空室対策が順調に進んでいるかどうかを、どのようにチェックすればよいのでしょうか。
今回は、空室対策の健全度を計る数字について考えます。
料収入や入居率は、空室対策の成績を簡単にチェックできる数字のひとつです。
しかし、単に賃料収入が増えたり入居率が上がったとしても、それだけで判断するのは正しくないケースがあります。
たとえば、管理会社からの提案で高額のリフォームを実施した場合、部屋は埋まって賃料収入は増えても、それを上回る経費がかかっていたら、よい結果とはいえないでしょう。
入居率の向上も、管理会社の提案で家賃値下げを実施した結果だとしたら、同じくよい結果とはいえないでしょう。
この2つの数字が悪化したからといって、「どんな手を打てばいいか」の答えに直接には結びつきませんから、空室対策の成績をチェックするには役不足です。
「収益」が空室対策のバロメーター
賃貸経営の目的のひとつは「稼ぐこと」、つまり「収益をあげること」です。
収益とは、賃料収入から運営費用を差し引いた額です。
さきほどの例では、高い費用をかけてリフォームを実施して、その結果賃料収入を増やしても、それを費用が上回れば、結果として収益が減ってしまいました。
つまり、収入と費用のバランスが大事で、この差を一番大きくして「収益の最大化」を図ることが大切なことはご存知の通りです。
空室対策の成果を知るためにも「収益」という数字をチェックすることは大きな意味があります。そして、収益を増やすには、次の3つの手段が必要になります。
賃料を高くすること
物件の魅力を高め競争力をつけることによって、賃料条件をなるべく下げず、少しでも高く設定できるようにする。
ロスを抑える
空室や家賃の未回収などの「収入減らす要因」をつぶす。
コストを最適化する
余分なコストは使わず、必要なコストだけを効率よく使うようコントロールする。
このように収益に着目するとことによって、具体的な改善点を見つけることができます。毎月、欠かさずに収益を計上してチェックすることをお勧めいたします。
収益は「賃料収入-運営費」で計算します。運営費とは、
・固定資産税や保険料や建物の共益費
・管理料や入居募集にかかる費用
・原状回復費用やリフォーム費用
などです。
ただし、確定申告用の損益計算ではないので、運営費の中に「支払利息」や「減価償却費」は入れません。
もうひとつの数字「キャッシュフロー」
もうひとつ重要な数字があります。
それは、実際にオーナー様の手元に残る「キャッシュフロー」です。
もし、月の収益が100万円あったとしても、負債の返済が80万円だと手元に20万円しか残りません。
いくら収益があっても、負債返済額が多すぎてキャッシュフローが足らなくては健全とはいえません。
その原因は、投資のうちの負債割合が大きすぎるのか、借入条件が悪いのかもしれませんので、改善を検討する必要があります。
キャッシュフローが貯まってないと、いざというときのグレードアップ工事や、予防のためのメンテナンス工事が実施できません。
結果的に収益の悪化に繋がりますから、毎月のキャッシュフローという数字も必ず把握するようにしてください。
計算は「収益-負債返済額(元利合計)」で求めることができます。
退去の状況を数字でチェックする
空室対策でもっとも重要なことは「退去を防ぐこと」です。
そのために、オーナー様の物件の「退去状況」を知ることも大事なチェックポイントです。
オーナー様の物件は、「健全な退去状況」に収まっているでしょうか?
その数字は「退去率」や「退去数」でチェックすることができます。
退去率は、単身者物件なら年30%、ファミリー物件なら年20%程度が標準と言われています。
これを大きく上回っているとしたら、何らかの改善が必要でしょう。
入居者が、施設や管理の状況に不満を持っているか、入居者同士の問題が起こっている可能性が考えられます。
あるいは近隣に、条件のよいライバル物件が出現しているのかもしれません。
この実態は、入居者へのアンケートで得ることができますので、特に退去者に「退去理由」を必ず聞くようにすべきです。
このように、空室対策の成績チェックとして、「退去の状況」にも着目することをお勧めします。