賃貸倶楽部21 > オーナー座談会 「リフォームによる空室対策」

オーナー座談会 「リフォームによる空室対策」

司会 本日は、空室対策の中でも「リフォーム」について、皆さんのご意見をお聞きしたいと思います。


A 僕は、リフォームに頼らない空室対策を優先させています。 家賃や礼金・敷金などの初期費用の見直しですね。


D フリーレントもそうですね。家賃を下げるのは、なるべくなら避けたいですけど、入居費用は一時的なものですから。それと、空室に家具やカーテンを設置してモデルルームにするのも効果があると思います。


T 空室の維持管理も大切ですよね。定期的に空気を入れ換えたり排水口に水を差したり・・・。僕のところでは周辺MAPを作って置いてありますけど、評判がいいみたいで、よく無くなります。


W 皆さん、まずはリフォームに頼らない空室対策を行っているわけですね。それでも空室が埋まらないときは、リフォームの出番になると思います。


D そうですね。木造で25年〜40年くらい賃貸住宅として働いてもらうには、まったく手直し無し、というわけにはいきませんよね。 お金は掛けたくないし、程度の差はありますが、リフォームはどうしても必要でしょう。


司会 何か、成功事例がありましたら紹介してください。


T 成功でなくて失敗事例です(笑)。20年を過ぎた木造アパートで外壁を塗り替えたのですが、僕の選んだ色が評判が悪いらしく、あまり空室対策になりませんでした。


A どんな色ですか?


T モスグリーンです。


一同 ・・・・なるほどね・・・・


A 外壁の色を決めるのは難しいですよね。僕たちは専門家ではないし。パソコン上でシミュレーションで色を塗り替えた外観は確認できるけど、実際のものとは全然印象が違いますね。


T いまの色と同じにするのが、一番無難かもしれません。


D いやいや。20年前に流行った色を使っても、今の若い人の感性には響きませんよ。「わぁ。住んでみたい」と思ってもらえるような色にするべきだと思います。せっかくお金を使うのですから。


T 何か妙案はありますかね。


D 僕は、よく住宅展示場を見に行きます。目的は、空室を飾るアイディアがモデルハウスの各部屋にあると思っていくのですが、そこで気がつくのは、外壁の色使いが上手だな、ということなんですね。20年前の家の壁とは、色の使い方が何か違うんですよね。


T 確かに。 それぞれの建築会社が専門のカラーコーディネーターを使って色を決めているのだから、今人気のある色使いが学べるわけですよね。


D そうなんです。そこで、友人の大家さんが外壁を塗り替えるときに、この話をして、一緒に住宅展示場に見に行きました。友人はその中でも、明るいベイジュに煉瓦の薄いような色のツートンが気に入って、塗装屋さんを展示場まで連れてって説明したんですよ。 「これと同じ色にしてくれ」って。


A なるほどね。 実物を見てもらった方が間違いがないですからね。それで上手くいったのですか。


D バッチリでしたね。外壁だけは、20年の建物が見違えるようになりました。やはり、色の選び方というのは、すごく重要だと思います。我々素人は、色を軽視しすぎているのではないでしょうか。


A 確かにその通りですね。洋服でも車でも、色が違えば別のものかと思うくらい印象が変わるというのに、外壁に限らず、建物内の様々な部位の色を、私たち素人は実に考えなく決めていましたね。 これは反省しなければなりません。


司会 その他にはどうでしょうか


W 色選びで思いついたのですが、室内のクロス選びも大切ではないでしょうか。賃貸住宅の洋室のクロスの色は、ほとんど「白」ですよね。何か、決まりがあるのか、というくらい皆さん白を選んでいませんか。


D 仰る通りですね(笑)。魔法にかかったように白基調のものを選んでいます。結局、無難なものを選んで失敗がないようにしたい、という考えが働くのでしょう。


A それと、その重要性に気がついていない。だから、何を選んでも同じ、という感覚でパッパッと決めちゃう。いや正確に言うと決めてないんですね、白っぽい色を選んでいるということは。


T 外壁は20年に一度のことですが、クロス選びは年に何度もあることだから、余計に重要ですよね。 でも、住宅展示場の外壁のような、良いお手本がありますかね。


W はい、あるのですよ。 それは、「壁紙のカタログ」です。


T 壁紙のカタログですか?


W そうです。あの分厚いカタログです。各メーカーが作っていますね。最近ではインターネットでも見ることが出来て、まるで手でページをめくっている感覚で見ることができます。


あのカタログの中に、「モダン」とか「カジュアル」とか「アジアン」というカテゴリー別に編集されたものがあります。そこには、コーディネートされて貼り替えられた室内の写真が多数載っています。あの中から気に入ったパターンをそっくり真似するのです。


A 実際にやってみたのですか?


W ええ。 私の木造アパートの2階は「女性限定」ということになっていたので、家内がクロスを選んだことがあります。


最初に内装業者さんが持ってきたのはクロスの切れ端(きれはし)のようなものばかりでした。家内は小さな切れ端だけ見てもイメージが涌かない、と言って悩んでいたら、分厚いカタログを持ってきてくれました。


そのカタログの、「フラワー」というカテゴリーの中に、家内が気に入ったコーディネートがありました。2種類のクロスを上下に使い分けて、その中間に「ボーダークロス」という、巾10cm程度のクロスでアクセントを付けるのです。


A ずいぶん手間をかけましたね。


W 手間も費用もかけました(笑)。


でも、出来映えは見違えるようです。何万円かのアップにはなりましたが、それには変えられないと思いました。その部屋を決めてくれた方は、「可愛い!」と言って即決してくれましたから。


それからは家内が「クロス選び係」です。


司会 皆さんは、和室はどうされていますか


A 僕は、和室を洋室に変えるリフォームもいいけど、もっと工夫ができないか、と考えています。


司会 工夫とは?


A 畳のままで、和室の良さをアピールできないかと考えたのです。


レストランなど「アジアンテイスト」のものが若者に人気があるのですから。


D 和室って、なぜ人気がないのでしょうか。


T ひとつは、白木の部分だと思います。敷居・鴨居・柱・畳寄せ などの部分が、新しいときは良いのですが、年数が経ってくると黒ずんできて、大げさに言うと不気味な感じがすると思います。


A ああ、うちの子は押し入れの中が暗くて、何かが出てくるようで怖い、と言ってますね。


その“不気味感”を解決すればいいのかな。何かアイディアはありますかね。


T 白木の部分はオイルステンで塗ればいいですよ。柱も鴨居も全部です。白木の朽ちた感じはなくなりますし、アジアンテイストに近くなると思います。


W そしてクロスは、また壁紙カタログの登場です(笑)。ピッタリのがあるのです。


(次号に続く)


司会 この座談会にオーナーさんにお集まりいただくのは、昨年の11月号依頼ですね。今回は、家賃の滞納と督促について、いろいろとご意見や体験談をお聞きしたいと思います。


G 滞納している人は現在もいますね。生活苦から家賃が払えない人がほとんどですが、最近、モラルの低下によるものが増えたように思います。金があるのに滞納する人が増えたような。


D 僕も同感で、回収に行ったときに逆ギレされたり、暴行を加えられそうになったり、モラルに欠けた人による滞納がありますね。


A 不動産会社の担当に聞いたら「車を買ってしまったので家賃が払えない」と言った入居者がいたそうです(笑)。


M 笑い話ではありませんね。お金があっても給食費を払わない親がいるそうですけど、日本人のモラルはどうなっているんでしょう。


司会 連帯保証会社というものが普及していますが、皆さんはどうされていますか。


A 2社の不動産会社に管理や募集をお願いしていますが、保証会社を使ってもらっています。それぞれに別の保証会社と提携しているようですけど。 ただし、学生さんだけは親御さんに保証人になってもらい、保証会社は使いません。


D 学生の親御さんが賃料を滞納することはほとんど有りませんからね。あるとすれば、学生が使い込んでしまうケースですが、そんな時でも親に連絡すれば、すぐに入金されるのが普通ですね。


司会 実際に滞納があったときはどうですか?


A 家賃の集金も保証会社がやるし、滞納があっても立て替えてくれるので、現実的に家賃の入金遅れという実感はありません。 知らない間に片が付いている場合がほとんどです。


司会 他の方はどうですか。


G 僕も不動産会社の方から薦められたので、それを承知するカタチで2年前から保証会社を利用しています。ただ、家賃の未払いは保証会社が保証するかもしれませんが、共同生活のルールを守らないとか、何かが起こったときの身元引受人というような存在は必要なので、賃料未払い債務を除く保証という条件で、個人の連帯保証人を立ててもらっています。


M なるほどなぁ。室内で借主が火事を起こしたときの多額の損害賠償なんて、保証会社は保証しませんものね。 ところで、僕のところも保証会社を使っていると思いますが、正直なところよく分かりません。不動産会社の人が説明に来て「それなら良さそうだからやってください」と言ったのを覚えている程度です。


G 実は失敗したことがあって、僕が家賃集金を自分でやっているアパートのことですが、ある入居者が滞納しているのに2ヶ月間、不動産会社を通して保証会社に連絡しなかったのです。そのときに「督促はしますが、賃料の満額は保証できないのです」と言われました。連絡が遅れると保証される額というか率が下がるのですね。 まあ、遅れても入金されたので被害はありませんでしたが。


A そのようですね。僕は集金までしてもらってるので、滞納があっても家賃は振り込まれるのですが、ご自分で集金しているときは、滞納があったらすぐに連絡しないとダメですね。


司会 Dさんはいかがですか?


D 僕は保証会社は使ってません。不動産会社からもそのような話があったのですが、話し合った結果でやめました。


M なぜですか?


D まず、その保証会社が倒産したらどうなるのか不安でした。すべての借主が「連帯保証人なし」になってしまったら困ると思ったのです。実際に今年の4月頃、大阪の中堅と言われる保証会社が事実上の事業停止状態に陥ったというニュースがありましたし。


全員 ・・・・・


D それに古い物件なので、前からの入居者さんも多く、その方達は個人の連帯保証人です。管理を任せている不動産会社に、「お宅の会社に督促のノウハウがなくなっては困る」と言ったのです。そしたら社長さんが「私は昔から督促の実務をやってきました。私がいますから大丈夫ですよ」と言ってくれて安心しました。


司会 確かに、すべての借主さんに連帯保証会社の保証がつく、というわけでもありませんね。また、保証会社の中にも財務状況が脆弱なところもあると聞きます。そういう意味では、不動産会社さんと一緒に、安心できる保証会社を選ぶことも大切です。 ところで、実際の体験談として何かございますか?


A まだ父が生きていて、僕は手伝っていた頃のことですが、事業に失敗したご主人が行方不明になって、奥さんと中学生の娘さんが残されて、家賃が4ヶ月分滞納したことがありました。3DKで10万円の家賃でした。


司会 連帯保証人は?


A 事業の仲間で一緒に行方不明です。


D 奥さんは保証人とか、契約書に名前を連ねていないでしょ? それでは「私に払う義務がない」と言われたらやっかいですよね。


A ええ。でも、ちゃんと支払います、と言ってくれたのです。昼も夜も仕事をしていたらしく、月末には2ヶ月分を持ってくると約束してくれました。

G それでどうなりました。


A 約束通りに月末に2ヶ月分に少し足りないくらいを持って来られました。そしたら親父はそれを受け取らず、「このお金でもっと狭い部屋に住み替えたらどうか。そのあとで分割で支払ってくれればいいから」と言ったのです。


G へぇー。すごいですね。


A うちの賃貸住宅は3DK以上ばかりなので、2DKとか、丁度いい物件がなかったのです。あれば費用もいらずに移れたのですが、不動産会社を通して引っ越せば契約金も必要だろうって・・・。


G 家賃の支払いのために用意したそのお金をそちらに回しなさい、というわけですね。すごいな。なかなか出来ないですよね。


A 結局、近くの家賃が半分くらいの家に移って、そのあと分割で完済してもらいました。親父が言ってたのは、真面目に働いて返そうとする奥さんに応えてあげたいのが一番だが、もうひとつ考えがあって、このまま家賃を受け取り続けたら、結局滞納の額が膨らんでしまい、うちの被害が大きくなってしまうので、それを避けたいという打算もあった、のだそうです。


D それは打算なんかじゃないですよね。立派な考えです。勉強になります。


司会 そうですね。普通なら奥さんに支払い約定書などを書いてもらい、最優先で賃料の回収に走るでしょうから。でもそうしたら、両方とも被害が拡大して終わったかもしれないわけですね。督促は、何でも力任せに取ることが解決の唯一の道ではない、という事例ですね。有り難うございました。 他には、いかがですか?


G 僕のところで3ヶ月滞納して連絡のつかない独身男性がいました。会社に電話しても退職してて、部屋に行ってもいつも留守です。家賃は3ヶ月分で15万円ほどです。連帯保証人がお父さんで家まで行ってみたのですが、古い貸家に住まわれていて年金でお暮らしのようでした。とても代わりに支払うことは難しい状況でした。


司会 よくありそうなパターンですね。それで、借主とは会えたのですか?


G それが部屋を尋ねてみたらもぬけの殻だったのです。つまり「夜逃げ」状態です。


M 部屋の鍵を開けたわけですね。その時の状況を教えていただけませんか?賃貸中の部屋の鍵を本人不在で開けるのは難しいですよね。


D 本人が3ヶ月以上も滞納していて連絡とれないのだし、部屋の鍵くらい開けてもいいんじゃないですか?


G そこのところは心配だったので不動産会社と相談したのですが、滞納しているからといって賃貸借契約は継続してますから、その男性の居住権もあり、うっかり鍵を開けると「住居不法侵入」になるそうです。


M それで、どうされたのですか?


G 部屋に「○月○日に部屋に伺う」という内容の文書を事前に投函して、当日は、不動産会社の社員の方2人と自分と連帯保証人のお父さんに立ち会ってもらい、合い鍵で開けました。 お父さんには、「家賃が溜まると困るのはお父さんだから」と行って来てもらいました。


司会 そうしたら「もぬけの殻」だった・・・


G ええ。実際には家具や冷蔵庫が残されていましたけどね。


M そのような方法をとれば、賃貸中でも開けていいのでしょうか。


G 本人が出てきて「勝手に入るな。不法侵入だ」と言われたらやっかいだと思います。「大切なものがなくなった」と言われないために、大勢で立ち会ったわけですが、リスクはあったと思います。後で考えたら、警察官に立ち会ってもらったら良かったかも知れません。部屋の中で問題が起きていた可能性もあったわけですから。


M なるほどね。リスクは想定して実行するわけですね。 そうなると今度は契約解除ですね。どのように進めたのですか?


G 連帯保証人さんとの交渉です。滞納家賃を免除する代わりに、お父さんの意志と責任で契約を解除して、荷物を片付けてもらうようにお願いしました。実際の手続きは不動産会社と相談して決めたのですが、まず、部屋のドアに「家賃の催促と期日。それを過ぎたら契約解除」という貼り紙をして、念のために日付入りの写真を撮りました。


司会 内容証明では届かないから貼り紙にしたのですね。


G 次に「期日までに荷物を撤去せよ。過ぎたら荷物を出す」という貼り紙をして、また写真を撮りました。 その期日が過ぎてから連帯保証人と部屋に入り、部屋の状況を写真に収めて荷物を搬出しました。


M 荷物はどこへ?


G いったんは、うちの倉庫に置きました。お父さんには「契約解除と荷物の搬出は自分の責任」という文書に署名してもらって、その代わりに債務免除しました。 これで一件落着となりました。


D 後日談は無いのですか。 後で借主が現れたとか。


G なかったですね。出てくれば本人へは債務免除していませんから請求してやろう、と思っています。


A この場合の家主のリスクはどう考えたらいいのでしょうか。


司会 合法的に正しく行うとすれば、「明け渡し訴訟」を起こして判決を取り、次に「強制執行の申し立て」をしてから実行することになると思います。時間が相当かかるのと(6ヶ月以上?)、費用も相当かかる(100万以上?)と思われます。
今回Gさんが取った方法はリスクがゼロではないでしょう。つまり借主が「契約解除に同意していない。居住権侵害だ。荷物を勝手に処分した。」と言って損害賠償を求めてくることも考えられますし、「住居不法侵入」なら刑事罰の可能性すらあります。


G そこは不動産会社とも相談したうえで決断しました。「契約解除してない」と言うなら本日までの家賃を請求するし、「荷物を処分した」と言われないために家具や冷蔵庫は倉庫に保管しましたから。
不動産会社は、「最後は大家さんの方でご決断ください」ということでしたね。仲介会社として免許をかけてそこまで責任は負えない、ということでしょう。これは家主業を営んでいる我々の商売上のリスクなんですね。


M いやぁ。いま、似たようなトラブルがあるので参考にさせてもらいます。リスクを負うのも怖い気がしますけどね。


司会 さて、本日は貴重なお話を有り難うございました。


賃貸倶楽部21 > オーナー座談会 「リフォームによる空室対策」


熊本市の不動産