Q.賃貸経営にとって「修繕計画を立てることが重要」と聞いたのですが、修繕計画について教えてください。
A.修繕計画とは、建物本体や設備について、(たとえば)30年で必要になる、修理、交換、塗装、防水といった修繕の、適切な時期と費用を予定としてまとめたものです。
この計画表によってオーナーは、30年間で必要となる修繕費用を知り、備えることができます。
また、水漏れ、断水、排水ができない等の水回りの事故や、設備が使用できずに生活に支障をきたすような緊急事態となる前に手を打つことができるのです。
分譲マンションを所有すると、管理費とは別に、毎月「修繕積立金」を徴収されますが、これは、修繕計画によって算出された費用を基にして、区分所有者から集めて備えておくものです。
分譲マンションは、区分所有者全員で負担しますので、一人当たりの額は大きくはありませんが、オーナーはひとりで負担しなければならないのがツライですね。
Q.どのくらいの費用が必要になりますか。
A.一概には言えませんが、ここに日本賃貸管理業協会(日管協)の資料がありますので、この数字で説明いたします。
この資料によると、「木造 1K 10戸」の建物の場合で、最初の10年間でかかる修繕費用は60万円です。(下の数字を参照)
【木造 1K 10戸 建築費4500万】
経過年数 修繕費用 全体の割合
0年~10年 60万 4%
11年~20年 630万 40%
21年~30年 890万 56%
合計 1580万
ところが次の10年は630万円が必要になります。
そして最後の10年は、なんと890万円の修繕費用がかかると試算されています。
30年合計で1580万円です。概算ですが、木造10戸のアパートの建築面積が250㎡として、建築費を㎡単価18万円と想定すると、建物価格は4500万円となります。
1580万円ということは、建築価格の35%が30年間の修繕費用として必要ということです。
これを360ヶ月で割ってみると約4万4千円になりますから、毎月家賃収入の中から4万4千円を備えに回しておかなければ、将来の修繕費用に困る、ということになります。
修繕計画を立てることによって、このような実態が分かるので、「備えよう」という意識が高まるはずです。
ただしこの修繕には「グレードアップのための工事」は含まれていません。
この工事の目的は、新築時の状態に「なるべく」戻すことです。
30年の間には、新築時にはなかった設備を付け加えたり、機能の高い設備に交換したり、間取を変更するという「グレードアップ工事」が必要になると思いますが、その費用は含まれていません。
Q.随分とかかるのですね。建てるときに知っていたら、もう少し考えたかもしれません。
A.賃貸経営は、建物と設備を貸して対価を受け取る商売なので、施設の維持や運営に費用がかかるのは当然とお考えください。
建てたら、「あとは家賃が入ってくるだけ」という認識では難しいです。
ただ、長期で必要になる費用を知った上で、募集計画や修繕計画や資金計画をしっかりと立てれば、お客様(借主)の需要は固い商売ですから、きっと上手くいくはずです。
ご経験や知識が足らない部分は、信頼できる管理会社を見つけて、二人三脚で頑張っていただきたいと思います。