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賃貸住宅市場のAmazonと称された 「OYO LIFE」の撤退報道

「インドの黒船が日本の不動産市場を変える」
と注目を集めたOYO が、
賃貸住宅事業の「OYO LIFE(オヨライフ)」を終了し
日本市場から撤退、と日本経済新聞が2021年3 月16 日に報じました。

オヨライフを運営する、オヨホテルズアンドホームズは
報道について事実と異なる部分があるとして、
「サービスは継続して提供していく」と回答しているようです。

しかし、あくまで「現段階での見通し」と限定しており、
歯切れの悪さは否めません。

撤退するかどうかは、今後の発表を待ちたいと思いますが、
不動産テックの大本命と評価され、
日本の不動産業界からも恐れられたオヨについて振り返ってみます。

“スマホで部屋が借りられる” 新ビジネスとして注目される

オヨライフ事業が始まったのは2019年3月。

賃貸住宅ビジネスでありながら、
敷金・礼金・仲介手数料は無料、
契約手続きはスマホだけで完結するという特徴的なものでした。

入居者は仲介店舗に行く必要もなく、
契約書類に捺印する必要すらなく、
「賃貸住宅のAmazon」と評されました。

部屋には家具があり、すぐに住み始めることができ、
退去時も清掃費用が必要なだけ。

自由に住み替えができ
「暮らし方そのものを変革する試みである」と言われました。

事業を仕掛けたのは
インドで生まれたホテルチェーンOYO で、
ヤフーと共同でOYO Japan 合同会社を立ち上げて、
オヨライフ事業を始めたのです。

仲介ではなく物件を借り上げて家具などを設置し、
入居者に貸し出します。

すさまじい勢いで物件借り上げを進め、
本格的な事業開始から1年も経たず首都圏で7000 室以上を確保。

2019年10月には大阪、京都、兵庫、名古屋での事業も始めます。

数十名だった社員数はわずかな期間で500名を超えます。

さらに目標は「100万室」を掲げ、まだまだ急成長を続けるはずでした。

しかし、2019年末から、借り上げ物件の解約が始まります。

2019年11月にはヤフーが経営から撤退。

「入居日から4日間も鍵の開け方を教えてもらえなかった」
という男性が裁判を起こすなど、
ずさんな管理体制を批判する声も上がり始めました。

その後は、
新規の物件獲得停止や希望退職開始などが
噂されるようになります。

そして今回の撤退報道につながります。

オヨライフ事業の停滞原因は何でしょうか?

まず、住み替えニーズと稼働率の両立の難しさです。

オヨライフが謳うように、
簡単な契約で希望する物件を
頻繁に住み替えるニーズはあるでしょう。

そのためには引っ越す先の空室が必要です。

オヨライフの人気が高まり、稼働率が高まれば、
引っ越す先が不足し、利用者の利便性は減ります。

借り上げ賃料を逆ざやにせずに、
利便性を高めるのは至難であったはずです。

成熟した賃貸住宅市場の壁
 
拡大路線のために、
相場に比べてかなり高い借り上げ賃料を払って
サブリースを増やしていたエリアも多かったようです。

一部の不動産投資家は「入居が付いてない物件なのに、
 相場より高く借り上げてくれた。オヨ特需。助かった。」
と証言しています。

高く借り上げた物件は、
さらに高く貸し出す必要があるため、
入居者獲得には苦労したようです。

入居はスマホで完結、仲介コストをかけないはずが、
仲介店舗から紹介を受けるようになります。

そして、さらにビジネスモデルの根幹が崩れていきます。

オヨライフは入居者とは最長90日間の
建物一時使用目的による契約を結んで部屋を貸していました。

紙の書類をやり取りせずに、
スマホで完結できるのはこのためです。

しかし、期間を最長2 年間に変更してしまいます。

これでは、通常の定借契約と変わらないため、
一時使用というには無理があると指摘する声が上がりました。

このまま事業を拡大していっても、
監督官庁や市場からの視線は厳しいものになったでしょう。

以上から苦しい現状が説明できます。

日本の賃貸住宅業界は成熟した市場です。

多くの大家さんが地道に事業をしています。

地元の不動産会社の中にも、
良質な賃貸管理業務を通じて、
地道な事業をサポートする業者もあります。

新しいテクノロジーが
ビジネスを生み出す余地はあります
法規制や商習慣、厳格な入居者保護と
飽和した市場での過酷な競争は簡単に攻略できません。

地元密着の経営に勝るものはありません。

この記事は当社のオーナー向けニュースレター2021年5月号に掲載されたものです。

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