賃貸管理のスタートアップをテーマにした8回目です。
今回は 更新契約処理について解説します。
2年ごとに合意して更新契約を行うという慣習は全国的なものではありませんが、
少しずつ採用される地域が増えています。
より良い賃貸経営のためにも必要なイベントです。
もし更新契約の慣習のない地域の加盟店様も、
広める努力をしてはどうでしょうか。
管理関連の収入アップにもなります。
賃貸借契約の更新には2つの種類があります。
ひとつは合意更新です。
2年ごとに貸主・借主が合意して更新契約を交わします。
借主には更新料と更新手数料の負担がかかります。
もうひとつは自動更新です。
2年ごとに同じ条件で自動的に更新されていく、という取り決めです。
特に契約という作業は行いません。
この自動更新は、
借主が入居してから、特に問題が起こらない限り、
定期的に貸主と借主が接触するという機会が訪れません。
極端に言えば、入居して10年経過しているのに、
住んでいる家族構成が把握出来なくなります。
それでは大家さんは不安ですので、
たとえ自動更新が慣習の地域でも、
管理会社は定期的に入居者の状況が把握出来る仕組みを持ちたいと思います。
もうひとつ、今回のテーマとは異なりますが、
よく似た4文字の名称で法定更新というものがあります。
こちらは、借地借家法で定められている法律で定義された名称です。
貸主が、契約期間を迎える半年前までに、
「更新を拒否する」「条件次第では更新を拒否する」と通知をしないと、
契約は自動的に更新されるという内容です。
貸主が更新を拒否する場合は「正当な事由」がないと認めて貰えません。
なぜ、自動更新ではなく合意更新の方が良いのでしょうか。
合意更新の意義を考えてみましょう。
合意更新を行う意義を4つほど以下に掲げます。
1.借主の最新状況を把握する。
これは管理会社として必ず把握しておきたいことでしょう。
2.借主の不便・不満・要望を知る。
2年ごとに、不便や不満を感じてることや要望があれば聞いておきたいです。
3.退去を防ぐ、あるいは改善に活かせる。
不便や不満は、その芽が小さいウチに摘み取れれば、
それが長期入居につながることになります。
4.更新手数料を得る(稼ぐ)。
もちろん管理会社にとっての収入を増やす重要な機会となります。
合意更新の慣習がない地域でも2年ごとに更新契約を行えば、
更新事務手数料として家賃の半月分を徴収するのは難しいですが、
10,000円15,000円という金額なら徴収することが可能でしょう。
そのためには、
「大家さんだけでなく入居者さんのためにもなる」
という更新手続きであることが求められますから、
単に、手数料が稼げるイベントではない、という認識を持つ必要があります。
では、更新手続きの実務に入っていきましょう。
更新通知を送った時の「あるある」ですが、
2~3ヶ月前に更新通知をしたら
「家を購入するので更新はしない」と言われてしまうことがあります。
転居先はおなじ地域、だったとします。
家を購入するなら、なぜ相談してくれなかったのでしょう?
売買仲介の機会を逃したことになりますから勿体ないですよね。
このような失敗を防ぐために、通知の前に、
更新期日の6ヶ月くらい前に更新に関するアンケートをとる、
という会社もあります。
手順は以下の通りです。
まず更新の6ヶ月前に更新期日を通知します。
そこには「更新する」「しない」「不明」と記入する欄があります。
「しない」と答えた方には理由を聞きます。
その理由が、地域内に住み替える事情であったとして、
それを止めることができないなら他の賃貸物件を紹介します。
もし自宅を購入するなら、一戸建てやマンションを紹介させていただきます。
6ヶ月前なら、まだ移転先まで決めていない可能性があるからです。
このように、会社にとっての新たな仲介の機会を逃さないようにします。
これは管理大家さんには残念なことですが、
あなたが仲介しなくても退去するのを止められないなら、
転居先の事情がよく分かる立場にいた方が
このあとの入居募集を早く開始することができて有利です。
この通知書は往復はがきが適しています。
6ヶ月前のアンケートによって
更新の意志がある借主には2~3か月前に書類を郵送します。
手続きの流れは以下の通りです。
まず更新予定リストに基づいて、
大家さんに更新予定を報告して新賃料を決定します。
つぎに借主に以下の書類を封書で郵送します。
封書の中身は、
・更新通知書、
新しい契約期間と賃料、更新に必要な金額明細と提出書類が記入してあります。
・入居者様確認書、
これは入居申込書に変わるもので、現在の勤務先と同居家族を記入いただきます。
・更新契約書、
・返信用封筒、など。
これら以外にも、必要であれば火災保険、保証契約の更新書類も同封します。
郵送したら、指定した期日までに、
署名押印した更新契約書を返送して費用を振り込んでいただきます。
もし、来店していただいて更新契約をするなら、
あらかじめ期日を知らせていただきます。
以上で更新契約処理は終了です。
最後にあなたに確認しておきたい事項があります。
連帯保証人の署名・捺印は必要なのか? という問題です。
個人の保証人を立てている借主の場合は、
更新の都度に保証人の署名をもらっておく必要があります。
少なくとも保証人に、何の通知もしないで更新が繰り返されている、
という事態は防ぐ必要があります。
万一のときに連帯債務を請求できない可能性を
ゼロにしておきたいのです。
つぎは更新を電子契約で行う、という問題です。
更新を電子契約で行うことを妨げる法律はありませんので、
今回のような郵送でのやり取りは、
今後は電子的な取り引きに置き換わっていくことになるでしょう。
すでにサービスの提供は始まっています。
最後になりますが、
2年ごとの更新には重要なテーマがあります。
永く住むほど得をするという仕組みを用意する、という課題です。
じつは、更新通知を受け取った借主の立場で考えると、
この更新という手続きに価値を見出すことは難しいでしょう。
家賃以外に新たに費用が請求されて、面倒な手続きが必要なら
「この際に住み替えようか」という考えが浮かんでも不思議ではありません。
その方が、建物は新しくて、家賃も安くなるかもしれません。
それを防ぐために、更新のたびに、
何かのプレゼントを提供するという大家さんや管理会社があります。
たとえば、エアコンやドアフォンやバス乾燥機などから、
借主が希望する設備を付けてあげる、
畳を取り換えたり、ルームクリーニングをして差し上げる、
というプレゼントです。
いくつかの中から選んでもらっても良いでしょう。
大家さんの出費になりますが、それで退去が防げるなら効果は高いです。
プレゼントが設備なら、
これは大家さんの資産価値が高まることなので損ではありません。
更新のタイミングを
住み替えを考えるキッカケにしないようにしましょう。
更新も、空室対策として、長く暮らしてもらうためのイベントなのです。
このアイディアを実行するためには
更新は郵送ではなく、来店による面談で行う必要があります。
その方が、小さな不満などを聞き出すこともできるでしょう。
もし来店をお願いするなら
ケーキと紅茶でもてなしても損にはなりません。
次の記事は「解約受付から退去立ち会い」を解説いたします。
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