2024年11月から12月にかけての記事で
賃貸管理の入門編をお届けしました。
その内容は以下の11のテーマでした。
1.管理メニューを用意する
2.管理物件を埋めるための営業活動
3.入居申込受付から入居確認まで
4.滞納家賃の督促
5.家賃集金とオーナー報告
6.トラブル処理・騒音、漏水
7.トラブル処理・ゴミと無断駐車トラブル
8.更新契約処理
9.解約受付から退去立ち会い
10.設備メンテナンス
11.預かる物件をチェック
もし見逃している回があり
その内容に興味があるなら
過去に届いた記事を検索してみてください。
今回からは、入門編に続いてレベルアップ編をお届けします。
いまのところ9回になりそうです。
予定しているテーマは以下の通りです。
1.付加価値の高い管理メニューの作り方
2.賃貸管理からの収入を最大化する
3.テナントリテンションとは
4.オーナーの収益を簡単に知る方法
5.滞納賃料の法的回収の知識
6.モデルルームと空室巡回点検
7.正しい更新契約の流れ
8.正しい解約受付から入居募集?流れ
9.日常清掃と設備の定期巡回点検
週1の間隔で書いていく予定ですので
購読いただけると嬉しいです。
賃貸管理レベルアップ編
第1回「付加価値の高い管理メニューの作り方」
大家さんは賃貸管理に価値を見出すことで管理会社に管理を委託します。
その価値とは大家さんによって異なりますが、その中でも多いのは
・煩わしいコトから解放されたい
・つねに高い稼働率を維持したい
・収益を稼いでほしい
・建物・設備を管理して長持ちさせてほしい
という要望に応えてくれる価値です。
大家さんは、それぞれに目的や理由があって
賃貸管理という「商品」を買うのです。
このように賃貸管理は商品なのですから販売している管理会社は、
少しでも他社よりも価値の高い商品を用意すべきです。
それは商売の原則でもあります。
不動産業界では、分譲マンションや戸建て分譲などでは、
ライバル他社との差別化を考えているはずです。
しかし、提供する商品が「仲介や賃貸管理」となると、
「他社と差別化」という意識が薄くなってしまいます。
お客様から見れば、「どこも同じ」と見えてしまいがちです。
多くの不動産会社がそのように諦めているなら、
逆に言えば現在は「差別化しやすい環境」と言えるでしょう。
これから賃貸管理戸数を伸ばして安定経営の柱にしようとするなら、
「賃貸管理を他社と差別化する」というテーマに取り組んでほしいと思います。
そして差別化できたなら、
それを大家さんにアピールするのが管理メニューなのです。
賃貸管理メニューを用意する目的は、
・商品の価値をアピールする
・大家さんに選びやすくする
・商品内容を分かりやすくする
などです。
さらに付け加えると
・自社のスタッフに「賃貸管理の真実」を理解させる
という目的もあるでしょう。
昔のレストランのメニューは品数も限られていて、
文字だけが並んでいるのが主流でしたが
40年以上前にファミリーレストランが登場して、
豊富な品数とカラフルで見やすいメニューを標準にしました。
賃貸管理のメニューもそうあるべきです。
さらに賃貸管理の委託を検討する大家さんは、
その目的はひとつではないのですから、
大家さんの都合に合わせて選べるラインアップが用意されている方が良いはずです。
・入居募集
・家賃集金と報告
・トラブルクレーム処理
・更新契約
・解約受付と退去処理
これらの業務で○%という単品メニューが圧倒的に多い中で、
大家さんが目的に応じて選べるメニューを揃えることを検討してはどうでしょうか。
大家さんの中には、
家賃集金だけ依頼したい方がいるかもしれません。
反対に家賃集金は自分でやるけど、
クレーム対応や退去立ち合いは面倒なのでやってほしい、
という大家さんもいるかもしれません。
日常清掃や定期メンテナンスに価値を感じる大家さんもいるでしょう。
いろいろなニーズを抱えている大家さんとの取引開始の入り口は、
幅が広くて敷居が低い方が良いのではないでしょうか?
管理メニューは単品ではなく、
いくつかのラインナップを用意した方が良い理由は もうひとつあります。
それは管理料率を上げるための戦略を持つ、ということです。
たとえば 管理戸数が1000戸のとき、
平均の管理料率は3%より5%の方が管理売上は増えます。
管理物件の平均家賃が6万円なら
平均管理料率3%なら管理売上は180万円。
平均管理料率5%なら管理売上は300万円です。
月額で120万円もの差があります。
これが平均管理料率8%なら管理売上は480万円です。
計算すれば当り前なのですが、
管理戸数が変わらなくても
平均管理料率を増やすことで
売上を飛躍的に増やすことができます。
管理戸数を増やすより平均管理料率を上げる方が
スタッフの数も少数精鋭でいけますよね。
この平均管理料率は偶然に決まるのではなく、
管理メニューの作り方によって決まるのです。
もし、5%の単品メニューしかなかったら、
平均管理料率は5%を上回ることは絶対にありません。
中には値引きを要求する大家さんもいるので平均は5%を下回るはずです。
ここに8%のメニューが加われば、
それが料金に見合った価値のあるメニューなら、
平均管理料率は5%を上回る可能性が生まれます。
これがメニュー戦略です。
ある鰻屋さんの鰻重のメニューが、
梅と竹のふたつだけなら、梅が一番売れる可能性が高いでしょう。
そこに最も高額の松が加わると、竹が一番売れるようになります。
一番安いメニューより真ん中が好まれるのです。
そして、お金に余裕のあるお客様は松を注文します。
一番高いメニューが一番価値があると思うからです。
この「松・竹・梅のメニュー構成」で客単価をあげることができるのです。
売上げを増やすなら、
客数を増やすより客単価を上げる方が容易な場合が多いのです。
新規客を追い求めるより継続客を増やすことが大切なわけですね。
マンションの家賃設定では、
真ん中の部屋と角部屋の価格差を大きくしても、
高い角部屋から決まっていく場合が多くあります。
家賃が高いところは「それなりに良い部屋」と思うからです。
このように、管理メニューに何本かのラインを増やすことで、
・大家さんが都合に合わせて選べる
・平均管理料率を高くすることができる
という2つの効能があるのです。
ぜひ、検討してください。
つぎは、
自社の「強み」を管理メニューに活かすことを考えましょう。
賃貸管理入門編の10回目の記事「設備メンテナンス」で、
質の高い日常清掃をメニューに加える、という話をしました。
週一回の清掃を家賃の2%で提供する、というお話しです。
そのためには清掃部隊の内製化が必要になりますが、
もしそれが可能となったら、大きな「強み」となります。
一般的な管理メニュー5%に、日常清掃を加えて7%のメニューになります。
これで週一回、現場にスタッフが行くことになりますので、
ついでに空室の巡回点検と、
4回に1回は設備の定期点検も一緒に行うことができます。
毎月の大家さんへの報告書、マンスリーレポートの内容も充実するでしょう。
これなら入居者の評判も良くなりますし、不要な退去を防止出来て、
大家さんの収益も増える可能性が高くなります。
「2%分の管理料は絶対に高くない」
このように自信を持って説明できることが大切で、
これが賃貸管理の「強み」「他社との差別化」になるのです。
週一回の清掃を家賃の2%以内で提供できるなら、
管理メニューに「強み」「差別化」が備わります。
もし客付けに絶対の自信があるなら、
サブリースという家賃保証メニューは大きな差別化となります。
修繕工事が得意なら、
原状回復工事費を保証するというメニューも差別化になります。
リフォームやリノベのプランニングと施工が得意なら、
リノベ提案+家賃保証(あるいは借り上げ)というメニューも差別化になります。
あなたは もしかしたら、
賃貸管理を差別化できる「強み」というと難しく感じるかもしれません。
しかし地元で何らかの営業を長く続けてきたなら、
必ず他社にない「特色・特徴」があるはずです。
それが賃貸管理の「強み」に活かすことができないかを検討していただきたいのです。
以上のように、
管理メニューは「なんとなく出来た」のではなく
管理戸数を増やすために
管理売上を増やすために
戦略的に構築されたもの、であるべきです。
そして
・商品の価値をアピールする
・大家さんに選びやすくする
・商品内容を分かりやすくする
という目的を充分に達成できるレベルにしましょう。
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