1. ホーム
  2. オーナー向けのメッセージ >
  3. 築20年の木造アパート、売りたい人買いたい人

築20年の木造アパート、売りたい人買いたい人

「築年数が20年を過ぎた木造アパートの売り物件があったら紹介してほしい。購入したいので。」という人がいます。その方は、自信を持って年間に何棟も購入しています。何年後かには売却する、という思惑も含めてのことですが、しっかりと「儲ける」自信があってのことです。その理論はしっかりしています。

しかし一方では、「この物件も古くなった。資産としての価値が低くなった」と、築20年の木造アパートを前に肩を落とす人もいます。新築から所有し続けているオーナーさんです。
同じ「土地付き建物」を前にして、このように「見方」が異なるのはなぜでしょうか。その理由を探ってみたいと思います。

木造アパートは築後20年も経てば老朽化が目立ってきます。
実は建物は、最初の10年間というものは、ほとんどメンテナンスに費用がかかりません。しかし11年~15年の間に、最初の大きな出費時期を迎えます。
屋根・外壁・ベランダ・階段・廊下といった建物本体に、塗装や防水処理が必要になりますし、給湯器やエアコンなどの室内設備が、交換や修理の時期を迎えます。
木造の1Kの場合で、築11年~15年の間に必要とされるメンテナンス費用は、一部屋当たり50万円とも試算されています。(日本賃貸住宅管理業協会「長期修繕計画案作成マニュアル」より)
これが築21年~25年の間だと、一部屋当たり70万円を超えます。
10世帯のアパートなら700万円以上の資金が必要、という計算になります。しかもこれは、最低限の必要箇所を見積もった金額です。
空室対策のためのグレードアップ的な要素は含んでいません。
この出費を新築の頃から予定して、毎月の家賃を積み立てていれば、資金の手当ては問題ないでしょうが(そのような家主さんは少数派かもしれません)、それにしても実効賃料が下がり続けている物件に、こんな多額を費やすのは「勿体ない」と感じてしまうかもしれません。

しかし正しくは、
新築から10年間の「もっとも賃料を稼げた時期」に、「必要な費用」として積み立てたものを使うのは、「何ら勿体なくない」はずです。
「来るべき時」に備えてたお金が、実際に活用できる時がきたのですから。
「こんな資産価値の下がった物件に、お金を使うなんて・・・・」と嘆くのでなく、「資産価値を上げるために、生きたお金をかけよう」と考えられればいいのです。
そうは言っても、手元に資金の用意がないときに「700万円かかる」と言われれば、気持ちは落ち込むし不安になるでしょう。これからの賃貸経営の見通しが立たないと考えてしまうかもしれません。

古い物件を求めている人がいる

かたや、
「築後20年以上の木造アパートを購入したい」という人は、どのような考えで購入を決めるのでしょうか。
たとえば物件の中には、売り出し価格が土地の評価額より低い金額のものがあります。
普通は、土地の評価額に建物の価値をプラスして価格を決めますね。百歩譲って建物をゼロとしても、土地価格で売りたい、と希望するでしょう。
しかし、更地に戻すためには、「立ち退きにかかる費用」と「建物を取り壊す費用」が必要になるので、その分は差し引かなければなりません。
したがって、更地状態の評価額より低く値が付いている物件があるのです。投資家にとっては「掘り出し物件」です。なぜ、そのような金額で売るのか!?
オーナーさん側に余程の事情があるか、所有し続けるモチベーションが極端に下がってしまったのかもしれません。
そのような極端な「掘り出し物」でなくても、築年の経過した木造アパートは、土地評価と建物評価を計算したときに「お値打ち物」と判断できるものが多いです。

その理由は、
新築から持ち続けているオーナーさんの、「気分の落ち込み」や「将来の経営不安」というマイナスの気持ちが、当然に売り出し価格に反映されている、と思われます。
極端に言うと「もう、売れればいい」という心境のオーナーさんもいるかもしれません。そこに、「その価格でしか買わない」という投資家の思惑が絡んで、市場価格という基準を形成しています。
しかしその価格でも、ローンを組んででも買いたい、という人が一方にいるわけです。だったら売らないで、諦めないで、賃貸経営を続けたらどうでしょう、と思ったりします。必ず上手くいく方法があるはずですから。

さて、今回の記事のまとめです。

 まず、 賃貸物件の築浅期間(10年以内)の「もっとも賃料を稼げる時期」に「必要な費用」を貯めておきましょう。
そのためには、簡易的なものであっても「長期の修繕計画」が必要です。本格的な、細かな数字で計算されていなくても「概算」でもよいと思います。
30年間に必要となるメンテナンス費用の総額を、大まかに掴んでおきましょう。長期の目線で必要なメンテを「先回り」して行うことが大切です。
でも、費用をかけすぎてもいけません。賃貸経営の目的は「収益を多く残すこと」ですから。

そして、必要なメンテナンスには「予防メンテナンス」「緊急メンテナンス」「繰り延べメンテナンス」がある、ことを知りましょう。
「予防メンテ」とは、必要なメンテを「先回り」して行うことです。「予防メンテ」を適切に行えば「緊急メンテ」の発生を防ぐことができます。
「緊急メンテ」は、費用が割高になるだけでなく入居者に不便をかけるので、テナントリテンション(入居者に永く暮らしていただくこと)に逆行してしまいます。その結果、退去率が増えて稼働率が下がります。
そして、予定したメンテナンスは、すべて実施しなければならない、ということではありません。すぐに問題にならないと判断できれば先送りすることも「可」です。
これを「繰り延べメンテナンス」といいます。
「資金が用意できない」とか、「来期の費用に回したい」とか、「近々に売却するので」とか、メンテナンスを先送りする事情が発生する場合もあります。
その必要を気付かずにメンテをしないのと、知っているけど問題はないから繰り延べるのとは、根本的に違いますね。

もうひとつの「まとめ」は、
築年数が古くなって問題が増えてきても、新たな気持ちに切り替えて、賃貸経営を続けましょう。
築20年も経っていれば、ローンの残債が少ないかゼロのはずです。
多額の賃料収入や高い稼働率を求めないでも「キャッシュフロー」は残るはずです。

賃料収入-運営費-ローン支払額=キャッシュフロー(税引き前)

たとえば賃貸物件の稼働率6~7割でもキャッシュフローが残るようなケースがあるはずです。
それなら、部屋を埋めるために、信用属性の低い借主に無理して貸して滞納に悩むより、気持ちに余裕を持って賃貸経営を進めることができます。
経営に損益分岐点という指標がありますが、キャッシュフローが残せる「入居率の分岐点」を設けると、目先の空室に、それほど迷わなくても良いのではないでしょうか。「満室経営」がオーナーさんの目的ではないのですから。
築年数の経ったアパートには、それなりの「ゆとり」の経営が可能な環境が欲しいですね。
そのためには、数字で実態を掴んでおくことが必要です。
「潜在賃料収入」「実効賃料収入」「適正な運営費」「負債返済額」「キャッシュフロー」「許容できる入居率」などです。
これらの数値の説明は、今後の機会を設けて説明させていただきます。

管理と仲介手数料が増える!無料メルマガ 賃貸管理戸数を増やし、仲介売り上げを増やすために役立つメールマガジンを無料で公開しています。 →さらに詳しく知りたい方はこちらをクリック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です