賃貸管理のスタートアップをテーマにした4回目です。
今回は、家賃集金時の滞納に対する督促について解説します。
最近では、
ほとんどの賃貸借契約は保証会社が関わっていますので、
管理会社が家賃の督促をする事は少なくなりました。
しかし、まったくゼロにはなりません。
中には、保証会社を使わない借主もいるからです。
新しく管理を受けた物件にも、
個人保証の借主が入居している可能性があります。
そこで滞納が始まったときの、
「最初の45日間の初期督促の流れ」を説明します
家賃の支払い約定日は月末までに翌月分を支払う、
という内容が多いと思います。
そこで月末の15時に入金確認を行い、
その時点で未入金の借主には、すぐに督促を開始します。
家賃が自動引き落としの場合は、
入金結果が分かるのが遅れるので判明した時点からすぐに始めます。
月末か月初めに作成した未入金リストに初めて掲載された借主さんは、
「うっかりした」とか「少しルーズなので」という方が多いです。
この「うっかりさん」「ルーズさん」も、
放っておくと毎月リストに名を連ねることになるので、
約定日の翌日から連絡をとるようにします。
ただし、あくまでもソフトにしてください。
しかし、入金されるまで しつこく連絡します。
「ソフトにしつこく」が大事なコツです。
初期督促の手段は
・文書
・電話及びメール
・訪問
の3つの方法になります。
一番手軽なのは携帯番号に送るショートメールでしょう。
入居者用アプリがある場合はその機能を使うことと思います。
「〇日までの家賃のお支払いが確認できませんでしたが いかがされましたか?」
というような定型文を用意しておくと便利です。
そして「〇日までにご入金かご連絡をお待ちしております」と続けます。
この指定日はメッセージを送った3営業日くらいが適切です。
ただし、くれぐれも連絡先を間違えないようにしてください。
指定日になっても返事も入金もない場合は、
電話をかける、2度目のショートメール(アプリ)を送る、
文書を郵送するなどの方法をとります。
3度目のショートメール(アプリ)を送る頃には
約定日から7~10日は経過しているので少し異常事態となります。
もしかすると、遠くに出張している、携帯を確認できない事情がある、
という可能性もありますので、
同じように、電話をかけ、メールを送りつづけます。
4度目のショートメール(アプリ)には、
「ご連絡がいただけないのが心配ですので
保証人様に相談させていただきたいと思います」
とプレッシャーをかけます。
約定日から15日を経過しても連絡も入金もない時は連帯保証人に連絡をします。
そのときは いきなり保証人に支払いを求めるのではなく
「〇〇様と連絡がとれず家賃の入金もないので心配です。
保証人様は何か ご存じですか?」
と確認をする程度にとどめます。
これで連絡がつけば事情が分かりますし入金日も約束をしてくれます。
あるいは驚いて、すぐに入金があって一件落着となります。
もし保証人に相談しても解決しないときは困った事態となります。
保証人に相談しても、
約定日から20日を過ぎても解決の目処がたたない時は保証人に
「ご存じの通り、
このままでは保証人様にお支払いいただくことになってしまいます。」
と言って以下の要望を伝えます。
1.滞納状況が改善されないこと
2.正常に戻すために全額支払って欲しいこと
3.支払いが厳しいなら任意退去するよう促して欲しいこと
滞納が発生してから30日以内に、
ここまで話を持っていけることが大切です。
「ソフトだがしつこく」という初期督促を小まめにしていないと、
短期間にここまで持って行けないのです。
借主に1~2回しか催促していないのに保証人に請求するのは早すぎです。
保証人に通知するのに適切なのは、
期間では無く手を掛けた回数ではかります。
何度も電話やメールで連絡したのに、
まったく返事も入金もないので、
仕方なく保証人に連絡や請求をした、
と言えるような初期督促をすることが大事です。
さて、ここまでやっても、借主からも保証人からも、
誠意ある対応をしてもらえなかったときは、
残念ですが次の段階に入ることになります。
つぎの段階とは「法的手続きの準備段階」です。
借主と保証人に法的手続きを意識させてプレッシャーをかける作戦です。
これは本気でやらないと相手に伝わりません。
借主と保証人に同時に督促しても入金がなく、
滞納発生から45日を過ぎた頃には法的手続きの準備に入ります。
賃料督促の法的手続きの詳細については、
賃貸管理のレベルアップの記事の、
第5回「滞納賃料の法的回収の知識」で解説します。
そこで解説しているのは、
滞納が3ヶ月を過ぎたら明け渡し裁判を起こしましょう、という提案です。
つまり滞納発生から90日経過後です。
ですから、この滞納発生45日の時点では、
あと45日後の訴訟開始をにらみながら、
できれば、その事態にならないで済ませるための行動をとります。
本気の法的手続きを感じさせつつ、プレッシャーをかけて、
家賃を支払うか、
退去するかの選択をしてもらいます。
そのために有効で、かつ必ずやるべきなのが内容証明郵便の送付です。
日本郵便では「e 内容証明」というサービスを提供しています。
郵便局本局に行かなくても、
インターネットを通じて内容証明郵便を24時間発送できるサービスです。
料金も郵便局より安いです。
料金支払いはクレジットカードか後納が選べます。
昔と比べると格段に便利になりました。
このサービスを利用して、
滞納発生45日頃には、
簡単に内容証明郵便を送れるようになってください。
このときに内容証明に書く項目は
1.差出人が誰か
2.家賃を滞納している期間と金額
3.契約書〇条に違反している
4.期日を指定して支払いを求める
5.支払わない時は契約解除とする
6.その後は法的手続きに訴える
7.支払い先の情報
8.借主の氏名・住所などの目録
などを整然と書けばよいです。
そして配達証明をつけて出します。
内容証明郵便の最大の効果は相手へのプレッシャーです。
支払いを拒んでいた保証人が、
内容証明を送ったとたんに支払ってきた例もあります。
2番目の効果は、
相手に期日を指定して督促した事実が証拠として残ることです。
配達証明をつけることによって相手が受け取った事実も証明できます。
相手が受け取り拒否しても督促した事実は残ります。
最悪の事態の裁判になったときの重要な証拠となります。
「うっかりさん」「ルーズさん」の初心者を相手の督促から、
法的手続きの準備まで話が広がってしまいましたが、
裁判という事態にさせないためにも「最初の督促」が極めて重要になります。
そのキーワードは「ソフトにしつこく」です。
そして保証人を味方につけるというマインドを持つことです。
滞納のない状態がベストですが、
万一のときは時間との勝負となりますので、
大家さんの損失を食い止めるためにも素早く的確に行動するようにしてください。
次の記事では
「家賃集金とオーナー報告」について解説いたします。