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最近起こった「敷金返還請求」のてんまつ

本日は、「敷金請求」の話をしたいと思います。
僕のコンサルティング先(A社)で起こった「本当の話」です。
(どこにでもある、普通の話ですが)

当事者がいるので、少し内容を変えてありますが・・・・。
今年の1月中ごろ、1週間位前に退去した借主から「内容証明郵便」が届きました。内容は、敷金15万円(家賃の2ヶ月分)と過払い賃料3万円の、合計18万円を返却してほしい、というものです。返さなければ「法的手段」に訴えますと、書き添えられていました。
それより前にA社が退去者に送った書類には、畳とルームクリーニング料金の65,000円を差し引いた、115,000円を返却する、と説明されていました。双方の主張の違いは65,000円です。

退去者からの内容証明郵便は中々良く出来ていて、国土交通省や県の消費者センターにも相談をした旨が記されていました。A社が家主さんに報告すると「面倒だから返していいですよ」という返事でした。顧問弁護士さんに内容証明郵便を見せて意見を求めると、「借主の言い分がもっともなので、裁判でも負けますよ」という回答です。
さて、皆さんの会社では、この先、どうしますか?

A社の取った行動は、請求額の18万円を全額返還する、というものでした。僕が聞いた時にはすでに振り込んだ後だったのです。「事前に相談を受けていれば、僕の答えは違うのになぁー。」と言ったのですが「後の祭り」ですね。
その日の午後に、別のコンサルティング先で、僕はその話をしました。そしてスタッフ全員に「皆さんだったら、どうしますか?」と質問しました。全員が当然のように「全額を返します」と答えましたね。理由は「大家さんが返せ、と言っている」「弁護士が勝てない、と言っている」からです。

さて、僕の答えです。
(このメルマガを読んでいただいている方の半分以上は、僕と同意見ではないでしょうか)
この時点では、退去者に全額を返しません。
まず、退室後1カ月以内に、畳とルームクリーニング費用を差し引いた115,000円を振込みます。相手が内容証明できてるので、こちらも内容証明を送った方がいでしょう。内容は、
「18万円を返却せよ、とのことですが、契約書第○条の通りに65,000円を差し引いて、115,000円を振込ますので、ご査収ください」
みたいな感じです。それで、相手の出方を待ちます。

115,000円を受け取った相手が、あと65,000円のために、少額訴訟裁判を起こすかどうか・・・・・・。
その可能性は、「いくぶんは」減ると思います。

それでも相手が65,000円の請求で訴えると言ってきたら、「65,000円を折半で負担しないか」と交渉します。
それでも訴えられたら、「さっさと残金を返還」します。
「32,500円欲しさ」に、少額訴訟を起こす相手の執念に脱帽です。

まず弁護士さんの「裁判に負けるよ」という回答ですが、「裁判の勝ち負け」を予想するのは、まだ早いですよね。
・相手が本当に裁判を起こすかどうかも分からない(脅しかもしれない)。
・交渉の余地があるかもしれない

弁護士さんは専門家として「この事件で裁判になれば負けるだろう」と言っているだけです。「交渉できますか?その方法は?」と聞けば、答えは違っているでしょう。

大家さんは、「裁判に出廷することを恐れている」のかもしれません。ただ「面倒を避けたい」のかもしれませんが、金額が10倍の650,000円だったら、簡単に諦めたでしょうか。そして大事な点は、このことでA社に対するオーナーの信頼は「増した」でしょうか。

私たちの賃貸管理の目的は「オーナーの収益を多く残す」ことですから、ここは踏ん張って、少しでも返還する金額を減らすべきです。
「なるべくトラブルを避けたい」という現場スタッフがいますが、「オーナーをトラブルから守る」ことと「自分がトラブルから逃げる」ことは違いますよね。オーナーの利益を守るためには、「多少のトラブルにも飛び込む」覚悟がほしいと思います。
賃貸管理のスキルを上げるには、「トラブルを経験する」のが一番の近道ですから。

A社へのアドバイスとして、以下の2点を伝えました。
1.契約書と重要事項説明書の見直し
・畳とルームクリーニング費用は、具体的な金額を入れる
・赤字か太字で印刷する
・特約の下に借主に署名させる
・重要事項説明書の交付と契約締結を同じ日にやらない(1週間以上は空けたいです)

以上は、裁判になったときにオーナーが有利なように。もうひとつは、相手がこの契約書を確認したときに裁判を諦めるように。
重要事項説明書の交付と契約締結の間を空けるのは、「借主に考える時間を与える」ためです。消費者契約法違反かどうかを争ったときに、オーナー側に有利になると思います。

2.簡単な「作業手順書」の用意
今回のような「慣れない」事態が起こったときに、簡単な項目が並んでいる「手順書」があれば、慌てないで済むし、間違った判断も防げます。
・部屋で自殺があった
・管理物件が火事になった
・同じマンション内の騒音のクレーム
など(数え上げればキリがないですけど)

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