遜色ない状態を維持できたら
防ぐことができるかもしれない退去です。
これを防ぐ意識を持つことが重要になります。
1つの退去による収入減を計算してみてください。
査定によっては家賃を下げたり、
リフォームや広告料などの出費も必要になるかもしれません。
もし数ヵ月で決まっても、
その間の収入減と支出増の合計はかなりの金額になります。
もっと長く空室が続くことだってあり得ます。
1つの退去がもたらす損害の大きさが分かりますね。
この損害を防ぐためにできることをすべきですが、
まずは「防ぐことができる退去は防ごう」と決めることです。
こう決心することが大事だと思います。
賃貸住宅では、
借主の居住期間の平均値が計算できます。
その値は地域や物件タイプによって異なりますが、
同じ地域の同じタイプでも差があるはずです。
ぜひ平均値の長い物件にしていただきたいのです。
もし相続したマンションの平均が5年だとすると、
年間で5分の1の4部屋が退去していることになります。
3ヵ月に1件の頻度ですから意外と多いと思われるのではないでしょうか。
そのたびに次の募集に頭を悩ませなければなりません。
この中には「防げない退去」と
「防げるかもしれない退去」もあると考えられます。
平均5年といっても、
10年以上暮らしている方と2年足らずで出ていく方が
混在しているのが普通です。
この20世帯の契約内容を調べたときに、
仮に7年以上暮らしている方が約3分の1の7世帯、
3年未満の方が同じく約3分の1の7世帯だったとします。
これはあくまで回答者の私見ですが、
7年以上暮らしている方は、
今まで問題なく住んでいたのですから、
今後、住居への不満で退去する可能性は少ないでしょう。
ただし、不満を持つ可能性があるとしたら家賃の差です。
もし同じ間取りタイプなのに、
7年暮らしている方のほうが3年の方より
高い家賃を負担していたら、
それは不満の原因になるかもしれません。
これは家賃相場が下がっているときに起こる現象ですね。
「だから家賃を下げましょう」
と短絡的に言っているのではなく、
この状況を知ったときに賃貸経営としてどう判断したらよいか、
ということです。
家賃を下げなくても暮らし続けていただけるかもしれません。
一方で、1つの退去による損害を私たちは知っています。
ちなみに、家賃を下げるのではなく、
借主さんが希望する設備(エアコンやシャワートイレなど)や
家電をプレゼントするとか、
生活に支障のない範囲でプチリフォームするという選択肢もあります。
こちらの方が大家さんの資産価値が増えることになりますね。
では、この家賃ギャップを埋めるタイミングとして
いつが適しているか? というと、それは更新だと思います。
地域によって合意更新や自動更新など慣習は異なりますが、
長く暮らしてほしいと考える貸主にとって、
更新してもらえるのは有り難いことですから、
その時点でギャップが生じているなら、
サービスを検討してもよいと思います。
その他に退去を検討するような不満を持つ理由として、
入居者同士のトラブルが考えられます。
他の世帯の生活音が気になるとか、
最低限のルールを守らない人がいるとか、
小さなことでも蓄積すると退去の理由になるでしょう。
特に騒音の問題はデリケートですから、
当人同士の交渉に任せるのではなく、
貸主側が解決のために動いているという事実を示すのは大切です。
もし上階と下階でもめているなら、
部屋を替わっていただくことで解決になるかもしれません。
あるいは対象は人ではなく、
共用部がいつも汚れているといった
住環境の悪さが理由となる場合もあります。
これらは賃貸経営の基本として
「住みよい環境を提供する」という原則を徹底することです。
「防ぐことができる退去は防ごう」と決めたのですから、
そのために当然に必要となる心構えですよね。
頑張ってください。
本当の空室対策は満室後に始まる への1件のコメント