賃貸倶楽部21 > 「ペット可」を考える
空室対策のひとつとして「賃貸条件を緩和する」方法が取りざたされます。その代表格は「ペットを飼育してもOK」という条件でしょう。しかし、それは分かっていても、なかなか踏み切れないのも事実です。今月は「ペット可」について考えます。
まず現在の日本のペット事情はどのようになっているでしょう。実は統計数字を見ると、こんな事実が浮かび上がります。
この疑問に対して実態は、5世帯に1世帯が犬を飼っています。猫は6世帯に1世帯で飼っています。
3世帯に1世帯は犬を飼った経験があると答えています。
れに対して2世帯に1世帯は、飼うことを希望しています。
犬一頭の生涯にかける費用は350万〜550万円とも言われ、その額はますます増える傾向にあります。
なぜ多くの日本人がペットと暮らす事を希望するのでしょうか。世論調査によればペットを飼う理由として、「安らぎが生まれる(55%)、「和やかになる」(45%)、「子供が豊かに育つ」(41%)など、ペットに「癒し」を求めている実像が浮かびます。
では、日本の住宅事情が現実にペットを飼える環境になっているか、というと「持ち家」「賃貸」の間に大きな差があることが分かります。一昨年に分譲されたマンションの半分以上が「ペットの飼育OK」でした。6年前は「ペット可」の分譲マンションはほとんど見られませんでしたから、驚くほどの増加です。
しかし賃貸住宅となると、正確な統計数字はありませんが、まだまだ「ペット可」物件は少ない状況です。ペットを飼いたいのに飼っていない理由として「飼育できない住宅に住んでいるから」という回答が7割を超えているのが何よりの証拠です。つまり、「ペットが飼えるなら飼いたい」と考えている潜在需要が相当にある、ということです。
ペット用の設備などを何も導入せずに、単に条件としてペット飼育を許可した住宅では魅力がありません。求められているのはペットと暮らす喜びであり癒しです。単なる「ペット可」でなくペットと共に生きる「ペット共生」と呼べる住宅が求められています。
そのためにまず、臭いや汚れを簡単に処理できる設備が有るといいと思います。散歩中の汚物を流せる施設や汚れた足が洗えるシャワーを共用部に設ける、室内に臭いがこもらないような脱臭器をセットする、などです。次にペットの健康に配慮した仕様として、滑らない床材なども考えたいところです。
ペットは7歳からは「高齢」といわれるので実に半分近くのペットがこの部類に入るのです。
そして、入居者とペット同士が顔を合わせられるコミュニティスペースやドックランがあると、飼育者同士の交流が生まれるのでトラブルの防止にも役立ちます。
入居促進策として費用をかけるのですから、何年たっても、あるいは同じ「ペット可住宅」との競争に負けないようにするためにも、安心してペットと暮らせる住宅にしたいものです。
賃貸住宅でペットを飼育するとトラブルと無縁ということはありません。実際にそれがイヤで「ペット可」に踏み切れないオーナーは多いと思います。「無駄吠え」や共用部分での排泄など避けて通れない問題です。 しかし独身世帯向けの1Kタイプを作れば、ゴミや騒音の問題に悩まされますし、賃貸住宅を経営すること自体がトラブルとは無縁で済まないことではないでしょうか。要は、トラブルをいかに事前に想定して未然に防ぐ手立てを講じるかです。
そのために入居前にペットと飼育者を面接したほうがよいでしょう。ペットのトラブルは飼い主のモラルが原因によるものがほとんどだからです。
次にペットを飼う上でのルールを明確にして、規約をつくり入居者に説明して署名を求めます。
入居者同士の交流も大切です。そのためのコミュニティスペースがほしいのは前述した通りです。
ペットのトラブルに一番悩むのは飼育者ご本人ですから、それらが起こりにくかったり解決できる環境のある賃貸住宅は、大きな支持を得られるはずです。