賃貸倶楽部21 > 「空き室対策について」C
司会 「空き室対策」と言えるかどうか分かりませんが、地震対策について、皆さんの物件では何かしていますか?
M 特にしていませんね。
A ぼくの物件は築28年経っていますが、やはり何もしていません。実は前から気になっていたのですが、地震の際の建物所有者の責任というのは、どこまで負うのでしょうか?
D あ、それなら記事を読んだことがありますよ。確か阪神・淡路大震災のとき、所有者に対して1億円以上の損害賠償が命じられたそうです。
G え、1億円も!
司会 はい、正確には1億2900万円です。賃貸マンションの1階が倒壊し、1階部分の賃借人が死亡した事故について、マンションの設置の瑕疵が認められ、所有者に対して土地工作物責任が認定され、7名に対しての合計賠償額です。
A たくさんの建物が倒壊した中で、所有者の責任が問われた、というのは怖い話ですね。
司会 この建物は1964年竣工で、当時はRC建物の建築コストが高かったため補強コンクリート・ブロック造というものでした。しかも、当時要求されていた壁厚や壁量の基準を満たしていないものを軽量形鋼で補強し、逆に駆体の一体性が損なわれて耐力不足となるという欠陥があったのです。
G はぁ、欠陥建物だったわけだ。司会 阪神・淡路大震災では、崩落したホテルにも、死亡した宿泊客2名に合計1億100万円の賠償命令が出ています。同じく1964年の建物で瑕疵が認められたケースです。
A 我々の所有建物に瑕疵があるかどうか、どうしたら分かるのでしょう。ぼくの建物は古いので、特に心配ですね。
D それには、耐震診断をすればいいと思いますよ。自分の建物がどれだけの耐震力を持っているかを調査することですね。
M 特に1981年6月1日より前に建築確認許可を得た建物は「旧耐震基準」と言って、耐震強度に不安があるようです。
A ぼくの建物は1979年築ですから、その“旧”にあたる訳ですね。G その“旧”の建物は、すべて大きな地震で壊れてしまう、というわけですか?
M 一概にそうとは言えないと思いますが、阪神・淡路大震災で倒壊した建物の多くは“旧”だったようです。
G でも、いくら強度が不足しているからと言って、建てた時点では法律にパスしているのだから、所有者の責任を問うのは変ですよね。
司会 先ほど紹介した2例は、当時の基準に照らしても瑕疵があったというケースですから、“旧”の建物の所有者が全部責任を問われるわけではありません。
A しかし自分が所有している建物の強度が、現在の基準を満たしていない可能性が高いとなると、所有者の責任として、調べる必要はありそうですね。
D そのひとつの目安が1981年より前か後かなのですね。
A それで不動産業者が仲介するときに「耐震診断をしたか」と聞いてくるようになったのですね。ところで耐震診断というものは、どのようなものですか?
司会 木造住宅の場合、国交省が薦めているのは、まず最初に「誰でもできるわが家の耐震診断」を行って、専門家による診断が必要かどうかの参考にするようです。見れば誰でも分かる10項目をチェックして、1項目でも点数がつかなければ専門家の診断を推奨しています。
G どんなチェック項目です?
司会 建築年や増築の有無、痛み具合や大きな吹き抜けがあるか、屋根材や基礎についてなどです。
A それで点数が悪ければ専門家に診断を頼めと。
司会 7点以下なら早急な診断を薦めています。
G 1981年より後の新耐震基準なら診断の必要はないのですか?
司会 いえ、“旧”も“新”もです。“旧耐震基準”の方が点数は低くなると思いますけど。
A 耐震診断にかかる費用はどれくらいですか?
司会 建物によって異なりますが、全く目安がないわけではありません。耐震診断を実施している建築事務所の費用を見てもみると、木造戸建て住宅の耐震診断費用は、一般診断の場合にはおおむね3〜10万円程度で、精密診断の場合にはおおむね30〜50万円程度が多いようです。図面の有無や建物の構造などで違いがでますが。
M どこに相談したらいいのでしょうね。
D それは前に調べたことがあって、市区町村の建築行政部や建築課に問い合わせると、その地域での建築士事務所を教えてもらえます。
司会 日本建築防災協会のHP http://www.kenchiku-bosai.or.jp/ で一覧を入手することもできます。
A 耐震診断をして、建物の強度に問題があることが判明したら、補強工事をしなければなりませんね。
G それはまた、費用がかかりそうだな。
M 確かに倒壊の可能性を指摘されたら補強工事を実施しなければいけないでしょうが、耐震補強の目的のみの工事では、我々オーナーの負担感が大きいです。見栄えをよくしたり利便性を高めるなどの、集客力増強のためのリフォーム工事とあわせて補強工事を実施するなど、入居率アップのための積極的投資につながるものにしたいですね。(つづく)