A
新型コロナ問題がなかなか収まりません。今回は、コ
ロナが賃貸経営に与えた影響と今後の「あり方」につ
いて考えたいと思います。
B
去年の4月頃にある専門家が「コロナが収まるまで2
年以上かかる」と言ってるのを聞いて「まさかー」と思っ
てましたが、それが現実になりましたね。
C
完全な終息は諦めて共存していくしかないみたいです。
ウィズコロナですね。
A
まず、コロナ騒動が始まったばかりの去年4月5月の
時点では、賃貸経営はコロナ不況から「空室」と「滞納」
という大問題に襲われるのでは、と言われましたね。
実際にはどうだったのでしょうか︖
D
もちろん地域差はあると前置きした上ですが、居住用
物件とテナント物件で大きく異なりますね。テナント
賃貸は、店舗や事務所の撤退が相次いだので空室率は
かなり悪化しました。賃料の減額請求も多く寄せられ
たと聞きますね。
E
それに対して居住用は、総じて心配したほどの事態に
はなりませんでしたね。コロナによって新規需要は減っ
たけど、移動の自粛で解約も減ったので、プラスマイ
ナスで大きな空室率悪化にはならなかった、というこ
とでしょうか。
B
去年春の新規需要と言えば、単身者向けの物件が一番
に影響を受けた感じがあります。僕の1K マンションで
も学生や外国人や法人需要が減りましたからね。
C
たしかに去年3月の転勤は減ったようです。でも秋に
はかなり戻ったとも聞きますね。
D
空室問題に関係する話題として、新しい借主のニーズ
が生まれましたね。リモートワークが増えたことによっ
て、入居者アンケートの上位に「仕事専用スペース」「宅
配ボックス」「換気や通風」「遮音性」「部屋数」などへ
の要望が並ぶようになりました。今まで言われていた
「日当たり」や「駅近」より上回ったようです。それを
求めての転居が増えたのですよね。
E
以前は不人気だった「部屋数の多い物件」が見直され
ている、ということですね。そういう物件を所有して
いる大家さんにはチャンスになります。
C
その利点を強調することが大事ですね。
D
もうひとつ、リモートワークにはインターネットが必
需です。それも、「ただ使える」よりも「高速でサクサ
ク使える」というニーズに変化しています。
B
「インターネット無料物件」が増えていると聞きますが、
そこに「高速」という条件も検討課題ということですね。
これらは、今後もコロナと共存の賃貸経営を模索する
ときに、とても参考になるニーズです
A。
滞納はどうですか︖景気悪化が長引けば、当然に収入
が減少して滞納が増える、という連鎖が起こると予想
されていましたけど。
E
じつは興味深いデータがありまして、公益財団法人日
本賃貸住宅管理協会の家賃滞納率の推移を見てみると、
2019 年より2020 年の方が良くなっているのです。具
体的には全国の2 ヶ月以上の滞納率が、2019 年の
1.0%が2020年に0.9%に、若干ですが改善しています。
B
その理由になるか分かりませんけど、不動産会社や家
賃保証会社が、入居者に受給が可能な各種助成金申請
をサポートしながら家賃を回収していると聞きました。
E
当面の生活資金が確保できる緊急小口資金や総合支援
資金とか、家賃の負担を軽減する住居確保給付金など
の情報提供とサポートですよね。僕もこれらが、滞納
率が悪化していない理由のひとつなのだと思います。
D
一方で、リーマンショック以上の景気後退と言われて
ますから、これから失業率の悪化などの影響が出てく
る可能性もあります。特に非正規雇用の失業率は心配
です。コロナ禍が続く中では滞納について油断はでき
ないですね。
C
住居確保給付金は、今年から最長12 ヶ月までの給付可
能となりましたからね。今後も入居者へ積極的に助成
金などの情報提供をしていくことが大事ですね。
D
それから、賃貸経営者向けの給付金や軽減措置もあり
ますから、該当する大家さんは活用すべきですよね。
A
今回のまとめとしては、テナント賃貸は別として居住
用賃貸は、新型コロナの影響は限定的なレベルで済ん
でいる、と言ってよいと思います。ただ、コロナとの
共存が続く中で景気悪化が長引くとすると、空室と滞
納について油断はできません。特に空室問題は、新し
く生まれた借主ニーズを自分の物件対策に取り入れる
かの検討が必要です。同じ時期に募集中のライバル物
件に対して、少しでも競争力をつける意識ですね。
この記事は当社のオーナー向けニュースレター2021年10月号に掲載されたものです。