賃貸倶楽部21 > 空き室対策についてF
司会 空き室対策の優先順位として「サービス」「賃貸条件」「設備」とお話しいただきましたが、次は「部屋」をどのように変えて空き室対策とするか、お話を伺いたいと思います。
G うちの不動産屋さんは「部屋を真新しくしましょう」とか「設備を取り替えましょう」とすぐに言いますよ。
A 仲介業者やリフォーム業者に相談すると、大抵そんな答えが返ってきますね。一見もっともなように聞こえますが・・・・。
D その答えはもっともではないですか・・・・?
A 物件によっては、それで解決する場合もあるでしょうし、そうしなければならない部屋もあるとは思います。でも・・・・
司会 でも・・・・?
A ぼくは必ずしも新品にすることが入居者を呼び込むのに有効な方法とは思わないですね。
その部屋に根本的に魅力が欠けている限り、こちらが望む賃料では入居してくれないでしょう。
G でも、古いから根本的な魅力に欠けているのであって、新品にすれば魅力が備わって、入居者も認めてくれるのではないかな。
M 私の知っている家主で「クロスや床材を貼り替えたり塗装を塗り替えて新築そっくりにしたつもりなのに、半年も空き室のままなのは何故だろう?」と悩んでいる人がいます。
A それは、部屋を見ていないので何とも言えませんが、本当の「新築そっくり」になっていないのでしょう。襖の戸や蛍光灯、キッチンや洗面台まで新しくしていないでしょうから、それらが、いくら磨いても落とせない“時代”をかもし出していて、どうにも中途半端でアンバランスな印象になっているケースがありますよ。
M かといって、クロスや床以外の部分もすべて取り替えたとしたら大変な出費で、それでは採算が合わなくなってしまいますね。
D そもそも設備機器というものは、いくらその時点で最新のものに替えても、すぐにまた新しいものが出て時代遅れになってしまいますからね。
G そうそう。私の家は建ててから4年近くになるのですが、この前、友人の新築祝いに行ったら、トイレとか浴室の設備が全然便利になっているんですよ。ああ、建て替えるのをもう少し待てば良かった、と女房と話していたんですよ。
D 4年待ったって、また年数が経てばもっといい設備ができますからイタチごっこですよ。
A つまり、「新築そっくりにすればすぐに空き室は埋まるだろう」という考え方は、かなり幻想ではないかと思うんですね。数年すれば新しかった設備も再び時代に合わなくなり、さらにリフォーム費用をかけて・・・・そんな悪循環になりかねません。
D 世の中には、次から次へと「新築物件」が誕生していますからね。それと真っ向勝負するのも無理がありますね。その新築もまた、次の新築より古くなるのだから。
G あれ、我々が今の若い男性と勝負しても勝ち目がない、というのと話が似てる(笑)?
M そう、若さで勝負しても勝てませんよ。“落ち着き”とか“しぶさ”とか“経済力”で勝負しないと(笑)。
司会 ・・・・と言うことは、新築の価値を追うのでなく、新築にはない、皆さんの物件のならではの価値を作りだそう、と言うことですね。
A そうですね。入居者希望者は常に我々の物件とほかの物件を見比べていますから、「新築・新築同様」とは違う価値を提示して、そこに魅力を感じて貰えればいいのですけれど。
G でもそれは、口で言うほど簡単なことではないよね。「新築の価値」というのは見た目にとても分かりやすいもの。「新築にない価値」ってどうやって創造したらいいのか。
D さっきMさんが、我々中年の魅力は“落ち着き”とか“しぶさ”と言ったけど、賃貸住宅にも「安らぐ」とか「和む」とか「癒す」といった、時代を経たものだからこそ出せる雰囲気というものがあります。その部分を生かす、ということが可能かもしれませんね。
M そう、入居者に「この部屋に暮らしてみたい」と思ってもらえるような部屋にしなきゃダメなのですね。
A 入居者ニーズという言葉を聞いて、何を思い浮かべますか?
G 「家賃の安さ」「広いこと」「新しいこと」。
M 「駅から5分以内」「フローリング」「充実した設備」「安心のセキュリティー」・・・・こんなところでしょうかね。
A そうですね。大抵そんなことがらを思い浮かべますね。でもそれらは、入居者が部屋を選ぶ際に重視する「基準」や「指標」であって、本当の意味の「ニーズ」ではないのではないでしょうか。
G 「基準」や「指標」?「ニーズ」ではない?
A だって、これが本当に「ニーズ」だったら大変ですよ。部屋の広さに対して家賃はギリギリまで下げなければなりませんし、築10年も過ぎた物件は壊して建て替えなければなりません。駅から遠い物件はそれだけでノーチャンスです。
D でも実際には、駅から近くて新築でも空き室はあるし、駅から離れた築数十年の和室で、決して周辺と比べて家賃が安いとはいえないのに、部屋が埋まっている物件もありますね。
A たとえば全く同じような駅からの距離、階数、広さ、間取り、築年数、設備の物件があったとします。そのどちらを選ぶのかというと、ふかふかの布団で寝るのが好きな人は南向きの日当たりのいい部屋を選ぶでしょうし、お風呂にゆったりと浸かるのが好きな人はお風呂の広い部屋を選ぶと思います。入居者の本当の「ニーズ」というのは、場所や築年数、広さや設備といった、物件が建った瞬間に想定されるものではなくて、入居者それぞれのライフスタイルの中にあるのではないでしょうか。D なるほどなぁ。単なる「基準」を「ニーズ」と勘違いしていたのかもしれませんね。
司会 お話が核心に迫ってきたところで時間です。続きは次回にお願いします。
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