第4回 「借入金利息の注意点」


オーバーローンと必要経費

 不動産所得の計算上、土地・建物を購入・建築する際にかかった借入金に対する利息は必要経費に算入することができます。ただし、借入金利息の算入は、テナント募集の時期からとなります。

 それ以前の借入金利息は、土地・建物の取得価額に算入しなければなりません。建物に関しては、建築後に減価償却をすることで、結果として経費に算入することになります。しかし、土地については、減価償却という手続きがありません。その土地を売却等により処分するまで、取得価額を構成したまま経費や原価として、税金の計算上、控除されない事になってしまいます。

 なお、土地・建物の購入・建築価額以上の借入金利息は、不動産所得の必要経費に算入することはできませんので、注意してください。個人の不動産所得には、原則として事業の運転資金という考え方がありません。そのため、借入金利息についても、借入れの使途・目的が明らかに不動産の賃貸収入を生ずるために必要なものだけに限定されるのです。

不動産所得における必要経費の考え方

  不動産所得における必要経費を考える場合、忘れてはならないことがあります。
上記の借入金利息でも触れましたが、必要経費の考え方が、賃貸収入を得るために必要なものに限定されていることです。

 一般に“ひも付き”といわれるもので、不動産所得については、経費として認められる範囲は非常に狭いものと考えて良いでしよう。
法人で賃貸業を経営する場合と比較すると分かりやすいと思います。たとえば、個人の不動産所得には、交際費や車両関係費(車両の減価償却費やガソリン代等)は基本的には認められないことが多いのです。賃貸収入との直接の結びつきを説明することが難しいからです。仮に認められる場合も、その全額を経費とすることは、実務上は困難なのです。

 不動産所得は利子所得、配当所得とともに資産所得と呼ばれることがあります。これらは事業所得や給与所得のような勤労による、いわゆる額に汗する所得に比して、不労所得という考え方です。いわば、金持ちのおまけの所得というとらえ方です。
筆者の偏見かも知れませんが、税務当局は額に汗をしない不労所得には、結構厳しい考え方を持っているような気もしますし、そうした捉え方を実務上してきます。

 これに対し、法人の場合の取り扱いは異なります。理論的な問題は別として、実務上の取り扱いだとご理解下さい。法人の資金で車両を購入し、資産として計上した場合、一般的にはこれらを法人の費用とすることは、さほど難しいことではありません。交際費についても同様で、法人の方が許容範囲が広いと考えて良いでしょう。というより、税務当局も、これらの行為が法人としての行為でないことを立証することは、事実上困難なのです。

 くどいようですが、これらはあくまで理論的な話ではなく、実務上の扱いの問題です。その意味では、後述する法人の形態をとった賃貸経営も、一考の価値はあるものといえるかも知れません。


損失が生じた場合の損益通算等

 不動産所得に損失が生じた場合、他の所得と通算することができます。これを損益通算といって、結果として課税される金額が減少する効果を生じます。
たとえば、不動産所得△150万円で給与所得2,000万円の場合、合計所得金額は、 2,000万円−150万円=1,850万円 となります。不動産所得に損失額を出すことで、節税対策となるのです。
ただし、土地の借入金利息については、特例規定があり、不動産所得の損失額部分のすべてを損益通算できない場合があります。
不動産所得の損失額のうち、土地の借入金利子の金額部分は損益通算が認められないのです。

上記の例を使って説明しますと、
@土地に対する借入金利息が100万円の場合
2,000万円−(150万円−100万円)=1,950万円

A土地に対する借入金利息が200万円の場合
2,000万円一0(注)=2,000万円

(注)土地の借入金利息200万円が不動産所得の損失額150万円よりも大きい状態です。土地の借入金利息を超える部分の不動産所得の損失額しか損益通算が認められないので、0となります。