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オーナーへの空室対策提案 ~空室対策の「3つの間違い」~

今回のテーマは空室対策のときに犯しやすい「3つの間違い」。その第一回目です。

「空いてから行う」ものではない

よく「来年の繁忙期に空室を埋めるために、今から対策を考えよう」という言葉を聞きます。
あるいは、「もう、3ヶ月以上も空いているので、何か対策を講じよう」と相談したりしています。
空いている部屋を埋めるための空室対策、ということでしょう。

しかし、空室対策とは「空いてから行う」ものではなく、「いつでも」意識して実践し続けるものです。

たとえば満室の時、「部屋は埋まっているのだから、費用や手間をかける必要はない」と何の手も打たないのが普通です。
結果として、家賃収入は高く、支出は低いので、「収益は大きく」なります。
収益が大きくなることは良いことですが、そのままの状態が続くことはありません。
税金も徴収されますし、手元にあればお金を浪費してしまうかもしれません。
やがて、空室が目立ち始めると、今度は費用や手間をかけて、部屋を埋めようとします。
空室で家賃収入は減り、支出は増えるので、「収益は小さく」なります。
収益が増えたり減ったりと、長い賃貸経営の中で「収益の振幅」が大きくなります。

一方で、私たちがお勧めする空室対策は、満室時でも費用と手間をかけ続けているので、まず「退去する人」が少なくなります。
もし空いたとしても、空室期間は長引きません。
毎年の収入と支出に大きな変動がなく、「収益の振幅」は小さく安定します。

たとえば、5年間居住したAさんが退去したとします。
早く埋めるために、家賃を下げるか、エアコン等の設備を追加するか、リフォームに費用をかけるでしょう。
これが「普通の空室対策」ですね。
でも、よく考えてみると、Aさんが退去したあとに、家賃を下げるか設備を追加しなければ借り手がつかない、ということは、Aさんが暮らした5年間の後半は、Aさんは「高い家賃」を払い続けていたことになります。
そう思ったから退去するのかもしれませんし、そうでなかったとしても、Aさんのような退去予備軍が、借主さんの間にまだいる可能性が高いでしょう。
借主さんの入居中は何もしないで、退去されると費用をかけるような方法を続けていると、借主さん同士の間に不公平が起きることになります。
入ったときと出るときで、「部屋の価値」に差があるのですから。

一方で、5年の間に、Aさんが希望するように小さな費用と手間をかけていれば、Aさんが、この施設に不満で退去する、ということは起こりません(そもそも、今回の退去は防げたかもしれないのです)。
Aさんの居住中も「お部屋と施設の競争力」が保たれていますので、次の借主さんのために、特別に大きな費用をかける必要もありません。
お部屋のためのお金は、借主さんが入居中のときと、退去したあとの空室中のときと、どちらで使ったら価値が高いのでしょうか。
そして、どちらの方が、結果的に「多くの収益」を得ることができるのでしょうか。

空室対策とは、「空いてから行う」ものではなく、「いつも」実践し続けるものなのです。

「逆」椅子取りゲームとは

よく「春の繁忙期はお客様が多く来店するので、この時期に部屋を埋めましょう」と言いますが、本当にそうなのでしょうか。
実は、お客様が「多く来る」のではありません。ただ「動く」だけです。

1000席の会場に、お客様は800人しかいない、とします。200席は空席です。これが全国的な賃貸の状況です。
そして春の繁忙期になると、100人のお客様が一斉に席を立ち、他の会場に行ってしまいます。
入れ替わりに、100人の新たなお客様が来場されて、空いている300の中から、自分が「座る椅子」を探します。
席を立たれて、空席になった椅子だけが、限られたお客様を取り合っているのです。「椅子取りゲーム」とは正反対の光景ですね。

繁忙期とは、会場を出て行くお客様と、入ってくるお客様の数が多いだけです。
200の空席が埋まるワケではありません。

まず、お客様に座っていただいている間も、「座り心地を良くする努力」を続けることです。
肘掛けを付けたり、クッションを良くしたり、リクライニング機能を足したりと、汗を流し続ける必要があります。
座り心地が良ければ、余程の事情がなければ、「席を変える必要」はありません。
日頃から、丸椅子なら丸椅子なりに、パイプ椅子ならパイプ椅子なりに、「料金に見合った座り心地の椅子」であり続けていれば、また選んでいただけるはずです。
席を立たれてから、慌てて補修するのでは、「一歩遅れている」のではないでしょうか。

「いつでも空室対策」を実践するには

たとえば12月の時点で、30戸のうち5戸が空いていたとします。
「この5戸を何とか埋めたい」と考えるのが、普通の空室対策です。
ところが、入居中の25戸にも、新たな退去が起こるかもしれません。
繁忙期とは、多くのお客様が「来る」のではなく、「動く」のですから。

それが理解できていれば、25戸の借主さんに、「4月までに退室される予定はありますか」と聞くはずです。
そして、4人の借主さんが「引っ越しを予定している」と答えたとしたら、そのときは退去の理由を尋ねます。
その結果、2人の借主さんから、「同じ条件で“もっといい”貸室を探したい」という声を聞くことができました。
その借主さんの希望する、設備の追加やリフォームをすることで、「引っ越しを思いとどまって」もらうことが出来ました。
これで4月までに埋めるべき貸室は、最初の5部屋に2件の退室が加わって7部屋になりました。
退去を予定した借主さん達の要望を参考にして、設備追加やリフォーム等の対策をして、満室を目指します。

そして、ここからが、「いつでも空室対策」を実践するために大事なところです。
対策が功を奏して満室に近くなっても、ここで手を緩(ゆる)めてはいけないのです。
今まで入居していた21戸の借主さんにも、順番に費用と手間をかけていくのです。
12月の時点比べて5戸分の家賃収入が増えたのですから、その半分くらいをかければ、一部屋ずつ、希望する設備追加やリフォームをする資金は捻出できるでしょう。
長く暮らしている借主さんも喜ぶはずです。

このようにして、「収益の振幅」の小さな安定した経営が可能になります。

空室対策は「空いたとき」に考えるのではなく、「満室のとき」に手を打ち続けるものです。
「これから」のお客様より、「いま」のお客様を大切にすることを、「あなたのオーナー」に提案してください。

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