最近、熱中し始めたソロキャンに行きました。
賃貸管理と全然関係ない動画ですが、
興味があったら観てください。
衝撃シーンもあります。
本日は長文ですが、
結構、役に立つお話しです。
宮古島に向かう機中にて
友人(と言っても息子くらいの年齢)から
相談を受けました。
彼のお父さんは建設会社を長く経営していて
業績も大変に良かったようです。
会社にキャッシュも残りましたが
不動産投資には全く興味がかなったとか。
それが一転して
「収益物件を買う」と言い出しました。
会社の業務を縮小していく中で
社内に資産を構築したいのでしょう。
建設会社から大家業への転換です。
積極的に不動産投資をすると
決めた途端に何をしたかと言うと
新聞の三行広告の物件に問い合わせて、
なんと、
新築アパートを二棟、即決購入したそうです。
都内(23区の外れ)立地で単身向けで
専有が13~15㎡。
たぶん20戸くらいの規模でしょうか。
「かほちゃの馬車じゃないだろうね」
と心配しましたが、
かの会社はとっくに破綻していましたね。
「新井さんは専門家だと思いますが
何かアドバイスをいただけますか?」
これが相談の内容だったのですが、
困っている・・・ということではなく、
「不動産投資はこんなカンジで良いのか?」
という確認と、
「それはスゴいね」と
言ってもらいたかったのかもしれません。
だから、最初の僕のコメントを聞いて
ビックリしたと思います。
「なにやってんの!そんな買い方はダメでしょ!」
言われた息子くらいの友人は
少し動揺したようですが、
それを隠して笑顔を保ちながら
「お金があるから大丈夫ですよ」
と言い放ちました。
これからも投資を続けていく、
とのことなので、
総額10億20億30億というお金を
動かすのだと思います。
不動産投資は、
(本物の)専門家のアドバイス次第で
1割2割の損得差が生じるでしょうから、
それは軽く2~3億くらいの金額になります。
「その10分の1でも僕にくれれば
全力で動くのに」
と思いましたが、
グッとこらえて、
「無償で僕に出来ることはアドバイスするんで、
お父さんに言っておいてください」
と格好付けた次第です。
さて、あなたなら、
この親子になんとアドバイスしますか?
あなたのお客様である大家さんが、
不動産投資家ではなく地主系大家さんだとしても、
関係ないテーマではありません。
賃貸物件の所有者をサポートする
仕事をしている人なら、
持っていた方が役に立つ知識や考え方です。
もしあなたなら、
どんなアドバイスをするか、
考えてみてください。
まず、
この小さい間取物件を購入したことが、
良いのか悪いのか、という判定があります。
彼は予想外の僕の剣幕のせいか、
購入価格を最後まで言わなかったので、
この事実だけでは、
良いのか悪いのか判定できません。
でも、
三行広告に問い合わせて即決したことを考えると、
販売業者さんの利益がタップリと
乗っていることは想像できます。
周辺取引事例法で計算したら、
まったく割に合わない金額のはずです。
それでも需要の見込める条件なら、
上手く運営すれば収益を稼げるはずですが、
なんと言っても13㎡のお部屋ですから、
10年20年も先の需要は相当に不透明ですよね。
これから増える外国人労働者が
借りてくれるのかなー、とか、
シェアオフィスに転用とかできるのかなー、
と考えたりもしましたが、
どちらも相当に不透明ですよね。
あなたもきっと同意すると思いますが、
この二棟の新築アパート購入は
「まずかったなー」と判定をしました。
そのうえで、これからどうするか?
というアドバイスです。
一緒に考えてみてください。
考える方向は大きく2つです。
1つは、
「購入してしまった物件をどうするか」
もう1つは、
「これから購入する戦略をどう組み立てるか」
息子くらいの友人が言うには、
「父はまだ買う気満々」とのことなので、
これ以上13㎡の物件を買うことは
阻止しなければなりません。
まだまだ購入意欲があるなら、
そこそこの戦略を考えるべきです。
そこで、
「これから購入する戦略をどう組み立てるか」
から先に考えることにします。
そもそも建設会社なのですから、
他人が建てたモノを、
しかも利益がタップリ乗ってる土地建物を
買うのは不合理です。
土地を買って自社で建てるべきですよね。
きっと賃貸用建物専門ではないから、
あるいは建てた経験がないから、
「新築アパートという完成商品」を
選んでしまったのだと思います。
よくよく考えてみれば
土地に建物が乗っかっているだけなので
完成物件を買う必要はないのです。
だから土地を探すのが、
ひとつの戦略になると思います。
たとえば、
都内のJRと私鉄の駅から10分以内で、
更地か、古い建物が乗っている土地、
という条件で不動産会社さんに探してもらうとか。
更地案件は少ないでしょうけど、
老朽物件の売り案件なら、
5棟も10棟も買うわけではないので
探せばあるのではないでしょうか。
銀行の貸し付けが厳しい中で
キャッシュで買えるのは有利ですよね。
老朽建物が乗っている土地は、
土地値から建物の取り壊し代を
差し引いた金額が購入価格になります。
もし、
まだ賃貸物件として使えそうな建物なら、
専門家なのですから、
建物ごとリノベーションして運用することもできます。
もしそれが面倒で
新築や中古物件を購入する戦略なら、
「物件力で判断する」という考え方を持つべきです。
物件力とは収益力です。
「稼ぐ力が現在と将来にわたってあるかどうか」
を判定基準にするのです。
管理スタッフなら
持っていてほしい知識です。
では、
収益力の判定方法について考えてみましょう。
まず賃貸物件の収益を計算する方法を
知らなければなりませんね。
この計算は単純で、
賃料収入から運営費を差し引くだけです。
購入を検討している物件がある場合、
まず妥当な家賃で満室時の賃料収入を計算します。
一年分が分かりやすいですね。
友人のお父さんが購入した13㎡物件の
妥当な家賃が6万円だとしたら
家賃6万×20戸×12ヶ月で
満室時の年間収入は1,440万円です。
満室運営はあり得ないので、
ここに予想の稼働率をかけて
実際の賃料収入を算出します。
稼働率は、
予想される空室ロスを差し引けば算出できます。
13㎡物件の初年度の空室ロスを
10%とみるなら稼働率は90%ですね。
満室時賃料収入1,440万円×稼働率90%で
1,296万円。
これが初年度の賃料収入の予想です。
ちなみに空室ロスと書きましたが、
厳密には空室だけでなく、
値引き(6万のところ5万7千円で貸すとか)や、
入居時サービス(フリーレントとか)や、
未回収損失(家賃滞納して退去)も
含んで予想しています。
この1,296万の賃料収入から
予想運営費を差し引くと「収益」が出ます。
運営費とは、
原状回復工事費用、バリューアップ工事費用、
メンテナンス費用、不動産会社に支払うフィー、
光熱費、固定資産税、火災保険料、
その他雑費などです。
もし借り入れがあったとしても
支払利息は計算に入れません。
減価償却費も入れません。
物件の実力を算定したいので、
オーナーの個別要件は排除するのです。
予想運営費を賃料収入の20%(特に理由なし)
とするなら、
1,296万×20%で約260万円になりますから、
実際の賃料収入1,296万円-予想運営費260万円で
1,036万円。
およそ1,000万円が年間収益ですね。
友人のお父さんが13㎡物件を
購入するのに要したお金が2億円なら、
1,000万円÷2億円で、
実質の利回りは5%ということですね。
でも販売業者さんの販売図面では、
たとえば募集家賃を高めの7万円に設定して、
満室時の賃料収入を計算していたりします。
7万×20戸×12ヶ月で1,680万円ですね。
ここから運営費を引かずに利回りを計算すると、
1,680万円÷2億円で8.4%になります。
5%とは大きな違いです。
この表面利回りを元に物件力を判定すると
間違えてしまいます。
物件購入を検討するなら
この収益予想を5年間くらい作ります。
年が進むごとに
稼働率の悪化や家賃の値下がりも
しっかりと反映させます。
これで5年間の収益予想ができますね。
話しを元に戻して、
土地から建物を建てるのではなく、
新築や中古の完成物件を購入したいなら、
このような予想の元に計算して、
その物件の複数年の「収益力」を判定すべきです。
この考え方や知識を
友人のお父さんにアドバイスしたいと思います。
少し分かりにくい記述なので
電卓とメモを片手に
何回か読み返してみてください。
そろそろ
宮古島に向けて下降を始めたようです。
もう1つの、
「購入してしまった物件をどうするか」
については次回といたします。