1. ホーム
  2. トップ , 賃貸業界ニュース >
  3. 2021年賃貸住宅業界の上半期を振り返る

2021年賃貸住宅業界の上半期を振り返る

今回も、週刊誌やビジネス誌に執筆するライター
のA記者と不動産業界向け新聞のB記者、不動産ネッ
トメディアの編集を手がけるC記者の3名で、2021
年の賃貸住宅業界の上半期を語ってもらいました。
業界通ならではのリアルな展望が語られました。

賃貸住宅管理業法が施行  


2021 年の賃貸住宅業界もいろんなニュースがあり
ましたね。その中で賃貸住宅管理業法の全面施行が
大きな話題になった。昨年12 月15 日にサブリース
業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化にかかる
措置が先だって施行されていたけど、今年6月15日
に賃貸管理業者の登録制度がスタートしたわけだね。


元をたどれば賃貸管理はアパート経営の御用聞きか
ら始まったと言われてます。自然発生したビジネス
だから、世の中での立ち位置も不明確なままでした。
本法律で社会に認められるという感慨を持つ事業者
も多いでしょう。


管理会社の団体である日本賃貸住宅管理協会は法律
施行にあわせて新聞に全面広告を出しました。気合
いが入ったという感じでしたね。


来年6 月までに管理戸数200 戸以上の賃貸管理事業
者は国交大臣への登録が義務付けられる。業務管理
者の設置や、違反には業務停止の処分が課せられる。
管理会社の社員は賃貸不動産経営管理士の勉強をし
ているらしい。


その資格取得に必要な知識の中には、建物管理の実
務も含まれます。今年は「賃貸住宅内での事故」が
大きく注目されましたから、建物を安全な状態に保
つことの価値が増しています。


4月に東京・八王子のアパートで階段が崩落して、
住民の女性が亡くなった事故のことですね。アパー
トを販売した建設会社はコストを下げるために外付
け階段に木材を使用していました。国の調査では、
合計213棟で木材が使われているとみられています。


事故直後に破産申請するという建設会社の責任逃れ
には怒りの声が上がっている。業務上過失致死の疑
いで捜査が進んでいるし、刑事罰がくだされるのは
間違いないだろう。


管理会社やオーナーにとっても大きなリスクだと思
います。しかし、建築確認がとれている物件を購入
しているわけで、オーナーや管理会社がどこまで責
任を問われるべきなのか、困惑の声もありました。
このニュースは引き続き、注目されそうです。

事故物件の告知義務は3年まで!?


5月には国交省から事故物件の告知義務に関するガ
イドライン案が発表されたね。


これまでは事故物件、いわゆる心理的瑕疵物件の告
知や取り扱いには規定がありませんでした。なかに
は勝手な認識で対応して、トラブルになることもあった。


心理的瑕疵が発生しても、次の次の入居者には告知
する義務はないという俗説だな。事故物件に従業員
が入居者として短期契約し、次の人に告知しないで
貸すといったやり方も横行していた。でも、法律的
な根拠は全くなかったんだよな。


今回発表されたガイドライン案では、殺人や自殺、
火災による死亡が発生した物件に関しては、事件発
生から3 年間は入所希望者に対して告知すべきと
なっています。


一方で、病死や老衰、家庭内での事故による死亡に
関しては、告知義務は発生しないとしていますね。
ただし、孤独死などで遺体の発見が遅れ、特殊清掃
をした場合などは、やはり3 年間の告知義務がある
とされています。遺体発見までの日数など、具体的
な目安は決まっていないため、こちらも個別の判断
に任されそうですね。


高齢世帯が増えるなかで、病死などは告知不要とい
うのは時代にマッチしていると思う。


国交省は、6 月までパブリックコメントを公募して
いました。それを反映して、今夏に改めて正式なガ
イドラインを発表する予定です。勘違いしてはいけ
ないのは、これはガイドラインに過ぎないことです。
ある管理会社の代表は「可能な限り借主の気持ちを
汲んで、特に聞かれたら丁寧に対応することが宅建
業者のとるべき姿勢」と語っていました。


心の問題なので柔軟な対応が大切ですね。

お部屋の内見時の安全をどう守る!?


今年は、賃貸物件の内見客を装った脅迫・強盗事件
が多発していますね。


3月には東京都で、5月には千葉県で、物件案内時の
不動産会社従業員が被害に遭ってます。


被害者はどちらも女性だ。賃貸物件の案内は、若い
女性従業員がひとりで対応することも多く、セキュ
リティや防犯面の課題がある。複数の従業員で物件
案内しようにも、コストがあわない。無人内見がで
きるシステムやスマホの位置情報を活用する防犯ア
プリなどで対応するしかないのかな。


一方で、不動産会社従業員が加害者になった事件も
ありました。4 月、九州地方の管理会社に勤めてい
た男性社員が、女性客の物件案内時にわいせつ行為
をした事件です。


報道では、被害者の女性は、携帯番号や住所などの
個人情報を渡していたので、逃げ出すことができな
かったと言っているようです。


賃貸ビジネスは合鍵まで管理する職業なのだから、
あらためて高い倫理観が必要だと思いました。ただ
最近では、製造番号だけでネットで合鍵が作れるサー
ビスまである。地場大手の管理会社では入退室記録
がとれる専用の部屋を作るなど、鍵の管理だけで、
毎年数百万円のコストがかかると言っていました。
悪いことする奴は常に上をいくから、悩ましい問題
だね。

さらばインドの黒船。スルガ問題再燃


OYOが賃貸不動産から撤退したね。インドの黒船と
騒がれたけど、取材すると不動産ビジネスの知識が
全くない人が多くて驚いたよ。


それが逆に新しいと思ったのかも(笑)。でも、「やっ
ていることはマンスリーマンションと同じ」と冷め
た評価の業界人も実は多かった。


とにかく物件を集めるために、家賃相場を無視した
借り上げが横行していました。それで救われたオー
ナーもいましたね。でも、不動産会社を辞めてOYO
に転職した人もいて、このあいだ連絡したら、前に
いた会社よりだいぶ規模の小さい不動産会社に再就
職していて、苦労しているようです。


特に新しいビジネスモデルが生まれたわけでなく、
混乱だけを残していった印象だな。混乱といえば、
スルガ銀行問題が再燃したね。シェアハウスだけで
なく中古マンションを一棟買いしたオーナーも被害
者組織を結集した。


スルガ銀行日本橋店の前でデモ活動を始めました。
一方でシェアハウスのように家賃が全く入ってこな
いとか、建築途中で止まっているという人が多いわ
けでもなく、スルガ銀行がどこまで交渉に応じるの
かは不透明です。


シェアハウスの時は建物を引き渡せば債務免除とい
う形で解決をはかったけど、裁判で判決が出たわけ
でなく、あくまでスルガ銀行側が和解に応じただけ。
三為(さんため)業者に高値で物件を売りつけられ
たら、もれなく救済されるというわけではないんだ
よな。


スルガ銀行問題で気になるのは、販売業者、銀行、
投資家など、不動産投資に関わった人から、入居者
ニーズについての声が聞こえないことです。賃貸ビ
ジネスは入居者が払う家賃が全ての源泉でしょう。
だけど、管理の現場以外で、そのことに気がついて
いない人が多過ぎるんじゃないですかね。


シェアハウスオーナーの中には、サブリースで家賃
が入ってくるという皮算用だけで、物件を見たこと
もなかった人が大勢いました。そのうちの一人は家
賃が入ってこなくなって始めて物件を見に行き、奥
さんと二人で草むしりから始めました。元は真面目
な人で、隅々まで掃除をする内に買ってしまったシェ
アハウスが、いかに住む人のことを考えていないの
か気がついたそうです。本当なら、入居者の立場に
なれる良い大家さんになったかもしれないと思っ
て、切なくなりました。


それは…たまらないね。そういう人にはいつかまた
賃貸経営をやって欲しい。


一方でシェアハウス問題の黒幕とされる人物は、「金
儲け」を教えるという触れ込みでSNSの動画サイト
で視聴者を集めていますよ。


そういう人には賃貸業界に関わってもらいたくない
ね。これからの下半期も、五輪後の景気動向やコロ
ナのワクチン普及などで話題は尽きないね。また良
いネタを持ち合って集まりましょう。

※この記事は当社のオーナー向けニュースレター2021年8月号に掲載されたものです。

オーナー向けニュースレターのサンプルはこちらで申し込めます。

管理と仲介手数料が増える!無料メルマガ 賃貸管理戸数を増やし、仲介売り上げを増やすために役立つメールマガジンを無料で公開しています。 →さらに詳しく知りたい方はこちらをクリック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です