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入居者の「人気設備ランキング」に思うこと

賃貸業界誌のお正月号に「人気設備ランキング」の記事がありました。
2004年から2013年までの10年間の、ランキングの「移り変わり」が解説されていて、興味深い記事でした。
その中でファミリー層の人気設備第一位は、圧倒的に「追い炊き機能」だそうです。
他にも、TVモニター付きインタホン、温水洗浄便座、独立洗面台などは、時代に左右されることなく上位にランクインしています。
「インターネット無料」や「オートロック」なら、少しの家賃アップを入居者は認めると回答しています。単身者の人気設備も大同小異です。

このアンケート結果を見ていると、入居者に支持される一番の近道は「設備を充実させること」と思えてしまいます。
しかし、本当にそうでしょうか。
入居者が望むのは、生活する上で「困ったり、不便に感じたり、心配な事」を取り除くことです。
設備は、その解決策のひとつではありますが「すべて」ではありません。
入居者は、設備を求めているのではなく「快適な暮らし」を求めているのです。

一括借り上げで有名なD社が、「生活で困っている、不便・心配なこと」という入居者アンケートを行い、その結果がオーナー向け書籍に紹介されていました。
それによると上位には、「留守の時に宅配便が受け取れない」「近隣の情報が入らない・相談できる人がいない・地域イベントの参加方法が分からない」「外出時のセキュリティが心配・電気、ガス、エアコンを消したか心配になるときがある」「室内の電球や蛍光灯の交換が大変」などの回答が並んでいます。
「あなたは、どんな設備を希望しますか?」と質問すれば「追い炊き機能付き給湯システム」と答えるかもしれませんが、「何に困っていますか?」と聞くと「追い炊き出来ないこと」と答える人は多くはないのです。

この回答をみたら、「そんなことまで大家が面倒は見きれない」というのが正直な感想かもしれません。
でも入居者に、このようなニーズがあるのは事実す。
だから、「多少はお金を払ってでも利用したいサービス」を尋ねると、「宅配便の発送や受取りの代行」「長期の留守の時の見回り」「鍵、蛇口、電気、エアコン、ガスの閉め忘れと消し忘れのチェック」「鍵の紛失時の開錠」など意外な答えが並ぶのです。
これらは、長く暮らしている地域で、近所に家族や親しい友人がいれば、頼むことが可能なものばかりです。
他の地域から賃貸住宅に引っ越して「知り合いが近くにいない」という事情の入居者が多いのだろうと思います。
この中のひとつでも、貸し手側が「手を差し伸べることができるもの」はないでしょうか。

「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然」と言ったのは遠い落語の世界です。
入居者も、貸し手側の過度の干渉は嫌うかもしれません。
でも「知り合いの少ない」地域に暮らすうえで、不便や不安を多く感じていることも事実です。
ここに「暮らしたくなる賃貸住宅づくり」のヒントがあるのかもしれません。

D社のアンケートにはありませんが、「24時間いつでもゴミが出せると便利」という要望も多いと思います。
特に年末や年始の時には「そう感じる」人は多いでしょう。ゴミのストック場所と、収集日にゴミを出す人手があれば、このニーズは満たすことができます。

「入居者のニーズを叶える」ことは「設備や間取を良くする」だけではありません。費用をかけるばかりではないようです。
このような、表面に出ない「不便で困っていること」への対応も、人気の高い賃貸物件への「ひとつの道」なのではないでしょうか。

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