司会 最近の風潮として「入居していただくターゲットを明確にすべき」という主張を聞きます。皆さんはいかがですか。
Y 20年~30年前は、間取りと言えば1Kか2DKか3DKで、ターゲットと言っても、独身か2人住まいか家族という、漠然としたものでしたよね。
A 現在は「ニーズの多様化」などと言われていますし、空室が増えたこともあり、ターゲットを絞り、ターゲットに合わせた部屋づくりが求められている、ということですよね。
D ・・ま、程度の問題はありますけどね。
司会 最近では入居者さんのタイプを、どう分ければいいのでしょう。
A まず単身者ですね。昔は学生さんか若い社会人がほとんどでしたが、最近は30歳~40歳台の単身者が増えましたね。晩婚や「結婚しない」という風潮が影響しているのだと思います。
K 「単身」というターゲットは、大きく2つに分けて考える必要があるのですね。学生と若い社会人は、20㎡~25㎡くらいの1Kやワンルームで、予算は抑えめでしょう。30~40歳台の単身者は、収入があるし、それなりのスペースを求めるので、30㎡~40㎡、場合によってはそれ以上を望みます。
Y その面積だと2DKですね。
D でも、2DKという間取りでは「彼ら」は選びません。独身には合いませんからね。
Y すると、“ターゲットに合わせた部屋づくり”とは、2Kや2DKの間取りを、30~40歳台の単身者向けに、広いワンルームや1LDKに変更する、ということですか?
K それも、ひとつの有効な方法だと思います。
A その単身者は、設備的には何を望むのでしょう。
K まずインターネットは必須ですね。「光」かケーブルTVなどの速いネット回線を、家賃の中で「使いたい放題」という条件が好まれます。「トイレが独立」「エアコン」は言うまでもありません。
D 女性の単身者にはセキュリティ設備も必須でしょう。オートロックが構造的に無理ならTVドアホンですね。
Y ペットを飼う単身の方も増えています。
M 「単身」は2つに分かれましたが、3つめのターゲットは、やはり「カップル」ですね。
Y ああ、新婚さんですか。
M 新婚さんもそうですが、DINKS(ディンクス)と呼ばれる、共働きで子供を意識的に持たないご夫婦や、同棲されるカップルも、この中に含まれると思います。
K このターゲットが特に求める間取りは「広いリビング」ですよね。少なくとも10畳以上の(できれば12畳以上)。そして寝室と、多目的に使えるもう一部屋で仕事をしたり収納スペースとして使ったり・・・。
Y 2LDKということですね。45㎡~55㎡くらいが必要ですね。
K 予算によっては1LDKでも選んでくれるかもしれません。
Y 昔は「2人住まい」といえば2DKだったのに・・・。
D 親子4人の家族でも2DKに暮らしてましたよ。時代は変わったものです。カップル世帯のニーズというと何でしょう?
M 「広いリビング」と「収納」でしょう。設備的には単身と同じくインターネットとセキュリティですが、特にセキュリティには「こだわり」が強いと思います。
A それと「追い炊き」ですね。他にもありますがキリがないです・・笑
Y 3DKという間取りはすっかり人気がなくなったので、カップル向けの間取りに変える・・ということですか。
K 3DKでも、部屋の配置によっては工夫すれば、工事しなくてもカップル向けに変更可能です。お部屋のクロスも「こだわる」と、特に女性の方に選んでもらえるのではないでしょうか。
A そうですね。なるべく費用はかけたくないので、それをカバーできる工夫が必要ですね。
Y 4番目の入居者タイプというと、やはり「ファミリー」でしょうか。
A ファミリーの、特にお子さんが小さい世帯ですね。せいぜい幼稚園までのお子さんがいるファミリー世帯は大きなターゲットです。
K この世帯は間取り的には2LDKや3DKを希望するでしょう。3LDKがあればそれに越したことはありませんが、予算的には厳しいと思います。面積は50㎡~60㎡。
Y 設備は「追い炊き」は必須ですね。
K インターネットやセキュリティも望むでしょうが、優先順位はカップルほどではありません。対面キッチンも喜ばれますね。それと専用駐車場が欲しいです。
A 「子育て世帯」は経済的には楽ではないので希望家賃が限られます。家賃設定が高くなるようなリフォーム工事はできませんね。立地的には、幼稚園のほかに、スーパーや公園などが近いと好まれますね。
M すると、同じ3DKでも、駅が近めでオートロック等が設置可ならカップル向けに、駅から離れていても環境が良い立地ならファミリー向けに、それぞれターゲットを合わせる・・・ということですね。
司会 入居者さんを、1.学生や若い社会人の単身、2.収入のある単身、3.カップル、4.小さなお子さんのいるファミリー、という4つのタイプに分類しましたが、他には「これ」という入居者タイプはありますか?
D 小学生や中学生のいるファミリー世帯もありますが、賃貸の需要は少なくなっているような気がします。みな、分譲マンションや一戸建てを購入していきますから。だから、僕のマンションの中で3LDKは苦戦していますね。一度空くとなかなか決まりません。
M 3LDKをカップルや小さなお子さん世帯向けにするには、家賃設定を合わせなくてはなりませんからね。法人の需要を狙うか、思い切って「ルームシェア」という手法もありますけど。
D うーん。ルームシェアですか・・・。なかなか思い切れませんね 笑
K それ以外の入居者タイプとして「老年の2人住まい」が今後は増えていくでしょう。
A ああ、これも2つに分かれますね。比較的予算の少ない世帯と、「団塊の世代」が自宅を貸すか売却するかして、便利な場所に賃貸住宅を借りる場合は、予算には余裕があるでしょう。これから増えていくターゲットになるのではないでしょうか。きっと和室も見直されますね。
D さて・・・・。「ターゲットを絞ってターゲットに合わせる」ことを考えてきましたけど、結局、「お金のかかる」ことばかりという気がします。お金をかければ部屋は決まるかもしれませんが、収支が合わなくては意味がないと思います。
K 仰るとおりですね。間取りや設備にかけられる予算には限界がありますよね。ターゲットを絞ることによって、「彼ら」が支払う家賃が想定できますので、その家賃設定が可能な範囲の対策しかできませんよね。
M それによって「どこまで費用をかけるか」が検討できますので、「ターゲットを意識する」ことに意味はあると思います。
A それに「絞る」と言っても、その加減にも選択の余地があるワケです。3DKを、カップルとファミリーの両方に借りていただけるように考えることもできますよね。どちらかに「絞らなければならない」ということではありません。その場合でも、間取りや設備やクロスの色など、難しい決断の「大きな助け」になってくれますよね。
司会 本日は有り難うございました。「住んでいただく入居者を意識する」ということは、賃貸経営にとっては大切なことが分かりました。意識したうえで、そのターゲットにとっての「ちょっとした気配り」や、そのターゲットなら「当たり前に想うこと」を、あまり費用をかけないで実践することが大切だと感じました。みなさま、頑張ってください。