賃貸倶楽部21 > 更新料について考える
更新料の徴収が是か非かで裁判が行われています。その結果も気になりますが、更新料とはいったい何なのか、進行中の裁判のレポートとともに考えてみましょう。
更新料の全国の実態は
この更新料徴収の実態はどのようになっているでしょうか。
全国的に見て、一般的に更新料を徴収している地域は東京、神奈川、埼玉、千葉などの関東です。
ほとんどではないが更新料を徴収するケースが多く見られる地域として、京都、愛知、長野、沖縄などの地域があがります。
ケースとしては少ないが、一部徴収している事例が見られるのが、北海道、富山、広島、愛媛、福岡など。
まったく徴収していないのは、大阪、兵庫、宮城などとなっています(国土交通省調査)。もっとも大阪と兵庫は、敷引き金として多額の金額を借主から徴収するので、それが更新料の代わりと解釈されているようです。
徴収する金額は、2年ごとの更新時に家賃の50%から1ヶ月分を、というのが大半ですが、今回争われている裁判事例のように、1年ごとに家賃の2ヶ月分という額を徴収する京都のようなケースもあります。
実際には更新料の有無や金額だけを単独で捉えるのではなく、一次的な費用として敷金、礼金、敷引き金などもあわせて考えなければなりません。
家主さんはなぜ、更新料を徴収するのか、国土交通省が調べたデータによると下記のような結果になっています。
1.長年の慣習 55.1%
2.一時金収入として見込んでいる 55.1%
3.損耗を補修するための財源 30.6%
4.一時金を払えない人は不安 18.4%
5.家賃が低い分の収入を確保 12.2%
6.立ち退き料の支払い等への備え 6.1%
7.大規模修繕を行うための財源 4.1%
8.その他 16.3%
やはり一時金収入として期待している傾向が強いようです。
物件の老朽化に伴い、損耗箇所を補修するための資金としての役割も果たしているようです。
また、これまでずっと続けてきた慣習として認識されていることも分かります。
京都の裁判の影響はあるか
いま京都地裁で争われている裁判の概要については、過去の本誌をお読みいただくとして、この問題は今回の裁判に限られるのか、その結果が他の地域まで影響を及ぼすのかは、とても興味のあるテーマです。
ある人は「1年ごとに賃料の2ヶ月分の更新料は高すぎるので、今回の訴訟は希なケースだろう」と言っています。
たしかに通常は、「2年で賃料の1ヶ月分」が多いので、それと比べると今回は実に4倍の徴収額となりますから、同じ土俵では語れないでしょう。
裁判が行われている京都でさえ、「1年で2ヶ月分」という条件は、決して一般的ではないのです。
そこで、今回の裁判の論点が、「更新料の額が問題」なのか「更新料という制度そのものに問題がある」としているのかによって、他の地域への影響が違います。
問題が後者にあるならば、今回の訴訟の影響は京都に限ったものではなくなります。
これについて京都の更新料返還請求訴訟で借主側がどのように主張しているのでしょうか。
「今回の訴訟は、更新料の法的根拠と合理性を問うものだと考えています」。借主側の弁護団団長はこのように断言しています。
更新料そのものに妥当性があるのか、そもそも更新料とは何か、ということが問題にされているのです。
もし更新料に法的根拠や合理性が認められないと、消費者契約法10条に照らし合わせて無効、ということになってしまうでしょう。
「その意味では、今回の訴訟は更新料を慣習的に徴収している他の地域にも影響があると考えられます」。
つまり、京都以外の地域にとっても、今回の訴訟は対岸の火事では済まされない、と借主側の弁護士は言っています。もっとも裁判所の判断は、仮に更新料に合理性がないとしても、そのときの更新料の額の多少に少なからず左右されるはずですが・・・・。
貸主側=被告側の反論は
8月7日に行われた第一回口頭弁論で、双方の意見陳述というものがありました。
借主側は、「更新料の特約は、民法と消費者契約法に違反して無効である」と主張し、貸主側は「更新料の特約は、民法にも消費者契約法にも違反していない」と真っ向から対立しています。
もうひとつ貸主側は、法律論に入る前の疑問点として、次のような主張をしています。
「そもそも借主は、更新料の説明を受けて自分の自由意志で契約し、更新料の支払いを5回も続け、入居している間、更新料の支払いについて全く異議を言わずに住み続け、退去して半年も経ってから支払った更新料の返還を請求すること自体、一般の社会人のとるべき態度として常識的におかしいのではないか」ということです。
これは、全くその通りの主張だと思います。
約束を守るということは社会の基本的原理であり、消費者保護と同等に尊重されなければなりません。現在の日本の流れの中で、行き過ぎた消費者保護は間違っているとの声を上げざるを得ません。
しかし、これからの更新料は
今後も更新料が徴収し続けられるのか、という問題ですが、このことは更新料を単独で考えても意味がないでしょう。
家主さんの収入全体のバランスで考えるべき問題です。
大事なことは一定の期間において、賃料、礼金、更新料、敷引き金などの総収入が一番多くなる方法を考える、ということです。
更新料が法律上で徴収できたとしても、部屋が空いていたら何にもなりません。
これは本誌でも度々ご案内してきた考えですが、これからは入居者に、なるべく永く住んでもらうことが大切だと思います。
2年ごとに更新料を徴収することが、間接的にでも解約の引き金になるとしたら、更新料を取り続けることが総収入のプラスになるのでしょうか。
また、競争力のある魅力的な物件なら更新料があっても部屋はすぐに決まるでしょう。
要は法律論ではなく、いつも努力と工夫を重ねて、物件の価値を上げることを怠らなければ、更新料でも礼金でも徴収できるのではないでしょうか。
でも、それらの一時金より、賃料という継続的に入ってくる額を高めることが(空き室を発生させないことも含めて)優先されることではないでしょうか。
賃貸倶楽部21 > 「更新料について考える」
川崎市 中原区・高津区の不動産