賃貸倶楽部21 > オーナー座談会 「家賃滞納の督促について」

オーナー座談会 「家賃滞納の督促について」

司会 この座談会にオーナーさんにお集まりいただくのは、昨年の11月号依頼ですね。今回は、家賃の滞納と督促について、いろいろとご意見や体験談をお聞きしたいと思います。


G 滞納している人は現在もいますね。生活苦から家賃が払えない人がほとんどですが、最近、モラルの低下によるものが増えたように思います。金があるのに滞納する人が増えたような。


D 僕も同感で、回収に行ったときに逆ギレされたり、暴行を加えられそうになったり、モラルに欠けた人による滞納がありますね。


A 不動産会社の担当に聞いたら「車を買ってしまったので家賃が払えない」と言った入居者がいたそうです(笑)。


M 笑い話ではありませんね。お金があっても給食費を払わない親がいるそうですけど、日本人のモラルはどうなっているんでしょう。


司会 連帯保証会社というものが普及していますが、皆さんはどうされていますか。


A 2社の不動産会社に管理や募集をお願いしていますが、保証会社を使ってもらっています。それぞれに別の保証会社と提携しているようですけど。 ただし、学生さんだけは親御さんに保証人になってもらい、保証会社は使いません。


D 学生の親御さんが賃料を滞納することはほとんど有りませんからね。あるとすれば、学生が使い込んでしまうケースですが、そんな時でも親に連絡すれば、すぐに入金されるのが普通ですね。


司会 実際に滞納があったときはどうですか?


A 家賃の集金も保証会社がやるし、滞納があっても立て替えてくれるので、現実的に家賃の入金遅れという実感はありません。 知らない間に片が付いている場合がほとんどです。


司会 他の方はどうですか。


G 僕も不動産会社の方から薦められたので、それを承知するカタチで2年前から保証会社を利用しています。ただ、家賃の未払いは保証会社が保証するかもしれませんが、共同生活のルールを守らないとか、何かが起こったときの身元引受人というような存在は必要なので、賃料未払い債務を除く保証という条件で、個人の連帯保証人を立ててもらっています。


M なるほどなぁ。室内で借主が火事を起こしたときの多額の損害賠償なんて、保証会社は保証しませんものね。 ところで、僕のところも保証会社を使っていると思いますが、正直なところよく分かりません。不動産会社の人が説明に来て「それなら良さそうだからやってください」と言ったのを覚えている程度です。


G 実は失敗したことがあって、僕が家賃集金を自分でやっているアパートのことですが、ある入居者が滞納しているのに2ヶ月間、不動産会社を通して保証会社に連絡しなかったのです。そのときに「督促はしますが、賃料の満額は保証できないのです」と言われました。連絡が遅れると保証される額というか率が下がるのですね。 まあ、遅れても入金されたので被害はありませんでしたが。


A そのようですね。僕は集金までしてもらってるので、滞納があっても家賃は振り込まれるのですが、ご自分で集金しているときは、滞納があったらすぐに連絡しないとダメですね。


司会 Dさんはいかがですか?


D 僕は保証会社は使ってません。不動産会社からもそのような話があったのですが、話し合った結果でやめました。


M なぜですか?


D まず、その保証会社が倒産したらどうなるのか不安でした。すべての借主が「連帯保証人なし」になってしまったら困ると思ったのです。実際に今年の4月頃、大阪の中堅と言われる保証会社が事実上の事業停止状態に陥ったというニュースがありましたし。


全員 ・・・・・


D それに古い物件なので、前からの入居者さんも多く、その方達は個人の連帯保証人です。管理を任せている不動産会社に、「お宅の会社に督促のノウハウがなくなっては困る」と言ったのです。そしたら社長さんが「私は昔から督促の実務をやってきました。私がいますから大丈夫ですよ」と言ってくれて安心しました。


司会 確かに、すべての借主さんに連帯保証会社の保証がつく、というわけでもありませんね。また、保証会社の中にも財務状況が脆弱なところもあると聞きます。そういう意味では、不動産会社さんと一緒に、安心できる保証会社を選ぶことも大切です。 ところで、実際の体験談として何かございますか?


A まだ父が生きていて、僕は手伝っていた頃のことですが、事業に失敗したご主人が行方不明になって、奥さんと中学生の娘さんが残されて、家賃が4ヶ月分滞納したことがありました。3DKで10万円の家賃でした。


司会 連帯保証人は?


A 事業の仲間で一緒に行方不明です。


D 奥さんは保証人とか、契約書に名前を連ねていないでしょ? それでは「私に払う義務がない」と言われたらやっかいですよね。


A ええ。でも、ちゃんと支払います、と言ってくれたのです。昼も夜も仕事をしていたらしく、月末には2ヶ月分を持ってくると約束してくれました。

G それでどうなりました。


A 約束通りに月末に2ヶ月分に少し足りないくらいを持って来られました。そしたら親父はそれを受け取らず、「このお金でもっと狭い部屋に住み替えたらどうか。そのあとで分割で支払ってくれればいいから」と言ったのです。


G へぇー。すごいですね。


A うちの賃貸住宅は3DK以上ばかりなので、2DKとか、丁度いい物件がなかったのです。あれば費用もいらずに移れたのですが、不動産会社を通して引っ越せば契約金も必要だろうって・・・。


G 家賃の支払いのために用意したそのお金をそちらに回しなさい、というわけですね。すごいな。なかなか出来ないですよね。


A 結局、近くの家賃が半分くらいの家に移って、そのあと分割で完済してもらいました。親父が言ってたのは、真面目に働いて返そうとする奥さんに応えてあげたいのが一番だが、もうひとつ考えがあって、このまま家賃を受け取り続けたら、結局滞納の額が膨らんでしまい、うちの被害が大きくなってしまうので、それを避けたいという打算もあった、のだそうです。


D それは打算なんかじゃないですよね。立派な考えです。勉強になります。


司会 そうですね。普通なら奥さんに支払い約定書などを書いてもらい、最優先で賃料の回収に走るでしょうから。でもそうしたら、両方とも被害が拡大して終わったかもしれないわけですね。督促は、何でも力任せに取ることが解決の唯一の道ではない、という事例ですね。有り難うございました。 他には、いかがですか?


G 僕のところで3ヶ月滞納して連絡のつかない独身男性がいました。会社に電話しても退職してて、部屋に行ってもいつも留守です。家賃は3ヶ月分で15万円ほどです。連帯保証人がお父さんで家まで行ってみたのですが、古い貸家に住まわれていて年金でお暮らしのようでした。とても代わりに支払うことは難しい状況でした。


司会 よくありそうなパターンですね。それで、借主とは会えたのですか?


G それが部屋を尋ねてみたらもぬけの殻だったのです。つまり「夜逃げ」状態です。


M 部屋の鍵を開けたわけですね。その時の状況を教えていただけませんか?賃貸中の部屋の鍵を本人不在で開けるのは難しいですよね。


D 本人が3ヶ月以上も滞納していて連絡とれないのだし、部屋の鍵くらい開けてもいいんじゃないですか?


G そこのところは心配だったので不動産会社と相談したのですが、滞納しているからといって賃貸借契約は継続してますから、その男性の居住権もあり、うっかり鍵を開けると「住居不法侵入」になるそうです。


M それで、どうされたのですか?


G 部屋に「○月○日に部屋に伺う」という内容の文書を事前に投函して、当日は、不動産会社の社員の方2人と自分と連帯保証人のお父さんに立ち会ってもらい、合い鍵で開けました。 お父さんには、「家賃が溜まると困るのはお父さんだから」と行って来てもらいました。


司会 そうしたら「もぬけの殻」だった・・・


G ええ。実際には家具や冷蔵庫が残されていましたけどね。


M そのような方法をとれば、賃貸中でも開けていいのでしょうか。


G 本人が出てきて「勝手に入るな。不法侵入だ」と言われたらやっかいだと思います。「大切なものがなくなった」と言われないために、大勢で立ち会ったわけですが、リスクはあったと思います。後で考えたら、警察官に立ち会ってもらったら良かったかも知れません。部屋の中で問題が起きていた可能性もあったわけですから。


M なるほどね。リスクは想定して実行するわけですね。 そうなると今度は契約解除ですね。どのように進めたのですか?


G 連帯保証人さんとの交渉です。滞納家賃を免除する代わりに、お父さんの意志と責任で契約を解除して、荷物を片付けてもらうようにお願いしました。実際の手続きは不動産会社と相談して決めたのですが、まず、部屋のドアに「家賃の催促と期日。それを過ぎたら契約解除」という貼り紙をして、念のために日付入りの写真を撮りました。


司会 内容証明では届かないから貼り紙にしたのですね。


G 次に「期日までに荷物を撤去せよ。過ぎたら荷物を出す」という貼り紙をして、また写真を撮りました。 その期日が過ぎてから連帯保証人と部屋に入り、部屋の状況を写真に収めて荷物を搬出しました。


M 荷物はどこへ?


G いったんは、うちの倉庫に置きました。お父さんには「契約解除と荷物の搬出は自分の責任」という文書に署名してもらって、その代わりに債務免除しました。 これで一件落着となりました。


D 後日談は無いのですか。 後で借主が現れたとか。


G なかったですね。出てくれば本人へは債務免除していませんから請求してやろう、と思っています。


A この場合の家主のリスクはどう考えたらいいのでしょうか。


司会 合法的に正しく行うとすれば、「明け渡し訴訟」を起こして判決を取り、次に「強制執行の申し立て」をしてから実行することになると思います。時間が相当かかるのと(6ヶ月以上?)、費用も相当かかる(100万以上?)と思われます。
今回Gさんが取った方法はリスクがゼロではないでしょう。つまり借主が「契約解除に同意していない。居住権侵害だ。荷物を勝手に処分した。」と言って損害賠償を求めてくることも考えられますし、「住居不法侵入」なら刑事罰の可能性すらあります。


G そこは不動産会社とも相談したうえで決断しました。「契約解除してない」と言うなら本日までの家賃を請求するし、「荷物を処分した」と言われないために家具や冷蔵庫は倉庫に保管しましたから。
不動産会社は、「最後は大家さんの方でご決断ください」ということでしたね。仲介会社として免許をかけてそこまで責任は負えない、ということでしょう。これは家主業を営んでいる我々の商売上のリスクなんですね。


M いやぁ。いま、似たようなトラブルがあるので参考にさせてもらいます。リスクを負うのも怖い気がしますけどね。


司会 さて、本日は貴重なお話を有り難うございました。


賃貸倶楽部21 > オーナー座談会 「家賃滞納の督促について」


座間市の不動産