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大地震発生時の家主の心得について

 去る7月16日に起きた中越沖地震についての関連記事が、業界の新聞にいくつも掲載されました。それらの中から、オーナーの地震に対する心得についてまとめてみました。



 記事によりますと、上中越地域が今後30年以内に震度6以上の地震に見舞われる可能性は0.1%〜3%程度(文部科学省地震調査研究推進本部による)だそうです。
交通事故による死亡の確率が30年で0.2%だそうですから、やはり地震は「身近なリスク」としてとらえる必要があります。

  まず予防策として、建物の耐震診断や耐震補強が必要になります。現実には費用は(精密診断の場合、木造戸建てで約30〜50万円程度、RC造建物でuあたり500〜2000円程度、耐震補強は木造建物で約50〜200万円程度、RC造建物でuあたり1万5000円〜5万円程度)がかかりますので、診断、補強を行ったほうがよいのは分かってもなかなかできないのが実情だと思います。

 そこで「大地震発生時の家主の法的責任について」という記事を紹介いたします。
  裁判所は震度5に耐える強度がある建物ならば、大地震で建物が崩壊した際でもオーナーに責任はないという認定をしています。

 2005年8月に起きた宮城県沖地震で、あるマンションが倒壊し、ケガをした入居者がオーナーに対し賠償責任を請求しました。
  第一審の宮城県地裁は、この物件がある地点は震度6だったと認定。強い揺れにより建物が崩壊したこのケースではオーナーの責任は認められないとの意見を出しました。
「地震で建物が倒壊した場合、オーナーに過失があると認められるのは震度5以下の場合だけ」という判断です。

 第二審の高等裁判所は第一審を覆し、現地の震度は5だったと認定しました。「その中で崩壊した物件の責任はオーナーが負う」との判決を下しました。
 地震観測所から比較的離れた地点が震度5か6だったかに関しては厳密に判断が難しいのも確かですが、震度5が、損害賠償が生じるかどうかの目安になるようです。

 阪神大震災のときにもオーナーは、物件倒壊により生じた人的被害への賠償問題に直面しました。ある判例では、築40年のアパートが倒壊し、入居者4人が下敷きになって亡くなり、遺族がオーナーの所有者責任を主張して損害賠償を請求しました。裁判所の判断はオーナーの責任を認めるものでした。決め手になったのは、1964年の建築当時の耐震基準を満たしていたかどうか。木造の古いアパートなので、現在の厳しい基準に満たないのですが、40年前の基準で見ても壁当てや耐震強度が不十分で、「安全な建物とは言えない」としました。

 ちなみに、当時の耐震基準は満たしていても、現在は欠陥住宅と見なされる建物が倒壊した場合については、判例がありません。

 いずれの場合も共通するのは、オーナーの所有物件に瑕疵があり倒壊・損害が生じた場合は、知った知らないに関わらず責任が生じることです。

  オーナーには「土地工作物責任」、つまり「安全な住宅を提供する義務」があり裁判所の認定もケースバイケースのあいまいなものです。所有物件の耐震性に心配があるオーナーは、各自治体が行う建築士による無料相談を利用するなどして、物件の現状を知ることが大事となります。

  次にリスク対策といえば、まず保険が思い浮かびます。地震保険は建物、家財に掛ける火災保険金額の30〜50%までしか加入できません。さらに、建物は5000万円、家財は1000万円までという上限規定もありますので、地震保険による保障だけでは損害を十分にカバーできない恐れがあります。
そこで最近は、保障を上乗せするため、いくつかの損保会社が特約により火災保険金額まで補償(地震による火災の場合)する商品が出ています。また、火災保険とは別に単体で地震保険を扱う保険会社もありますし、JA共催の建物更生共催に加入するのもひとつの手です。
今年から原則として通常の火災保険金の損害保険料控除が廃止され、新たに地震保険料控除(所得税=最高5万円、住民税=最高2万5000円)が新設されましたので、これを期に地震保険を検討してみてはいかがでしょうか。

 不幸にも震災にあってしまった場合、オーナーとしては入居者の安全の確保に配慮してください。最初の地震で倒壊せずに済んだとしても余震等での被害が考えられます。必要であれば立ち入り禁止の措置も取らざるを得ませんが、居住権を持つ入居者が自分の財産を搬出するためであれば、立ち入り禁止を強制することもままなりません。
ただし、そのような場合でも後々オーナーが責任を問われることのないよう、あくまで「入居者の自己責任」において行動するよう納得させることが肝要です。
また、「火事場泥棒」よろしく盗難事件が多発することも予想されます。震災時であってもオーナーには一定の管理業務遂行の義務が依然ありますので、防犯に対する措置も出来うる範囲で講じる必要がありそうです。

  さまざまな理由により借主からの契約解除の申し出があることも考えられます。被災後という状況を考えますと速やかに解除の手続きに応じてあげる必要もあると思われますので、平時から敷金等の返済原資はきちんと確保しておくべきです。


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