司会 「120年ぶりの民法改正」が話題になっています。この改正はオーナーに「どのように」」影響するでしょうか。
H 法律についてはAさんが詳しいです。
A 別に詳しくはありませんが(笑)。予定では、審議会が要綱を来年2月に答申して、次の通常国会で成立するようですが、成立しても施行まで時間がかかるので、まだまだ先の話です。
Y ならば、もっと先になってから話題にすれば良いのでは。
A そうなんですが、誤解を招くこともあり、惑わされないために知っておいた方がいいかもしれませんね。
D 僕たち賃貸オーナーにとって、どんな影響がありそうですか?
A 大きく分けると2点だと思います。ひとつは「原状回復義務」についてですね。改正案には、次のように明文化されることになります。要約すると「賃借人の原状回復義務から、通常の使用によって生じた損耗と経年変化は除く」というものです。
Y うん? 国土交通省のガイドラインと同じですよね。
H 15年前なら「えーっ」となったでしょうが、現在では「当たり前」の慣習になっていると思いますけど。これに意味があるのですか?
A そうなんです。ただし、ガイドラインには法的な拘束力はありませんが、今回は民法にしっかりと記述されることに、今までとの違いがあると思います。
D でも、法律といってもこの規定は「任意規定」でしょうから、貸主と借主が合意すれば、そちらが優先されるのですよね。
Y ちょ、ちょっと待ってください。「任意規定」って何ですか?
H 法令の規定には、当事者が合意した契約の方が優先されるものがあり、それを任意規定というようです。たとえば家賃は「前払い」という契約が多いけど、民法では「後払い」が原則です。でも当事者が合意して「前払い」を合法にしています。
A Dさんが仰るように、改正案の原状回復義務も任意規定だと思いますので、貸主と借主が合意して「ルームクリーニング費用は借主負担とする」と契約書に書けば、そちらが優先されるでしょう。ただし、借主さんは個人の方が多いですから、あとで消費者契約法の洗礼を受けることがあります。そのとき、民法の規定は意味が出てくるのではないかと思いますね。
H 影響があるのは、それだけですか?
A いえ。心配なのはマスコミの「誤った報道」なのです。
Y 誤った報道?マスコミが?
A 少し前になりますが夕方の報道番組で「これからは敷金が返ってくる」みたいな特集を報じてました。まるで今回の民法改正によって「新たに敷金が取り戻せる法律が出来る!」みたいな取り上げ方だと、僕には理解できました。すでに世間は「そうなっている」のに、不要な「退去時のトラブル」を助長させるような印象でした。
H 僕たちオーナーも正しく理解していないと、マスコミの報道に踊らされてしまう、ってワケですね。管理をお願いしている不動産会社のスタッフさんも同様ですね。
Y もう1点とはなんですか?
A それは、借主の連帯保証人、つまり「個人保証」についてです。
司会 そのつづきは次回、ということにいたしましょう。