いま、築20年を超える物件が市場の多くを占めるようになっています。
理由は、バブル期に節税目的で建築ラッシュが起きたことにあります。
昨年の貸家着工数は30万戸を超えて「4年ぶりの増加」と伝えられていますが、昭和62年から平成2年の4年間は、なんと80万戸を超えていました。
ちょうど20年前の平成4年と5年でも70万戸に迫る勢いで建てられていたのです。
バブル期の建物の特徴は、相続税対策で建てられたので、それまでの木賃アパートと比べてRC造が多いことにあります。
建築コストを惜しまずに建てられたものが多く、(過分に)良質の賃貸マンションが大量に供給されています。
また、ハウスメーカーが力を入れ始めたので軽量鉄骨造も多くなっています。
「3点式ユニットバス」や、2DKや3DKのような「部屋を細かく仕切った間取り」や、3LDKという「ファミリー向けの間取り」なども、この時期の特徴です。
これらは皆、現在の需要には合わなくなっています。
「建築費が高い」「金利が高い」というのもこの頃の特徴です。
これらの建物が築20年を超えて大規模修繕の時期に入っています。
しかし4年前の調査によると、約88%の個人オーナーは大規模修繕の計画を立てていません。
76%の個人オーナーは、修繕費用の積立をしていない、というのが実態です。
最初の10年は(ほとんど)修繕費用がかかりませんし、空室を埋めるのに苦労もいらないのが「その」理由でしょう。
でも、ご存知のように20年後から、一生の半分以上の修繕費がかかるようになります。
いま、ご所有の建物が新築であっても、まだ築10年であっても、「20年問題」は必ず訪れますので、今から手立てを講じておくべきですね。
では、具体的にどんな手立てが必要か考えてみましょう。
修繕計画を立てる
まず始まりは「計画を立てる」ことからです。建物や設備は経過年数に応じた老朽化の予想がつきますから、「何年後にどれくらいの修繕費用が必要か」という計画を(たとえ簡易でも)立てておくべきですね。
修繕費の積立をする
必要な費用が分かれば、それに合わせて用意することができます。
一般的には、1Kなら4000円~5000円、2DKなら5000円~6000円程度(ともに月額)の積み立てが必要、と言われています。
定期的に点検する
計画を立てても「その通りに」修繕が必要とは限りませんから、定期的に建物と設備を点検しておく必要があります。
次は修繕ではなく、物件力をつけるためのリニューアルについての手立てです。
ターゲットを定める
「どんな借主に住んでもらうのか」おおよそのイメージを持った方が、「効果の高いリニューアル」の方針が立てやすくなります。
20年前の2DKは新婚さん、就学前のお子さんのいるファミリー、年配のご夫婦・・・というような「漠然としたターゲット」でした。
それを、「30代の単身者」とか「ペットを飼っている単身女性」というように絞り込むと、同じ時期に建った同じタイプの物件との「差別化」を打ち出しやすくなります。
差別化を意識する
差別化は「お金をかける」ことではありません。
エントランスや集合ポストに「花を飾る」だけでも差別化です。
共用部分が「いつも綺麗」なのも差別化になります。ここは、オーナーの手間とアイディアの「かけどころ」です。
「収益還元」で考える
リニューアル費用を検討するときは「投資効果」で考えましょう。
「壁クロスを借主に自由に選ばせる」のに、10万円の費用が余分にかかるとして、それで「いくら高く貸せるか」、あるいは「いくら家賃を下げないで済むか」、あるいは「どれだけ早く決まるか」と想定して計算します。
20%を超える投資効果なら「ゴーサイン」ではないでしょうか。10万円の投資なら月額で1700円ほどの金額です。
築20年超の建物を何もしないでおくと、①家賃の値下がり、②空室、③修繕費用の負担増、という「三重苦」に見舞われてしまいます。
築20年を超えている物件の中にも、高い入居率を維持して収益を確保しているものと、三重苦に困っているものと二極化になっています。
ぜひ、前者の「勝ち組」になってください。いま「築浅」であっても、必要な手立てを「いますぐに」始めてください。