賃貸倶楽部21 > シリーズ 家賃滞納の督促B
前回は「回収ができる法的手続き」についてお伝えしました。
「公正証書」「支払督促」「少額訴訟」の3つの方法です。あくまでも話し合いによる決着(支払うか、出て行くか)を目指すべきであり、強制執行するのが本目的ではないこともお伝えしました。
今月は最終回として「明け渡しのできる法的手続き」についてお伝えします。
滞納を繰り返す借主に対して、「期日どおりの支払いに追い付くまで辛抱強く催促を続ける」か、「出て行ってもらうか」の選択が必要です。
下記の1か2なら「明け渡し要求」を選択すべきす。
1.次の募集がスムーズに進むと予想できる(賃料下げ、空室の長期化は避けられる)。
2.相当に悪質で入居が長引けば被害が拡大すると予想できる(暴力団、詐欺、開き直りなど)。
ここで決断が必要ですが、それは、ある程度の損害は覚悟しなければならない、ということです。賃料滞納による明け渡しを求める場合に、被害ゼロで解決する、というのは難しいでしょう。「何とか入金させてから出て行ってもらう」という考えだと、さらに傷口が拡がることになってしまいます。一日も早く追い出して、次の優良入居者を確保するという考えに切り替える必要があります。退室した滞納者に、あとで請求を続けることが可能な場合もありますし・・・・。
明け渡しを迫る場合にも「話し合い」と「法的手続き」の方法がありますが「話し合い」で決着をつける方が経済的な損失が少ないのは言うまでもありません。前回お伝えした「公正証書」「支払督促」「少額訴訟」による方法は、明け渡しを強制執行することは出来ませんが、これによってプレッシャーをかけて、自ら出て行くようにし向けることは可能です。
交渉を重ねる過程で「契約解除合意書」や「残置物等の処分依頼(承諾)書」などの書面を作成して、出て行くしか方法がない状態にしていきます。
でも、話し合いによる任意の退室が難しい場合、法的手続きによるしかない場合もあります。むしろ最初からこの方法に訴えた方が被害が少なく済むケースもあるでしょう。明け渡しの強制執行が可能な法的手続きとはどんなものでしょうか。
滞納している借主に支払いを求めると「いついつまでに支払うので待って欲しい」と訴えられるケースが多いでしょう。その場合、「支払い約定書」を作成するのが普通ですが、この書類に強制力はありません。「公正証書」にする方法も紹介しましたが、明け渡し執行をすることはできません。「明け渡し訴訟」を起こす方法もありますが時間と費用がかかります。
そこで「即決和解」という方法があります。
即決和解とは、貸主と借主が簡易裁判所に出かけて、裁判所で和解する手続をとることをいい、和解が成立すると、和解調書が作成されます。借主が約束の日までに支払わなかった場合はこれを債務名義として明け渡しの強制執行をすることができます。裁判所に申し立てる前から当事者で和解が成立しているので「即決」の名前が付いています。手続きの方法は管理会社か弁護士さんに確認してください。この方法は比較的短期間で強力なパワーを手に出来ますが、相手(借主)が従順な人でないとうまくいきません。借主が裁判所の定めた日に来ないと和解が成立しないからです。
最後は通常の訴訟による明け渡し請求です。弁護士さんに頼むのが普通です。費用は弁護士さんによっても違いますが、はじめに20万〜30万円、あるいはそれ以上の地域もあります。訴訟提起から判決のでるまで、順調に進めば2ヶ月程度のようです。そのあと、執行文のついた判決がでれば即日申立てをして、強制執行まで通常1ヶ月半から2ヶ月、早ければ3ヶ月ちょっとで決着がつけられるようです。
ここまでの費用は、弁護士さんや運送業者、保管料その他で70万〜80万円程度はかかると言われます。この間は賃料も入ってきませんから、損害総額は大きく膨らんでしまいます。強制執行による方法で決着をつけることがオーナーの為にならない、言われる所以ですね。