空室に困っているオーナー様からご相談を受けました。

ご所有の物件はつぎの通りです。
「ＲＣ造３階建　１８戸　築２５年　３ＤＫ　５８㎡　５戸が空室」

一番長い部屋は１年近く空いています。
６ヶ月以上が２部屋で、残りの２部屋は空いてから２～３ヶ月だそうです。
最近空いた２部屋は原状回復工事をしていないので尋ねると、「資金の関係で先の３部屋が決まってからやりたい」とのこと。
確かに、先に退去した３部屋が、工事後６ヶ月～１２ヶ月経過していますから、「２部屋が決まったらすぐに工事する」という条件を提案しました。
物件とお部屋を拝見して「気になった」のは下記の４ポイントでした。

・二部屋が和室で暗いイメージ
・水回り設備がすべて２５年前のまま
・集中ポストも２５年で壊れかけている
・礼ゼロだが敷金２ヶ月という募集条件
３ＤＫという間取りは最近では人気がありませんが、５８㎡という面積は魅力があるはずです。
地域の他の募集物件を調べてみると、同じ客層を狙うライバル物件も多いことが分かりました。

まずはリノベーションを検討してみます。
ユニットバス、キッチン、トイレ、洗面の水回り設備をすべて入れ替えて、間取りを２ＬＤＫに、和室のひとつを洋室に変えると数百万円かかります。
５部屋となると１０００万円を超えてしまう予算です。
現金を入れて借入れを１０００万円に抑えれば、１０年で月々の支払いが９万２０００円程度ですから、２部屋分の家賃収入で「おつり」がきます。
このまま長期に空かせていても仕方がない、と提案したところ難色を示されました。
理由は新たに借金することに気が進まない、この建物をこれから１０年以上維持するか決心がつかない、とのことです。
さらに、他の部屋も空くたびに工事することになり、総額が５０００万を超えることになりますので「それはやりたくない」とのご意志でした。
ＲＣ造は耐用年数は４０年以上ですから、もし築５０年まで活用する計画なら、築２５年は丁度半分が経過したところなのでリノベーションに最適なタイミングです。
２億円以上をかけた建物ですから、再生をかけたリノベーションにも、「それなり」の費用はかかります。
仮に６０００万円を返済期間２０年、年２％の金利で借りると、月々の支払いが約３０万円になります。
現在より収益とキャッシュフローが残る計画なのですが、「１０年以上賃貸経営を続けるか決心がつかない」のでは仕方がありません。

「ならば１０年後に売却を考えては」と進言するのが普通ですが、お父様が土地活用のために始めた賃貸経営なので、「売る」という選択肢はないのです。

そこで「最低限の出費」という条件で空室対策を考えることにしました。
「家賃の値下げ」だけの対応だと、他の入居者さんとのバランスがあり、これからの「入居者さんの質」も心配されます。
そこで、以下の工事を提案して、実施しました。

【水回り】　蛇口やシャワーなどの水洗具だけ交換して、キッチンとユニットバスは塩ビ製シートで化粧直し。
【和室】　木部をペイント、襖に茜色や萌黄(もえぎ)などの日本伝統色を使い、照明器具（数千円）とシェードカーテンを設置。
【洋室】　壁の一面だけアクセントクロスを貼り、照明器具（スポットライト）を設置。
【エントランス】　プランタンを４つ置いて草花を植え、集中ポストを取り替え。
【募集条件】　礼金ゼロ、敷金ゼロに。

工事後に、一部屋だけ家具を設置して「モデルルーム化」してから、近隣の不動産会社には「ＡＤ（広告料）つき」という条件で図面を配布したところ、問い合わせが増えて、２ヶ月で３部屋が決まりました。