司会 今回は、成立して15年が経過した定期借家について話をしてください。ご所有の物件で、定期借家を採用されている方はいますか?
B 僕は基本的に定借です。
司会 5人の中でBさんだけなのですね。
Т Bさんは、全部の部屋を定借で募集されているのですか?
B 基本は全部ですが、大手の法人はダメなところもあるので臨機応変にしています。
M なぜ、定期借家なのですか?
B こちらが聞きたいです(笑)。皆さんはなぜ、定期借家でなく普通借家なのですか?
Y 特に、普通借家で困っていることはないですからね・・・。
G 定借は家賃が下がるといいますし、不動産会社も敬遠します。
Т 僕は、なかなか空室が埋まらない、という恐怖がありますね。
M 僕も家賃の高いテナント物件か、自宅の転勤貸ししか使い道がないと思っていました。本当のところはどうなんですか?
B 僕は以前に、普通借家で貸して困ったことがあり、それから定期借家に変えました。契約を守らない不良入居者を、なかなか追い出すことができなくて、本当に苦労しました。
M 確かに、借家権は強い権利ですから、追い出すのは大変です。
Y 定借なら契約を守らない借主を追い出す事ができるのですか?
B ええ、再契約に応じなければいいですから、難しくありません。
M どういうことですか?
B 定借には「終了型」と「再契約型」とあります。僕は再契約型で2年ごとに再契約をするのですが、著しく契約を守らない人の場合は再契約を拒否します。
G 拒否できるのですか?
B できますよ。そういう約束で契約していますから。
G よく、定借は家賃が下がると聞きますが、それは間違った情報ですか?
B 間違いではないと思います。「終了型」という、たとえば転勤で2年しか貸せないような条件のときは、相場通りの家賃では借り手が現れないでしょうから、当然に下がりますよね。でも再契約型なら、いつまでも住めるのですから、家賃を下げることはないです。
G 本当に下がらないですか?
B 下がらないです。ただし、不動産会社さんの説得が必要です。なかには、定借なら紹介しないとか、定借なら家賃を下げないとダメとか、入居者から嫌われるとか、いろいろなことを言う方がいますね。まるで抵抗勢力です(笑)。
Y やはり入居者さんは定借を嫌うのでしょうか。
B そんなことはありません。まず定借とか普通借家とかを知らないです。初めて聞く人がほとんどなので、正しく説明すれば入居者の方は問題ないです。
Т どのように説明するのです?
B お引っ越しをされて生活を始めてみないと、物件の状況は分からないですよね、と。隣に契約を守らない借主がいるかもしれませんが、この物件は、契約を守らない借主とは再契約をしないので、契約を守る人にとっては、住み心地のよい物件になるのです、と説明しています。
Т なるほど、説得力がありますね。だけど、部屋が埋まらないのでは?という心配がどうしてもあるんですよね。
B その心配はもっともですね。原因は、お客様を紹介してくれる不動産会社の対応です。定借なら紹介しない、とか、紹介しないとは言わないまでも、積極的ではない不動産会社は多いですね。
Y そんなとき、どうしているのですか?
B 部屋が空くたびに図面を持って、「定借は優良な借主に好まれる貸し方」ということを説明します。そして、不動産会社が紹介したくなるような、魅力のある部屋にします。時間はかかりますが、コツコツと説明を続けています。
G そこまでするほど、定借が良い貸し方なのでしょうか?
B 大家にとっては、契約を守らない借主を退去させられる、というのが大きいですね。静かに暮らす借主さんを守ることができますから。立退きのときに立退き料がいらないのもメリットです。あと、家賃の改定がしやすいこと、でしょうか。
G 家賃の改定がしやすいとは?
B 定借は更新でなく、その都度、新しい契約を締結するので、普通借家よりは交渉がしやすいのです。
司会 定借のデメリットは?
B 理解のない不動産会社さんには、説得が必要ということですね。借主さんにも説明して、理解してもらう必要があります。事前説明書という書類が増えたり、解約の通知をしなければならないルールがあるので、不動産会社さんが面倒がります(笑)。
司会 他の方はどう思われましたか?
Т 契約を守らない借主を退去させられる、というのに魅力を感じました。真剣に前向きに検討してみようと思いました。
Y 僕も考えてみます。
司会 ありがとうございました。