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京都の「更新料裁判」の判決について

1月30日に、京都地裁でひとつの判決が下されました。 本誌でも何回か取り上げ、オーナーや管理会社から大きな注目を集めていた「更新料返還請求訴訟」です。どのような判断になったのでしょうか。


まず結論は「更新料は有効」「貸主の全面勝訴」というものでした。
地裁前に集まった100人を超えるオーナーや管理会社社員たちは、勝訴を告げる垂れ幕を前に歓声をあげたようです。

裁判の内容を振り返ってみましょう。まず賃貸条件は下記の通りです。

物件/京都市左京区下鴨
     1Rマンション
契約日/平成12年9月1日
更新料/1年毎に10万円
    (賃料の2.2ヶ月分)
礼金/6万円
敷金/10万円
賃料/4万5000円
共益費/なし


 訴えた男性は、5年間に支払った更新料50万円は、家主側の一方的な押しつけで、消費者契約法に違反するとして、全額の返還を求めていました。

これに対して裁判所は、「更新料は1年間の賃料の前払いにあたる」として、更新料の支払いを約束した契約条項は、消費者の利益を一方的に侵害しているとはいえず、「消費者契約法に違反しない」と認定して、男性の訴えを棄却しました。※注 このマンションは学生に人気のエリアにあり、4万5000円の賃料設定は安めだった、とのことです。

 今回の裁判の大きな争点は、「更新料の特約が消費者契約法の第10条に反するか」ということでした。

訴えた側は、「更新料は、家主の地位や情報力を利用した一方的な押しつけで消費者の利益を侵害している」と主張しました。
貸主側は、「更新料は月額賃料を補充しているもので、その結果、賃料を安く設定している」と反論しました。

裁判所は、「この契約の更新料は、契約期間や月額賃料に照らすと過大なものではない」「借り主は、更新料を支払う必要性や金額について説明を受けた上で契約している」ので、消費者契約法の第10条で無効とはいえない、と結論づけました。良識のある妥当な判決だと思います。
 今回の裁判が全国で注目された理由は、行きすぎた消費者保護という流れに歯止めがかかるか、ということでした。

 近年では賃貸経営においても消費者運動の流れが起こり、まず問題になったのが原状回復費用の負担についてでした。これを賃貸借契約における消費者運動の第一次の波とすると、第二次は敷引き特約です。そして第三次として更新料にスポットが当てられました。このまま行けば、第四次として礼金がターゲットとなり、次には共益費・管理費にまで及ぶことも考えられます。その流れの行き着く先は、賃料以外の名目の金額は、すべて合理的かどうかを問われるようになる、ということかもしれません

 そういう意味では更新料のことより、「行きすぎた消費者運動は間違っている」というオーナー達の主張に沿ったカタチで、今回の判決は大きな意味があると思います。

 ただ、礼金・敷金なしの物件が増えているのも事実です。今後は更新料もなし、という条件も増えるでしょう。オーナーとしては、賃料を低めに設定して募集を優先し、その分を更新料名目で徴収するか、「更新料なし」を謳い、賃料に少し上乗せするか、という選択があります。

まず、部屋が埋まってこその賃貸経営ですから、その中で、更新料をどうする、という判断が大事だと思います。

 借主側はすぐに控訴しました。借主側弁護団は「今回の判決は不当」としています。今後、高裁、最高裁と舞台を移していくでしょうから、最終的な結論はまだ分かりません。次の高裁で逆転判決が下される可能性もあるのです。

 なお、更新料特約が消費者契約法第10条違反になるか、過去の判例をいくつか見てみましょう。

2005年10月の東京地裁では、今回同様、借主の主張を退けています。裁判所は「更新料を支払えば2年間は住む権利が与えられ、借主の権利を強化する」という主旨で結論づけています。

2006年7月の明石簡裁でも、「更新料は賃料を補充する性質を持つ」として、消費者契約法に違反しないとしました。


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