先日、とある地方都市(90万世帯の大都市)で、新店舗のオープン準備をしている方の話を聞く機会がありました。
オープンまで「あと3日」のタイミングでした。
話が「ネット集客」に及んだとき、
彼は(A君としましょう)「2000件から2500件くらい載せます」と言いました。
僕は少し驚いて「多いね!」と反応しました。
「それくらい載せないと勝てないですよ」
A君は賃貸仲介歴6年で、
この地方都市でナンバーワンの店舗数を誇る会社で賃貸仲介を担当してきました。
(その会社の店舗数は50店舗以上100店舗未満だそうです)
このたび、新規にオープンする会社に、経歴を買われて入社することになったのです。
おそらく、中心的な立場になるのでしょう。
A君曰(いわ)く、「ここでは、数多くの載せないと反響がとれない」のだそうです。
それにしても、スタッフ3~4人の店舗で2500件を維持するのは・・・・
簡単なことではありませんね。
僕は「そのスタッフの数で、そんなに多くの物件を維持できる?」と聞きました。
A君は「1人が一日5件、入力するのは簡単ですよね。3人なら15件になります」
(・・・月に450件か・・・・)と暗算。
「それを続けていけば、数ヶ月で「それくらい」になります」
「でも、決まった物件は消していくから、途中から増えないのでは?」
「いや、消しませんよ。そのままです」
「えっ!」
どうやら、物件が決まっても「載せたまま」にするつもりらしい、のです。
A君曰(いわ)く、
お客様から問い合わせがあったら「ありますよ」と説明し、
来店したら「ちょっと前になくなりました」と他の物件を紹介するのだ、といいます。
昔、東京都内にも、ビルの上階に事務所を構えた「アパマン業者」と呼ばれる方達がいましたね。
その頃は、雑誌広告をバンバン載せていましたが・・・
そのような手口が「ここでは当たり前」とA君は言います。
少なくとも、彼が育った、その地方都市ナンバーワンの会社では「当たり前の手口」なのでしょう。
「うーん。名は知れているのに、そんな会社だったとは・・・・・」
さらにA君は、
「このエリアでは不動産連○隊というポータルサイトが反響が一番多いけど、その理由は物件数がダントツに多いからです。
つまり、「ない物件」も載せてるからなんです」
その地方都市の90万世帯の3割が民間賃貸住宅として30万戸あるとします(数字の根拠はありませんが)。
その2割が空室なら6万室ですね。
「そんなに多いか!」と思いましたが、「スーモ」の市内の全掲載数を調べたら4万4000件でした。
ダブった物件もあると思いますが、妥当な数字だと思います。
ちなみに「連○隊」には10万300件の空室が掲載されています。
A君の証言を裏付けていますね。
すでに無い物件(つまり“おとり”)を乗せ続けている「地域ナンバーワンの物件サイト」なんて・・・
業界の評判を落とすだけですよ。
(地方ではテレビCMを流していますし)
この地方都市は「区政」を敷いているので、A君の店舗は「B区」にあります。
B区の世帯数は12万。
すると民間賃貸は3万6千。
空室は7200室と予想できます(大まかですけど)。
ところがスーモの掲載数は1万600件と、予想数をオーバーしていました。
きっと市内の中心であり激戦区なので、業者同士のダブリ登録が多いのかもしれません。
うーん、スーモにも「ない物件」が登録されているのかな・・・・?
(リクルートさん、チェックしてください)
ちなみに連○隊サイトの掲載数は、もっとスゴクで3万1000件。
区内の民間賃貸住宅がほとんど空いている計算になります。
あきれますね(笑)
「物件がなくたって構わない。掲載数が多いことが第一」という、
A君が勤務した「地域ナンバーワンの賃貸仲介会社」の方法は間違っています。
その経験を「正しい」と思わされたA君が不幸です。
その経験を買って、A君を中心メンバーに据えた、新規オープンの社長さんも、
これから仕事を覚える同僚も、
そして、お客様も不幸ですね。
「ない物件」を平気でネットに流している業界は、
賃貸仲介しか僕には思い当たりません。
ところで、A君の2500という件数の目標は正しいと思います。
空室の35%を掲載することになります。
2500(掲載数)÷7200(空室予想数)=34.7%
本当に「空いている物件情報」だけで2500件を維持できたら、
「そこそこ」の反響が期待できるはずです。
月に800件の新規を登録しつづければ、
決まった物件は削除しながらでも、
4~5ヶ月で目標に到達できますね。
そのペースを守れば「本当に空いている2500室」が維持できます。
7000の空室中から選び抜いた2500件の物件情報なら、
お客様には「信頼できる役に立つサイト」になるでしょう。
頑張って、800室の新規物件を、毎月登録したらいいと思います。
写真は20枚。
間取図とコメントにも気を配って・・・
「仲介専門」でやるならば・・・ですね。
ぜひ、A君には「まっとうな」人生を歩んでもらいたいと願っています。
ところが僕には
「エリアの35%の空室を掲載し続ける戦略」が不安なのです。
このような消耗戦を、ずっと続けないとならないのか、と思うと目の前が暗くなります。
ネットでの集客は、ますます競争が激しくなるますよね。
同じエリアで5000件を掲載する会社が現れれば、反響を持っていかれてしまいます。
そしたらA君も対抗しなければならないでしょう。
新しいテクノロジーもどんどんと生まれます。
結局、ポータルサイト会社と、
検索システム会社と、
WEB制作会社と、
SEO専門会社に「儲けられるだけ」だと思いませんか?
この地域での管理会社は、空室情報をフルオープンにしています。
空いたら「即」近隣の仲介会社に情報を流さなければ、空室が埋まりません。
広告料も「ほとんど」を仲介会社に提供しています。
仲介会社は、手数料も含めて2~3ヶ月分の収入になります。
物件によっては4~5ヶ月分にもなるでしょう。
「管理会社が不利で立場も弱い」と思えるかもしれませんね。
でも、入居分の5%が毎月確実に入ってきます。
これをコツコツ増やして行く方が、僕には「性に合う」のです。
このメルマガを読んでいるあなたも、そうではありませんか?
ネット集客のような「体力戦」は仲介会社に任せたらいいのです。
極端に言えば、ポータルサイトも使わないし、
自社サイトも「オーナー専用」にすればいいのです。
体力は「集客」でなく「いい管理」に回しましょう。
そして確実に、
昨日よりは今日、
今年よりは来年・・・・と
管理物件を増やしていきましょう。
僕は「その道」を行くことをお勧めします。