広島県福山市のホテル火災で思うこと
また「建物火災」で犠牲者が出ましたね。
この手のニュースを目にするたびに、
オーナー業と賃貸管理業のリスクを思い知らされます。
事件の概要はすでにご存じだと思いますが、
広島県福山市西桜町1のラブホテル「プリンス」で、
5月13日早朝に火事があり、宿泊客7人が死亡。
ほとんどの方が煙に巻かれての一酸化炭素(CO)中毒。
1階の「ちゅう房」付近が火元とみられています。
県警は「殺人容疑」で現場の検証令状を請求したそうです。
殺人容疑ですって・・・・
このような事態で必ず語られるのが、
市や消防局による是正指導です。
・停電時に避難誘導灯が点灯しない
・排煙設備がない
・内装に不燃材を使っていない
・避難訓練をしていない
・消防設備の点検報告をしていない など
記事を見ると、そのような不備のオンパレードです。
ホテルの経営者は「お金がかかるので難しい」と回答していたそうです。
その結果、逮捕されるんですね。この人は。
消防局は10年近く前に査察して指導したあとは、立ち入り検査を行っていません。
2年に1回は査察をする「決まり」ですが、
「対象施設が多すぎ、人手も足りなかった」と釈明しています。
どこの消防局も、実際の現場はそんな感じでしょう。
なぜ、是正指導しても改善されなかったのか。
それは、この建物が、法改正によって適合しなくなった「既存不適格」のためです。
だから、罰則のある是正命令までは出せないのです。
この点について福山市は
「改善するよう管理者に働きかけるべきだったが、強制力はなく、制度上の問題もあった」と言っています。
規制する法律に限界があって、
それを取り締まる側も「やるべきこと」が出来ていないのです。
でも、ひとたび事件が起これば、
責任を追及されるのは、オーナーと現場管理者です。
同じようなことが、
「新宿歌舞伎町のビル火災」でも、
2年半前の「東京都杉並区の居酒屋火災」でも繰り返されています。
このリスクは、ホテルやテナントビルに限ったことではなく、
あなたが管理する賃貸マンションにも存在します。
僕は賃貸管理研修の冒頭でいつも言っています。
・オーナーは、様々なリスクを負って賃貸経営をしている
・賃貸管理会社の使命のひとつは、そのリスクを回避して、被害を少なくすること
・しかし、オーナーのリスクを「ゼロ」にすることはできない
でも、
「賃貸管理会社は『ノーリスク』にしなければないない」と・・・。
そうですよね。
あなたは、決してリスクを負ってはいけません。
こう言っては何ですが、
家賃の5%をいただいて、
オーナーの法的責任や損害賠償のリスクを、
たとえ一部でも追うのは「割に合いません」。
だから「ノーリスク」となるように身を守らなければなりません。
賃貸管理会社が、今回のような事件の渦中に巻き込まれたら
他のオーナーに大迷惑がかかってしまいます。
100人のオーナーの賃貸管理を預かっているとして、
1人のオーナーのリスクに巻き込まれたら
99人のオーナーに迷惑をかけてしまうのです。
だから賃貸管理会社は、
リスクに巻き込まれるのも、倒産するのも「ダメ」なのです。
(誰だって倒産は「ダメ」に決まっていますが)
賃貸管理会社が、どのようにリスクを「ゼロ」にするか、
まず管理物件の中で、
法定点検が義務付けられている建物・設備については、
資格のある業者を複数オーナーに紹介して、
相見積のうえ、オーナーに選んでいただき、
法定点検を法令を遵守して実施してもらいます。
(こんなこと、当たり前にやっていると思います)
もしオーナーが拒否したら、賃貸管理会社の選択肢はふたつでしょう。
・そのような無責任なオーナーとは付き合わない
・その経緯(いきさつ)をしっかり記録に残して管理を続ける
(万一の場合の責任の所在を証明するためです)
でも、あなたの提案は正しいのですから、
受け入れてもらえるような信頼関係を築いておくべきですね。
それから、法定点検を依頼する業者からのバックマージンも貰わない方がいいです。
(理由は、分かりますよね)
もうひとつ、賃貸管理委託契約をチェック。
「物件のことは何でも管理します」的なことが書かれていたら怖いですね。
管理者として責任を持つ範囲と、責任を負わない範囲が明確になっていること。
オーナーの法的責任や損害賠償責任は、
賃貸管理会社は「免責」となるように記述されていますか?
特に、昔に契約した物件は、
初期の賃貸管理委託契約書が「簡単な内容」だったりますので、
「書き直し」を検討すべきでしょう。
何度も書きますが、
「責任逃れ」をするのではなく、
その他のオーナーに対する「責任を果たす」ためです。
さて、あなたの使命は
「オーナーのリスクを回避して、被害を最小限にすること」と書きましたが、
オーナーのリスクは火災ばかりではありません。
物件の中で誰かが、
滑ったり、転んだり、落下したり する危険もあります。
物件の中で誰かが、
強盗や、盗難や、性犯罪や、もっと悲惨な事件に巻き込まれる危険もあります。
地震や、竜巻や、土砂崩れや、津波に遭う危険もあります。
税制が変わったり、金利が上がったり、訴訟を起こされたり、
関係者の倒産という危険もあります。
空室も、値下がりも、滞納による未回収という危険もあります。
あなたはオーナーのために、
これらのリスクを想定して予防すべきです。
もし、リスクが現実のものとなったら、
オーナーの被害を最小限に抑えるように行動すべきです。
これは、プロパティマネジメントにとって重要な職務ですね。
でも・・・・
何度も言いますが・・・・
「あなたのリスクは『ゼロ』にしなければなりません」
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