前回の記事は、
築年数が20年を過ぎた物件への
リニューアル企画提案がテーマでした。
そこに大きなニーズがあることと、
マーケットが広がっていることが
この手法をお勧めする大きな理由です。
この方法は、あなたの管理物件の「平均築年数」を若返らせ、
オーナーにキャッシュフローの増加をもたらします。
企画作業の手順は、
・リニューアル後に入居していただく借主を想定する
・その借主が払える家賃を想定する
・その家賃から予算の上限を設定する
・予算内で「その借主」に支持される企画案を考える
というものでした。
そして、完成したニューアル企画案のプレゼン資料を作成し、
オーナーに説明するのですが、
その中のシミュレーションが重要な位置を占めています。
シミュレーションとは「投資分析」のことです。
そう言うと難しそうですが、
「このリニューアルという投資は、割に合うのか?」
というオーナーの不安に対する答えです。
ここが貧弱だと、提案内容がいくら優れていても、
説得力が格段に落ちてしまいます。
なのでシミュレーションは重要なパートです。
本日は、よく使われる「簡易版のシュミレーション」から説明しましょう。
以下のような物件を対象としたケース、で進めていきます。
「賃料6万円、10戸、長期空室(6ヶ月以上)4戸、築20年の木造アパート」
入居の6戸は6万円で契約中、空室の4戸も6万円で募集中とします。
リニューアル総額は、
4室のリニューアルと外壁の塗り替えで950万円。
(各部屋150万円×4=600万円。外壁塗装に360万円)
リニューアル後は7万円で貸せるとします。
リニューアル後は7万円で貸せるので、
月間28万円、年間で336万円の収入増になります。
70,000円×4戸=280,000円
280,000円×12ヶ月=3,360,000円
入居率を100%として計算するのは妥当ではないので90%とすると
年間の賃料収入は3,024,000円になります。
3,360,000円×0.9=3,024,000円
この収入は950万円の投資によってもたらされたので
利回りを計算すると31.8%になります。
3,024,000円÷9,500,000円=0.318
よって、このリニューアル企画の利回りは31.8%です。
いい利回りですよね。いかがですか?
このシミュレーションを分かりやすい表にしてオーナーに提示したら
オーナーの反応はどうでしょうか?
30%を超える「利回り」が本当ならスゴイですね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
決して、あなたを試しているワケではありませんが、
この計算は実は「本当のこと」を言っていません。
でも、このような計算式はよく使われて、
実際に提案にも利用されていると思います。
どこが「本当のこと」ではないのでしょうか?
少し考えてみてください。
・・・・・・・・・・・・ 考え中 ・・・・・・・・・・・・
このシミュレーションは、
「このままリニューアルしないと4戸の部屋は空いたまま」
という前提に立っています。
実際には賃料を下げれば、この4戸は決まりますよね・・・・。
たとえば賃料を5万円に下げれば決まる、と査定したとします。
その場合の入居率は90%は難しいとして80%としましょう。
計算を展開すると、
50,000円×4戸=200,000円
200,000円×12ヶ月=2,400,000円
2,400,000円×0.8=1,920,000円
リニューアルしなくても賃料を下げて対応すれば
年間で192万円の収入が増えます。
ということは、リニューアルしたときに
本当に増えた収入は、
3,024,000円-1,920,000円=1,104,000円
1,104,000円です。
これが正味の増加分です。
これは投資した950万円の11.6%になります。
1,104,000円÷9,500,000円=0.116
31.8%と比べるとずいぶん下がりましたね。
でも11%以上の利回りは、新規で物件を購入するのと比べて
決して低いものではないのですが・・・・。
このシミュレーションだと、オーナーは
「これなら賃料の値下げで対応すればいいのでは?」
と反応する場合もあると思います。
でも「賃料の値下げ」で対応すると、入居中の6室の賃料も
時間が経つと5万円に近付いていくことになります。
賃料が下がったことを知った入居者から値下げの交渉が入るでしょうし、
退去すれば次の賃料は5万円になるからです。
さらに5万円の賃料も下げ続けなければならないでしょう。
そのような物件の「入居者さん」の質も気になります。
トラブルや滞納が増えると、僕は予想します。
このように、
単年度だけのシミュレーションでは読み取れない「リスク」があります。
そのリスクをオーナーに理解していただく必要があるのですが、
このシミュレーションでは説得力に欠けます。
これは「簡易版シミュレーション」の限界です。
もう少し、シミュレーションに説得力を持たせるには、
複数年(5年ほど)に渡るものを、
リニューアルしないで「値下げ」で対応したケースと、
リニューアルを実施したケースと2つ作って
見比べてもらばいいのです。
その方法は、次回、お届けします。