Q 6年間住んでいた入居者が退去しました。部屋の状況はかなり痛んでいて、壁のクロスは変色して一部は剥がれています。
カーペットも貼り替えないと使用できない状態でした。立ち会いの際に、入居者も自分達が汚損させたことは認めていました。
リフォームの見積額は50万円に上り、そのうち畳の表替えとルームクリーニング費用と、痛みのひどい洋間のクロスの貼り替え、カーペットの貼り替え費用で25万円を請求しました。
入居者は「クロスは経年劣化ではないか」と不満を表しています。合意できていない費用は3万円くらいです。
当方としてはクロスとカーペットは通常を超えた使用によるものだし、畳とクリーニングは特約に記載してあるので弱みはないと思っています。
預かっている敷金は16万円です。この請求は正しいでしょうか。
A まず、現状を正しく理解しておく必要があります。
借主に請求する25万円の内訳の中に、恐らく、洋間のクロスとカーペット費用の全額が含まれていると思います。
これは故意過失・通常を超えた使用による損害としての請求ですが、実は借主には費用全額の負担義務はありません。請求できるのは残存価値の部分だけです。
入居期間は6年ということですから、減価償却されたあとの残存価値は20~10%程度と思われます。
つまり、借主が負担しなければならないのは工事にかかる費用の20~10%のみ、ということになります。残りの80~90%は、貸主が家賃収入のなかから償却という形で負担すべきという考えですね。
次に特約に書かれている「畳とルームクリーニング費用」についても、消費者契約法などを持ち出されると、必ずしも家主の言い分が通るとは限りません。
腹立たしい話だとは思いますが・・。
念のためにお断りしておきますと、この説明は家主さんに「だから我慢して借主に敷金を返しましょう」と言っているわけではありません。
借主と有利に交渉を進めるためには、事実を正しく理解しておく必要がある、ということです。
現在の状況は、もし借主負担額を22万円で合意すれば、敷金16万円の不足額6万円を借主から徴収する、というカタチになります。
事実を理解すれば、これが貸主にとってどんなに有利な条件かが分かると思います。ですから、借主が支払いを了解しているうちに合意書を作って、差額の6万円を徴収して決着をつけるのが一番良い方法だと思います。
借主の事情が変われば、「敷金を返してほしい」という要望に切り替わる恐れもありますので。