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更新料などの条項が違反。 ~契約書の使用差止請求裁判~

適格消費者団体※として認定を受けている「消費者機構日本(東京都千代田区)」が9月6日、東京の管理会社に対して賃貸借契約条項の差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起しました。

貸主と借主の合意に基づいて自由に締結される賃貸借契約のはずですが、その条項に問題があると訴えて、契約書そのものを使用できなくするための裁判です。
事件の舞台は東京ですが、内容は全国に影響する可能性もありますので、以下、解説いたしましょう。

【消費者団体訴訟制度とは】
ある契約で消費者が被害を受けたとき、その被害は少額でも、多くの被害者が続出するような場合、認定を受けた消費者団体(適格消費者団体)が被害者に代わって訴訟を起こすことができる制度です。
通常は、被害が起こった後に賠償を求めて訴えるのですが、今回のケースは、『被害が広がる前に事業者による不当な契約条項の使用を差し止める』という目的で行われています。
たしかに、悪徳業者と言われるものが存在して、無知な消費者に付け込んで不法な利益をあげるという構図はあり得るでしょうし、法律がそれを罰したり防ぐことは大いに歓迎ですが、悪徳でない賃貸オーナーや管理会社が巻き込まれているのは、あきらかに「行き過ぎ」です。

【適格消費者団体とは】
適格消費者団体に認定されるためには、6項目の適格要件があります。現在認定されている団体は以下の通りで、我々の地域にもあります。

・消費者機構日本(東京都千代田区)
・消費者支援機構関西(KC’s)(大阪市中央区)
・全国消費生活相談員協会(東京都港区)
・京都消費者ネットワーク(京都市中京区)
・消費者ネット広島(広島市中区)
・ひょうご消費者ネット(神戸市中央区)
・埼玉消費者被害をなくす会(さいたま市浦和区)
・消費者支援ネット北海道(札幌市中央区)
・あいち消費者被害防止ネットワーク(名古屋市千種区)

【対象となった契約条項とは】
今回は消費者機構日本(東京都千代田区)が、三井ホームエステート(東京都)が使用する賃貸借契約書条項に問題があるとして、その使用を差し止める裁判を起こしたものです。問題となった条項は下記の5項目です
。 ①借主が壁・天井・床、玄関ドアの鍵等の修繕費用の全部又は一部を負担する。
②借主が破産・民事再生手続の申立のときは、契約を解除・更新拒絶できる。
③経年変化・自然損耗の場合でも、クリーニング代等の原状回復費用は、借主の負担とする。
④借主は更新料を貸主に支払う。
⑤明渡しを遅滞した場合には、借主は、賃料等の2倍の損害金を支払う。
(略して表記しています)

【解説】
三井ホームエステートは、①②③については是正するが、④⑤については是正しないと回答したようです。確かに①③の条項は、「東京ルール」※などが浸透している現在では、内容が抽象的で借主の負担が高額になる可能性があるので認められないでしょう。
※東京ルールが適用されるのは東京都内の居住用の賃貸物件のみです。
問題は④の更新料です。京都での更新料裁判では、来年に最高裁で3件の判決が出る予定です。それによって「更新料は違法」という結論が出る可能性もなくはないのですが、それでも、今回の“更新料条項の使用差し止め”は「行き過ぎ」です。
その理由は、

①京都の案件は更新料が「1年で2カ月分」「1年で1カ月分」というもので、今回の2倍から4倍のケースです。
②まだ最終結論(最高裁判決)が出たわけではありません。過去の東京での更新料裁判でも、肯定(東京地判平成4年1月)と否定(東京地判平成9年6月5日)の判断に分かれています。

契約自由の原則を考えれば、貸主・借主が十分に納得して契約したならば当然に有効なはずです。「更新料を負担してでもこの部屋を借りたい」という物件や借主は存在するのですから。
今回は「更新料」ですが、今後は「礼金」「共益費」にも波及していく可能性もあるので、更新料の存在しない地域でも無関係な事件ではないでしょう。
裁判がおこなわれるのは10月14日(木)です。

 

 

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