父が亡くなり、古いアパートを相続しました。
 なにぶん旧式の木造アパートなので、空室が目立ち始めています。そこで、現在の古アパートを取り壊して、なにか別な建物を建てて利用したいと考えています。現在3分の2ほどの部屋に借家人が住んでいますので、立ち退かせなければなりません。このために、家主として留意しておかねばならない対応につき教示してください。

書式での通告が必要

 基本的に、以後、借家人との借家契約を終了させて、借家人を立ち退かせたいと家主が考えているのなら、そのことを少しでも可能にするための対応に留意しなければなりません。

@期限の更新防止
 最近の賃貸借契約なら、まず期限が決められているはずです。そして、その期限の1年から6ヶ月までの間に、家主から「更新しない」とか、「借家条件を変更しないと更新しない」とかの内容の通知を借家人にしておかないと、借家契約は自動的に更新されてしまいます(借地借家法26条1項)。
 したがって、本問のような場合、家主としては、まずこの更新防止のための借家人への通告を忘れてはなりません。

A更新拒否の正当事由
 先の更新拒否は家主の一存では認められず、これらが認められるためには、正当理由がなければなりません(同法28条)。
 どんな理由が正当理由として認められるかは、ケースバイケースでさまざまです。例えば、本問のような場合、アパートが老巧化して、根本的にに改造しなければ倒壊の危険があり、その改造には新築に等しいくらいの費用が見込まれるとかの場合、正当理由として認められるでしょう。

B契約解除
 借家人が、借家契約で決められた約束ごと、例えば家賃の支払い
などを怠った場合、家主は借家人の契約違反を責めて、借家契約を解除することができる場合もあり、このときは借家人を貸室より退去させることができます。
 しかし、裁判所の考え方は、借家契約の特殊性から、わずかな契約違反では、解除までは認めず、借家人の契約違反か、家主に対する背信的なものであるようなとき、家主の契約解除、立ち退き請求を認めているようです。

C調停手続きの利用
 例えば、更新拒否にせよ解約申し入れにせよ、家主側にたしかな正当理由がない場合、借家人との話し合いにより、借家人に有利な条件をつけることで、更新拒否とか解約を借家人に承諾させるような場合がよくあります。
 このような話し合いのとき、よく利用されるのが調停手続きです。当事者間に調停委員に入ってもらい、話し合いをすすめてもらうことです。

 この結果、調停が成立し、借家人の立ち退きが調停調書に記載されますと、借家人が立ち退かない場合、この調書にもとづいて、借家人を強制的に立ち退かせることも可能となります。