昭和60年の「賃貸管理実務研修」に参加して
次に気付いたのは「督促」です。
当時は保証会社は存在しないので督促術は
賃貸管理担当にとって必須のスキルでした。
でも、そう認識できている管理スタッフが
少なかったのも事実です。
さて、研修を主催している賃貸管理会社さんは
管理が7000戸で「500人に1人」という人員配置なので、
14~5人の担当スタッフさんがいたと思います。
その方達が2つのチームに分かれて
督促状況の報告・連絡会を毎朝行っていて、
それを研修参加の僕たちが参観させていただきました。
パソコンが無い時代ですから、
みな、紙の滞納者リストに細かく書き込みながら、
自分の担当している滞納者の状況を報告していました。
それが、ものすごく真剣な会議なのです。
時折、「それはもう内容証明送って法的に進めよう」
などの指示が飛んでいます。
こうやって、全員で状況を確認して
客観的に「次に打つ手」を決めているのです。
昔に見た黒澤明の「天国と地獄」の
刑事達の会議を見ているようで面白かったです。
こうして、「悪意の無い滞納者」を発生させないことと
「悪意のある滞納者」を早めに見つけて対処することが
賃貸管理にとって重要な時代でした。
この経験が、入居審査のスキルにも応用されて
単に滞納が解決するだけでなく、トラブル・クレームが少なく、
退去率の低い賃貸管理に繋がっていくのです。
さて現在は保証会社があるので、
督促と入居審査のスキルが軽視されるようになってしまいました。
管理物件の全ての借主に保証会社が入るならいいのですが、
なかなか、そのような状況にはなりません。
積極的に管理を増やそうと行動すれば
築年数の古い物件も途中から管理することになるので、
個人の連帯保証人だけの借主も混じってきます。
その借主は、全て保証会社と新たに保証契約してもらう
という方針も可能でしょうけど、
中には、保証会社のついていない借主もあり得る訳です。
だから、今でも賃貸管理会社にとって督促と入居審査は
とても重要で必須のスキルなのです。
それに気付いていない管理会社さんや
賃貸管理スタッフもいるかもしれませんね。
北九州の賃貸管理実務研修で教わったのは
「初期督促の重要性」でした。
初期督促は滞納発生から30日くらいを指しますが
この時期の徹底した督促業務が重要です。
具体的には、
文書を送る、電話する、訪問するという業務ですが、
これを「作業としてこなすのではなく」
目的を理解して、しっかり行うことです。
目的とは以下の2点です。
「悪意のない借主さんに期日を守っていただくように教育する」
「悪意のある借主を早く認識して早めに督促の手を打つ」
これによって、安易な滞納が防げれば、
余分な督促作業を減らすことができます。
そして、本当に対処すべき不良滞納者からの被害を
最小限に抑えることができます。
さて、教わったことを、もう少し具体的に書きましょう。
月末に締めて滞納リストを作ったら
すぐに、文書か電話による連絡を開始します。
この時点では、督促できなく「お尋ね」です。
連絡がつくと「悪意のない借主」はすぐに入金になります。
連絡がつかない人と最初の約束が破られた人は要注意です。
7日から10日の後に2回目のリストを作り、
また、文書と電話による連絡を続けます。
文書名は「お尋ね」から「ご通知」に変わります。
連絡がどうしても取れない人には訪問もします。
この一連の作業で連絡がとれない、入金がない借主は、
連帯保証人に相談を開始します。
このとき、連帯保証人が役立つなら、ここで解決するはずです。
本人か連帯保証人が入金するでしょう。
ここで7日ほど待っても入金か入金予定が示されないときは
連帯保証人へも請求を開始します。
早ければ、滞納発生から30日以内というスケジュールです。
それでも入金か入金の約束がなければ
法的手続きの開始となります。
強制執行が目的というより相手にプレッシャーを与えることで
事態を動かそうとするための手段です。
どんな法的手続きを使うか、
については別の機会に書きたいと思います。
賃貸管理会社から「退化」してしまった
督促術と入居審査のスキルですが、
すべて保証会社に「丸投げ」というのでは
賃貸管理のプロとしては「寂しい」と思います。
でも、督促する機会が少ないので
経験して身につけるのは難しいかもしれませんね。
とにかく、審査と初期督促が重要です。
滞納発生の「最初の30日間」が勝負です。
審査と初期督促がしっかり出来ていたら
その後の滞納者は激減します。
賃貸管理会社から失われつつあるスキルですが、
あなたには、ぜひ、
取り戻していただきたいと思います。
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