ある方から、
「オーナー情報誌の記事の内容が難しくて、オーナーに質問されたら不安」という指摘(苦情?)をいただきました。
僕の「オーナー情報誌の作成代行サービス」をご利用いただいている会員さんです。
確かに、
最近の記事は、少しハードルを高くしている傾向があります。
この情報誌の主旨は、
見込みオーナーに定期購読していただいて管理を任せていただくことなので、
どうしても「意気込み」を強く語りたくなってしまうのです。
(実はもうひとつ理由があるのですが、それについては本文の最後に)
10月号では「管理スタッフに要求される知識」について書きました。
あなたは、
管理スタッフに要求される知識と言われたら、どんな知識を思い浮かべますか?
◎インターネット集客と部屋を決めるためのリーシング実務。
◎ヒューマングレードを維持する目的の入居審査。
◎滞納に対する初期督促の方法。
◎退去立合いから原状回復リフォームの手配、その後の敷金精算。
◎クレームやトラブルを現場に行って解決するための交渉やメンテナンス発注と確認作業。
◎日常清掃や定期メンテナンスの実施方法。
◎賃貸借契約を取り扱う上での法律知識 などなど。
確かに「これら」は必要な知識ですよね。
すべてをマスターしたら、管理スタッフとして一人前と認められるかもしれません。
でも、僕が10月号で書いた「要求される知識」ではありません。
記事で書いたのは、「オーナーの収益確保に役立つために必須な知識」です。
だから、上記のリストには含まれていません。
しかし当メルマガが提唱する「収益改善提案型」の管理スタッフには必須なのです。
まずは税金の知識はいかがでしょうか。
オーナーが収益を確保するためには税金対策を避けて通れませんね。
オーナーがこの問題をおろそかにすることは考えられません。
でもオーナーは、管理スタッフを相手に税金のことを語ることはありません。。
その理由は「彼らに話しても仕方ない」と思っているからです。
最初から期待していないのです。
たとえば所得税です。
あなたは、オーナーが所得税を節税するために何をしているか、ご存じですか?
賃貸経営の目的は「収益をあげる」ことですよね。
あなたの賃貸管理が役立ってオーナーが儲かれば、税金を多く課せられるのは当然です。
「儲かるほど税金が高くなる」
その現実を避けることはできませんが「賢い節税」は必要です。
そのために、
個人事業のオーナーは「青色申告」をしているかもしれません。
奥様や娘さんに「専従者給与」を支払っているかもしれません。
あるいは法人を設立して、その法人に管理を委託したり一括借上げをさせたりしているかもしれません。
なぜそうするのか?
「収益改善」を提案する管理スタッフとして知っておくべきではないでしょうか。
「代行型賃貸管理」が目的の管理スタッフは、税金を知らなくても作業を代行することはできます。
たとえばオーナーに「そろそろ外壁塗装をしましょう」と、数百万円の見積もりを提出するとします。
代行管理の管理スタッフは「外壁塗装費用が必要経費になるか資産計上されるのか」を考えることはないでしょう。
同じ工事費用でも、何が必要経費となり、どれが資産計上されてしまうかを知らなくても支障はないのです。
もしかしたら、その言葉の意味すら知らないかもしれません。
でも、あなたの管理が「収益改善提案型」ならその知識は不可欠になります。
オーナーの収益に直結することを「知らない」では済まされません。
リフォーム工事を提案するときも、それが必要経費となるような工夫を講じるはずです。
もし資産計上されてしまう場合でも、減価償却の期間を短くする工夫を税理士に相談するでしょう。
それが収益を左右するからです。
もし工事の実施時期が秋口を超えていたら注意が必要です。
オーナーが個人事業なら12月が決算の締めとなります。
多額の費用がかかるリフォーム提案の場合は、「今期の経費とするか来期に繰り延べた方がいいか」
オーナーの意向を確認して施工のタイミングをはかるべきです。
それを考慮しないでオーナーから「それは来期の経費に回したい」と言われてしまったら、
知識と「おもいやり」のないことが露呈してしまいます。
もうひとつの税金は固定資産税です。
これについて、あなたが関われる部分は多くはありませんが、
3年に1回の評価替えくらいは注目したいですね。
建物の評価は、経年によって当然に下がります。
でも建築費が高騰している時期に評価替えが行われると、つられて建物の評価が据え置かれることがあります。
土地の評価だって、直前の公示価格が正確に反映されているか、気になりますよね。
この前の基準年度(評価替えが行われる年)はいつだか知っていますか?
去年の平成24年です。次は2年後の平成27年です。
オーナー訪問の際の話題くらいにはしたいものです。
そして相続税は本丸です。
これも同じく、あなたの関われる部分は多くはありません。
建築した時点で「貸家建付地等の評価減」が実現しているので、目的の多くを達成しています。
でもその仕組みを、あなたは理解しているべきです。
貸家建付地等の評価減は築年数が経てばその効果は薄れます。
ローンの残高は減るし、
長期の空室があれば貸家建付地の評価が高くなってしまうかもしれませんから。
相続税対策が第一目的のオーナーにとっては、
目の前の収益より相続発生時に「どう評価されるか」が重要です。
だから
大規模リニューアルをして、新たな借入を起こして、
そして満室にするという提案は「理に適って」いるのです。
ローンについての知識はどうでしょうか。
あなたの管理が「収益改善提案型」なら、オーナーの収益が一番の関心事のはずです。
収益とは文字通りの「利益」と「キャッシュフロー」を指します。
キャッシュフローは「資金繰り」のようなもので、年間を通して、オーナーの手元に必要な資金があることはとても大切です。
必要なメンテナンスを実施するためには資金が必要ですし、税金を収めるためにも必要です。
決算で利益が出ているのに、税金を払う資金が不足するという事態が起こることがあります。
それは、経費とならない出費(資産計上される工事など)が多いことなどが原因です。
逆に、出費を伴わない経費(減価償却費や出張手当など)を多くするとキャッシュフローが残ります
キャッシュフローはいつもチェックしておく必要があるのです。
そのキャッシュフローに大きく影響するのはローン返済額です。
元金と金利が同じなら、返済期間を長くすればローン返済額は抑えられます。
つまりキャッシュフローは増えます(利息を多く支払うことになりますが)。
変動金利と固定金利の動向についても注視しておくべきです。
場合によっては借換えの提案を考えることもあるからです。
大規模リニューアルで新たな借入を起こすときは、
借入条件(金利と期間)は賃貸経営に大きく影響しますから、
提案するあなたの関心事でもあるはずなのです。
このような知識を基にした会話や提案をオーナーと交わせたら、
オーナーが持っている管理スタッフのイメージと、レベルが全然違うと思いませんか。
このスタッフに管理を任せたい、と思っていただけるのではないでしょうか。
10月号では、こんな記事をオーナーに読んでいただきました。
もしあなたが「知識が全然不足している」と自己評価するなら
確かに「オーナーに質問されたらどうしよう」と不安になるでしょう。
でも、だから「勉強しなくては」という現実に気が付いてくれたり、
発奮材料になってくれたらいいな、と思っています。
それが「もうひとつの理由」でもあります。
この記事をキッカケに、社内の勉強会が活発になってくれたら
スタッフのレベルアップに役立てるかな、と勝手に期待しています。
今回のメルマガの中で、
ひとつでも「よく分からない」ところがあったら、ぜひ学んでください。
本を4~5冊も読めば十分だと思います。
僕も結構な年齢(とし)ですが、月に5~6冊くらいの関連本は読んでいますよ。
最近読んだ税金の本は
「大家さん! 節税がお金を残す秘訣です」
「大家さんのための節税対策」
メンテナンス系では
「はじめての賃貸マンション 大規模修繕」
ネット集客では
「鳴らす会社の考え方」(キンドル版)
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