投資分析の話のつづきです・・・・
重要な数値はNOI(エヌオーアイ)であると申し上げました。
営業純利益と呼ばれます。
オーナーが実際に手にした家賃収入(実効賃料)から、
ランニングコスト(運営費)を差し引いた、
文字通りの「本当の儲け」です。
この物件の実力を示す数値です。
実質利回りは、
NOIを投資額で割ることで求められます。
700万円(NOI)÷1億円(投資額)=7%(実質利回り)
1億円を投資した物件の、
全室が100%稼働すれば1000万円の家賃収入をもたらす、として
空室などのロスが10%(100万円)、
運営費コストが20%(200万円)かかれば、
家賃収入の残りは700万円となり、
投資額1億円に対して7%の利回りとなる、
・・・・という計算式です。
図で見ると分かりやすいかもしれません。
http://geonetwork.co.jp//mail/images/2.gif
四角形の底辺が投資額(1億円)で高さが利回り(7%)で、
面積がNOI(700万円)です。
でも、オーナー(投資家)は700万円を手にすることは出来ないかもしれません。
1億円の一部を銀行から借り入れている場合が多いからです。
この分は元利均等で返済していくことになります。
1億円のうち7000万円を借りたとしましょう。
25年返済で金利2.0%で借りると、
元利均等の年間の返済額が約356万円です。
この元利返済額356万円を借入額7000万円で割ると5.09%になります。
356万円÷7000万円=0.5.086
これは7000万円という資金の調達にかかったコストです。
※このコストを「ローン定数」と呼びます。
このコストをNOIから差し引けば、
実際にオーナーが手にすることのできる数値が分かります。
700万円(NOI)-356万円(7000万円の調達コスト)=344万円
この344万円がキャッシュフローです。
※もちろん税引前ですが。
図にすると、こうなります。
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分かりますか?
1億円の物件から得られる700万円の儲けを
オーナーと銀行で分け合っているカタチになっています。
この物件は7%の利回りがありますから、
もし友達に「7000万円を投資してほしい」と言ったら
友達は、7000万円の7%の利回りの490万円を要求するのが当然でしょう。
7000万円×7%=490万円
http://geonetwork.co.jp//mail/images/4.gif
でも銀行は「5.09%の356万円でいい」と言っているワケです。
お蔭でオーナーは、
投資した3000万円の実質利回り7%に当たる210万円より、
134万円も多い344万円を手にできます。
オーナーの投資利回りは11.5%にもなります。
344万円÷3000万円(投資した額)=0.11467
分かりますかね?
オーナーが1億円の全額を投資したら、
手にできる自己資本に対する利回りは「7%」です。
7000万円を借り入れて3000万だけ投資すると
手にできる自己資本利回りが「11.5%」になるので
銀行から融資を受けた方が利回りが良くなるのです。
この状態を「レバレッジがかかっている」と表現します。
自分の力以外のものを利用して、更に力を増す行為ですね。
文字通り「テコの原理」を利用しています。
不動産投資家はこのように、有利な融資条件を探して物件に投資します。
もちろん、銀行からの調達コスト(ローン定数)の方が、
実質利回りよりも高くなってしまう場合もあります。
その場合は「マイナスのレバレッジ」状態です。
あまり、よくありませんね。
この説明を読んで「面白い」と思った方は、
さらに学んだらいいと思います。
「難しい」と感じた方は正常です。
この程度の説明で理解できる人は「ものすごく」少ないと思います。
ただ、オーナーさんは不動産投資をしているのは事実で、
そこから「収益」をなるべく多く得よう、としているも事実です。
そして、収益とはNOIのことです。
この収益は色々なものの影響を受けますが、
融資条件も「そのひとつ」であることを知っておきたいのです。
しかもかなり大きな影響を・・・・。
ここから先は、投資分析のついでに説明します。
これを知らなくても、
一般的なオーナーさんのプロパティマネジメントを
行うことに不便はありません。
中古アパートを購入してもらい、
何年後には売却して利益を得ることを提案するなら「必須」の知識ですが。
もうひとつ、投資分析をするときの知識として、
「時間と価値の関係」を理解する必要があります。
今日の5万円と1年後の5万円は価値が違う、という事実を知ることです。
有名な「マンハッタン島を24ドルで買った」という話があります。
買ったのは白人(オランダ系移民)で売ったのがインディアンです。
1626年のことです。
白人がインディアンを騙して「タダ同然」の値段で買い叩いたのだろう、
と考える人は「時間と貨幣価値の関係」を無視しています。
もし380年前の24ドルを銀行に預けて複利で回したら、
とてつもない金額になります。現在のマンハッタン島の土地が買い戻せるほどです。
(もちろん利率にもよりますが)
これは、基本的に「インフレ」を想定しているので、
デフレが永く続いた日本の状況を見ると理解しにくいのでしょう。
でも日本も、やがてインフラになります。
(現在は円安で物価が上がってますが)
長~い視点で見れば、日本だってインフレ基調のはずです。
つまり、今日の貨幣価値より5年後の貨幣価値の方が低いのです。
さて、この考えは投資分析にどう影響するのでしょうか。
たとえば、
1億円で購入した物件が翌年、営業純利益(NOI)を1000万円稼ぎました。
実質利回り10%ですね。
その翌年も、そのまた翌年も、通算で5年間、1000万円のNOIを稼ぎ続けました。
5年間で5000万円も稼いだわけです。
翌年、オーナーさんの都合で物件を売却したら8000万円で売れました。
このときオーナーは5年間で、
利益を5000万円得て売却価格で8000万円得たので
合計1億3000万円です。
最初の1億円を差し引いて
「儲けは3000万円」と計算したくなりますね。
しかしこれは、「時間と貨幣価値の関係」を無視した計算です。
翌年の1000万とその翌年の1000万とは、
厳密にいうと価値が違うのです。
その翌年も・・・・・・です。
5年後に売れた8000万円も、
最初に1億円で物件を購入したときの貨幣価値ではありません。
この5年間の投資分析をするには、
その年度ごとの数字を現在の価値に「割り戻す」必要があるのです。
面倒な計算のようですが、
専用電卓を利用したり、エクセルの「IRR関数」を利用すると
比較的簡単に計算することができるのです。
中古アパートの購入を検討しているオーナーさんに、
このような計算で作られた提案書が提出できたら、
ずいぶんと信頼度が違うでしょう。
もし、これ以上興味がありましたら、
「DCF分析」「IRR」「内部収益率」「正味現在価値」
などのキーワードで検索すれば、
いろいろなサイトが教えてくれるでしょう。