A
賃貸物件の火災による死傷という悲惨な事件が、
また起きてしまいまし
私たち大家が背負う大きなリスクの一つです。
B
怖いですね。
この大阪北区のケースは、原因が放火であること、
直近の消防の定期検査で防火上の不備は確認できないことで、
大家さんの責任問題にはなっていません。
C
2019年3月19日に立ち入り検査を実施していたそうですね。
この規模のビルの場合、
消防法では4 年に1回の定期検査が義務付けられていますが、
消火器や自動火災報知機や誘導灯などに不備はなかったようです。
B
もし不備があり、改善の指示に従っていなかったとしたら、
火災の原因がどうであれ、所有者の責任が問われたところです。
所有者として消防法の遵守は絶対ですね。
D
このビルのように、避難路が入り口付近の1カ所しかなく、
窓から飛び降りることのできない高さの場合は、
いくら安全対策をしていても怖いですよね。
C
部屋の広さ(95㎡)からスプリンクラー設置の義務はないそうです。
古いビルでは後から付けることも難しいですからね。
B
建物の安全対策は失火や漏電を前提としているので、
今回のような原因は想定できていない、ということですね。
A
居住用の賃貸建物の場合はどうでしょう?
Cアパートやマンションの場合は、
避難経路は玄関とベランダ側に2カ所以上ある間取りが多いですし、
居室には火災警報器、通路などに消火器、
規模によっては自動火災報知機が設置されているので、
今回のような狭い敷地のペンシルビルよりは安全だと思います。
E
そうかもしれないけど、その設備も経年劣化しますから、
定期的に検査や交換をしなければなりません。
もしそれを怠ると、やはり所有者の責任が問われることになる。
B
法律で定められた責任は遵守しなければなりませんね。
A
しかし、安全対策に限界はあるので、
賃貸建物の火災をなくすことはできないし、
死傷者をゼロにすることもできませんよね。
それを考えたとき、私たち大家のリスクマネジメントは
どうしたらいいですか?
C
例えば漏電のような設備の不具合が原因で火災となった場合は、
貸主や入居者が損害賠償責任を負う可能性があるそうですね。
漏電が室内で起きたときは、
占有管理している入居者が第1次的な賠償義務を負担しますが、
損害発生防止の注意をしたことが立証できれば責任免除となり、
その場合は所有者が無過失責任を負うそうです。
D
これが建物所有者のリスクですね。
建物設備が老朽化すると不測の事態が起こり得るので、
対策として定期点検や定期修繕が必要になります。
コストがかかるけど…。
A
建物が古くなって家賃も下がり続けているときに、
点検や修繕の費用がかさむのは辛いですね。
そのために蓄えておかなければならない……ということですか。
B
一方で、保険によってリスク軽減もできますよ。
施設賠償責任特約という、
今回のテーマのような建物設備の不具合による
火災で入居者や第三者に損害が生じた場合に、
大家が負担する賠償を補償するという特約です。
E
まとめてみると、
法律で定められた安全対策を守ることで
損害賠償や刑事責任から免れる。
設備の不具合で事故が起きないように
点検や修繕を事前に行っておく。
それでも起きてしまったときのために
施設賠償責任特約などの保険を活用する。
このような三段構えになりますかね。
B
そうですね。
それにしても、火災で部屋が使用できなくなったときは、
賃貸借契約を終了するか、
一部焼損により家賃が減額される場合がありますので、
家賃収入を確保できなくなりますよね。
この損失を穴埋めする保険として家賃補償特約があります。
これは、得ることができなくなった家賃を
一定期間ですが補償するものです。
A
いつも思うことですが、リスクのない商売はありませんよね。
車両を使う事業なら交通事故で
人に危害を与えてしまうことがあり得るし、
飲食店なら食中毒の可能性もあります。
今回のコロナ禍のような事態では売り上げが直撃されました。
私たちの賃貸経営とは、生活するためのスペースを貸す、
不特定多数の人が出入りするような商売のスペースを貸すこともある、
という事業ですから、人の命に関わる責任があるわけです。
そのことをつい忘れていると、知らぬ間にリスクが高まってしまうのですね。
リスクはゼロにはできませんが、
ゼロに近づけることはできると思います。
そのためには手間と費用をかける必要がありますが、
それを負担しながらも、
収益をしっかり確保するのが賃貸経営の妙味だと思います。
これからも頑張りましょう。
この記事は当社のオーナー向けニュースレター2月号に掲載されたものです。