賃貸住宅の「更新料」の支払いを義務付ける契約条項が有効かどうかが争われた訴訟の判決で大阪高裁は10月29日、「有効」との判断を示しました。大阪高裁は8月27日、別の裁判長が「無効」の判決を言い渡してるので、高裁レベルで全く両極端の判断が出た形となりました。
敗訴した入居者側は上告する方針です。
8月27日の判決では敗訴した家主側も上告してるので、この2つの異なった判断のどちらが正しいか、結論は最高裁の判断に委ねられることになりました。
判決理由で三浦潤裁判長はまず「更新料は礼金と同様、入居者としての地位を得る対価の追加分で、家主には必要な収益だ」と位置付け、「礼金と比べて適正な金額にとどまるならば、入居者に一方的に不利益とは言えない」と判断しました。
その上で「更新料がなかった場合、家賃が高くなった可能性もある。入居者も契約時に更新料が返還されないことを認識していた」と指摘。「家主が押し付けた不利な条項で消費者契約法に照らし違法」と返還を求めた入居者の主張を退けました。
訴訟の内容は、訴えた男性は2000年12月、滋賀県野洲市のマンションに入居しました(家賃5万2000円、共益費2000円、駐車料3000円、敷金20万円、礼金20万円、更新料は2年で2ヶ月分)。
「2年ごとに家賃2カ月分の更新料を支払う」という契約に合意して、2007年4月の退去までに3回更新、計26万円を支払っていました。
更新料をめぐる訴訟では京都地裁などで入居者側の敗訴が続いていましたが、今年7月に同地裁で入居者側が初めて勝訴して、8月には大阪高裁が「入居者と家主とは情報量に大きな格差があり、対等な立場で契約条件を検討できない」などとして無効と判断を示し、その後は入居者側勝訴が続いていました。
さて、気になる“今後”ですが、すべては最高裁の判断に注目する、ということになります。
弁護士の解説によりますと、
「3通りの判決が予想される」とのことです。
つまり、更新料そのものについて有効、無効の判断が下されるケースと、あくまで個別事例として判断されるケースです。
もし、更新料自体が無効と判断された場合には、賃貸業界の混乱は避けられず、少なくとも今後の契約で更新料の名目で金銭を徴収するような条項はなくなることになるのでしょう。
「更新料はもう支払いません」という借主が出てくるでしょうし、過去の更新料返還を求める訴訟が頻発することも予想されるようです。
個別事例として判断された場合は、「1年で2.2ヶ月分」という更新料が無効であり、過去の支払い分の全部か一部を返還せよ、とのことですから、京都や滋賀エリアの「1年で1ヶ月」「2年で2ヶ月」「2年で1ヶ月」などの条件まで網をかけて違法とは結論づけていないことになります。
「全ての更新料は違法」とはならないだけに、望みがもてます。これは、関東などのその他の地域でも同様です。
さて、この問題への対策として、賃貸借契約を定期借家契約に切り替える動きも予想されています。
定期借家契約には更新がなく再契約を繰り返していくため、更新料問題の発生する余地がないからです。
更新料に代わり再契約ごとに再契約料を徴収していきます。
更新料は契約が継続されていく中で徴収されますが、借主が更新料の支払いを拒否しても、それを理由にして貸主は更新そのものを拒絶することはできません。なので、借主が更新料の存在理由を理解して支払うことが重要視されます。
再契約料は、再契約を結ぶための条件なので、再契約料が支払われなければ貸主は再契約に応じないで済みます。つまり、再契約料は契約条項ではないため消費者契約法の適用対象外になるとみられているのです。
いろいろな予想や対策がありますが、今後の推移に注目してまいりたいと思います。