繁忙期が終わると、いよいよ消費税8%の時代に突入しますが、オーナー様の賃貸経営にどんな影響があるのでしょうか?
ご存知の通り、平成元年に3%で導入された消費税は、居住用賃貸物件の家賃にも、事業用と同じく課税されていました。
各オーナー様と額(ひたい)を寄せて「3%を上げるか、それとも据え置くか」と相談したことを思い出します。
当時は年間3000万円以上の家賃収入でなければ非課税業者となり消費税を納める必要はなかったので、「上げない」ことを選択したオーナー様も多くいました。
そのあと、全国の家主や不動産会社からの要望もあり、平成3年10月に非課税となりました。
すると「導入時に3%を上げたのだからその分を下げるべきだ」みたいな意見が出て、消費税分を徴収していない貸主まで肩身の狭い想いをしたりして、まったく、消費税には右往左往させられたものです。
そもそも、居住用賃貸物件の貸主と消費税の関係には理不尽なものがあります。
一般の商売で考えてみましょう。10万円で売る商品の原価が5万円のときは、仕入れるのに消費税を4000円負担するので、仕入価格は5万4千円になります(8%で計算しています)。
それを10万で売るときは、別に消費税を8000円預かりますから、売上は10万8千円になります。
そして簡易課税方式なら4000円の消費税を国に納めるので手元には利益の5万円が残ります。(108,000円-54,000円-4,000円=50,000円)
このように一般の商売では、仕入れ時に消費税を負担して、売るときに徴収しても、最後に消費税を国に納めれば手元には5万円の利益だけが残ります。
消費税は目の前を素通りしただけで、事業者の手元に残るワケではありません。
では、消費税は誰が負担しているのか、というと、それは最後に購入した消費者、つまり「最終消費者」ということになるワケです。
でも一般の商売と違い、居住用賃貸物件の家賃は非課税となっていますので、貸主は消費税は預かりません。
しかし貸主は部屋を貸すための修繕費用やその他の支払い時に消費税を負担しています。
家賃の原価には消費税が乗っているのに、その分は回収できない立場なのです。
つまり、居住用物件の賃貸契約における最終消費者は「借主ではなく貸主」と考えればいいのでしょう。
しかし、畳やクロスを替えるのは「自分で消費」する為ではないので「仕入原価」です。
それでも「最終消費者」として扱われるので「ちょっと理不尽だな」と感じます。それが10%に増えたら、さらに大変です。
その分を家賃に転嫁したいと考えても、市場(借主)には簡単に許してもらえません。
今回の税率アップでも、商品の値上げを断念した小さな商店主は多いのではないかと思います。
さて一方で、事業用賃貸物件(店舗・事務所・駐車場等)の貸主の対応は分かれます。
事業用の家賃収入が年間1000万円を超える課税貸主なら、当然に消費税分を5%から8%に変更するでしょう。
年間家賃収入が1000万円に満たない非課税貸主の場合は「どうするか」それぞれの判断が必要になります。
いずれにしても消費税を徴収する場合は、1年半後には10%になる可能性もありますから、今後の契約書等には「賃料10万円(別途消費税)」等と、税率変更に対応できるようにしておきましょう。
さて、消費税増税に対して、貸主はどのように対応すればいいのでしょうか。
小さな商店主や企業は、コストアップに対して、まず内部の合理化を進めようとしています。
そして次に、自分の商品に、さらに磨きをかけて、競争力を高めようとします。
背中を丸めて縮こまっているだけでは負けてしまうのです。
居住用賃貸物件の貸主も、さらに「運営費の合理化」を進める必要があります。
それは「お金をかけない」ということでなく「生きた金をかける」ということです。
そして物件に競争力をつけて、ライバル物件より1000円でも2000円でも、借主が高く借りてくれるような魅力を持たせることが、ますます重要な時代になってくるのだと思います。