今回は、相続対策のための生前贈与のお話です。親の土地に「子供にアパートを建ててあげよう」と考えたときの、つぎの2つの方法を比べてみました、
①は、親が建築資金(3000万円)を子に贈与して、子の名義のアパートを建てる場合です。
②は、親名義で3000万円のアパートを建てて、数年後(1年後程度でもよい)にその現物を子に贈与する場合です。
それぞれの税負担の違いを見てみます。①の場合の税額は、
(3000万円-110万)×
50%-225万円=1220万円。
子が支払う贈与税は1220万円となります。
※110万円は1年間の基礎控除額、50%と225万円は贈与額が1000万円超の場合の税率と控除額です。
結構な税額になりますね。
②の場合は、贈与財産が現金ではなく建物なので計算方法が異なります。
贈与や相続の場合の建物は、建築に要した金額ではなく固定資産評価額(建築価格の40%~60%程度)で評価されます。
仮に50%で評価されると「3000万円×50%」となり、建物は1500万円です。
さらに賃貸物件の場合は、借主の借家権割合(全国的に30%)が差し引かれます。計算すると、
1500万円×(1-30%)=1050万円。
この1050万円が贈与税を計算するときのアパートの評価です。
贈与税額は次のようになります。
(1050円-110万)×
40%-125万円=251万円。
①と②の方法により税額に969万円もの差がつきました。
贈与税(相続税も)は現金と建物の場合で大きな差がつきますね。
さらに、このケースでは所得税の負担も変化します。
所得税は累進課税(所得が多いほど税額が高い)ですから、このように生前贈与することによって、不動産所得が、所得の高い親から所得の低い子(あるいは妻)に移りますので、家族全体で負担する所得税が下がるのです。
すなわち、キャッシュフローが家族の中に累積していきます。
もうひとつ、生前贈与ではありませんが こんな方法もあります。
③として、親が子に建築資金を貸して、子名義のアパートを建てる方法です。
この場合は、親子の間でも金銭消費貸借契約書を作成しておきます。
子は賃貸収入の中から毎月キチンと返済をします。
借用証を作らずに「あるとき払い」では、贈与とみなされてしまいます。これによって不動産所得を子に移すことができます。
ただし②では、親の財産(3000万円)が子に移るので相続税対策になりますが、③は親の財産はそのまま(現金が貸金に変わっただけ)なので節税の目的は別にあります。
子に早急に収入を与え、家族全体の所得税負担を下げるには効果的ですね。
いずれの場合でも、地代を払わなかったり、払ったとしても土地の固定資産税程度なら使用貸借となりますので借地権は移りません。