賃貸管理のスタートアップをテーマにした9回目です。
今回は、解約受付から退去立ち合いまでの流れを解説します。
まずは解約の受付から。
借主からの解約の連絡はほとんどが電話で入ってきます。
そのときは、
退去日を聞くだけではなく、重要な目的があることを
受話器をとる方全員が知っておいていただきたいと思います。
その目的とは、
退去の理由を知って、
施設や他の入居者などに問題があるときは改善に活かすことです。
借主の退去理由の本音を聞き出すことが大切です。
もうひとつの目的は、
入居募集活動へスタートダッシュすることです。
いかに、家賃の空白期間を短くするかが管理会社として重要ですので、
「1~2ヶ月で決まる募集条件」を大家さんに提案して、
募集活動を速やかに開始します。
まず、退去連絡の受付時に確認すべき事項は以下の通りです。
・退去予定日と契約終了日
この2つの期日は異なることは分かりますね。
・傷や汚れ、設備の不具合の状況
もし故意過失による汚損等があるときは事前に見に行く必要がある場合もあります。
・移転先の住所と連絡先
・敷金の返還口座
・退去立ち会いの日時
時間もなるべく正確に聞いておきたいところです。
・退去理由
ここが一番大切なところです。
こちらについては、あとで解説をします。
つぎに受付時に借主へ伝達しておく事項です。
・賃料がいつまで発生するか
本日から1か月後か来月末までのどちらかになるでしょう。
退去日がそれより後のときは、その日まで発生することになります。
・鍵の返却
貸与したルームキーはすべて、その他に作ったコピーがある場合は、
それもすべて返却していただきます。
・公共料金の精算・停止手続きについて
・ルームクリーニングについて
こちらは契約内容によりますが、
多くは一定額を負担していただく約定になっていると思われますので、
その旨を説明します。
プロのクリーニングが入るといっても、
通常の生活以上の汚れがあるときは
別途料金が発生する場合があることも伝えておきます。
・粗大ゴミを残さない指導
粗大ごみは自治体に届けるなどの手続きが必要ですので、
時間の余裕をもって行うように説明してください。
・ゴミ処理の指導
ゴミルールに沿ってゴミを出すようにお願いします。
・郵便局、新聞配達への届け出
以上が伝達しておく事項です。
次に、退去受付一覧表に記入して全員で情報共有することをお勧めします。
退去から入居募集の作業を切れ目なく効率よく行うことができます。
一覧表に書き込む項目は
・受付日、物件名、号室、借主名、解約理由、
この解約理由は特に重要です。
その内容によっては、その退去は止められないか、と考えます。
たとえば上階の入居者の生活音が
どうしても気になるのが退去理由のとき、
同じ物件で最上階が空いていたら、
手数料なしで移っていただくことを提案すれば
退去を思いとどまってくれるかもしれません。
あるいは違う管理物件の最上階でも良いでしょう。
また、退去を思いとどまらせるのは無理だとしても
退去の原因を排除できないか、と考えます。
その原因を放置しておくと、
他にも退去する方が続くようなことがあっては困ります。
借主の退去理由を聞き流さないで、
その中に改善のヒントがないか注視してください。
退去受付一覧表の項目を続けます。
・解約日、退去日、立会する予定の時間、解約届送付、解約届受取、
この解約届の意味は、
解約の受付は電話を正式とせず必ず文書で受け取るようにします。
そのために、退去連絡を受けたら、
すぐに解約届という書類を送付して、送り返してもらうようにします。
・故意・過失申告、事前訪問が必要か
これは、通常の使用を超える使い方で、
大家さんへの損害賠償が発生するような事態は、
あとでその金額によってトラブルになることもありますので、
事前に訪問して確認した方がよいかを判断します。
さらに一覧表項目は、
・募集条件を検討、オーナーに退去の報告、募集条件提案
・募集条件決定、ネット登録、業者に告知、毎速配布、現地看板、現地幟
これらの業務は、今回のテーマの解約受付と退去処理ではありませんが、
空室を1日も早く埋めるためには重要な項目です。
これらの業務を切れ目なく、効率よく進めることがとても重要です。
そして
・退去立会いの報告、原状回復工事の見積依頼、原状回復工事の見積受取り
ここは無駄な日にちを空けることなく進めます。
・退去立ち合いの結果をオーナーに報告、
・借主に報告、原状回復費用の負担調整、
この負担調整の同意に手間取ると工事手配が遅れてしまいます。
それを防ぐための立ち合い方法についてはあとで取り上げます。
・業者に原状回復工事手配、原状回復工事の完了日を指示、
原状回復工事を発注するときは必ず完了日の希望を伝えます。
そして、工事完了をチェック
これで原状回復工事は終了です。
一覧表の最後に
・入居申込み、申込者名、家賃発生日、入居予定日、
・申し込み内容をオーナーに報告、契約予定日、契約完了・入居説明が終了
・看板撤去、ネット登録削除、入居前チェック完了、
・鍵交換後に鍵の引き渡し、入居日を確認、入居後に訪問してあいさつする、
などの入居募集業務も1枚の用紙で管理することで、
一連の作業を無駄なくスピーディーに進めることができます。
これが一覧表を活用する効用です。
この長い一覧表を
グーグルのスープレッドシートなどで共有してください。
次は、退去立ち合いについて解説します。
まず「退去立ち合い」は誰がやるか? ということですが、
管理スタッフがやると決まっているわけではありません。
・リフォーム業者さんにアウトソーシングする
・リフォーム業者さんと担当者が一緒に行く
・退去立ち合いはしないで退去後にチェックに行く
という方法もあります。
一番良い方法を採用してください。
「退去立ち合い」の目標は以下の通りです。
・原状回復工事項目を特定する
・故意過失は借主に確認・了解してもらう
・費用負担で借主・貸主が揉めないようにする
この2点はあとでトラブルとなりやすい項目ですので、
現地で納得していただきサインをもらいます。
・「原状回復+α」の工事提案を決める
1日も早く部屋を埋めるための、大家さんへの提案内容を決めます。
・発注までの時間を短縮する
立ち合い日から工事発注までの時間を最短にする必要があります。
これらを実現することが退去立会いをする目的です。
この「退去立ち合い」は、
入居時に借主と一緒に作成した「入居時室内チェックリスト」を元に行います。
この書類がない時は「退去立ち合いチェックリスト」を用意します。
家具の搬出が終わった部屋に入り、
つぎの募集のために行う「現状回復工事項目」をピックアップします。
その項目とは主に以下の部位です。
天井のクロス、壁のクロス、床のフローリングやクッションフロア、畳の表替え。
襖の表替え、扉の塗装やクロス、巾木、取っ手やスイッチプレート などです。
これらを張り替えたり塗り替えるのが、主な原状回復工事の項目です。
この必要な原状回復工事の中から、
借主が負担する項目を選り分けます。
借主が負担する工事項目とは、賃貸借契約で約束されている
ルームクリーニング費用や、畳等の交換費用や、
クロス等の貼り換え費用の一部負担分となります。
それとは別に、借主の故意・過失での汚損や毀損があれば、
借主に認めていただきサインしてもらいます。
これで後日のトラブルを防ぐわけです。
さて、先に退去立ち合いをするのは誰か? と言いましたが、
管理スタッフさんが行く場合でも、リフォーム業者さんの同行が望ましいです。
理由は、見積を依頼して工事発注の流れが効率よくスムーズになることと、
借主さんの負担額もその場で提示するので説得力があります。
原状回復工事の発注が早ければ完了も早くなります。
綺麗になった部屋をお客様に見ていただける日が早まることになります。
これがとても重要な考え方ですので、
退去立会日から工事発注までの時間の目標を持つようにしてください。
そして、原状回復工事にかかる期間にも目標を設定するようにしてください。
その目標日数は7日とか10日になると思います。
では、解約受付から原状回復工事の完了までの流れを、もう一度確認しておきましょう。
まず解約・退去を受け付けて、入居完了までの一覧表に記入します。
募集条件を大家さんに提案して決めます。
条件が決まったらすぐに募集開始。
ネット登録、図面作成、業者配布、現地看板設置などを行います。
そして引っ越し日に退去立会いをして、
原状回復工事項目をピックアップして、
借主負担分を承認してもらいます。
借主の故意・過失部分があれば、これも確認いただき承認のサインをもらいます。
リフォーム業者に見積もり依頼して見積もり受領。
大家さんと借主の負担額を確認して承認をもらいます。
そ
して原状回復工事を発注して、完了する日を指定して確認します。
以上が解約受付から退去立ち合いまでの流れです。
次の記事では「設備メンテナンス」について解説いたします。
賃貸管理の基礎が動画シリーズで学べます。 ↓
https://www.geonetwork.co.jp/pm_basic/