賃貸倶楽部21 > オーナーの危機管理
司会 アスベストや耐震性能にはじまり、最近ではエレベーターやガス湯沸かし器など、賃貸住宅を所有するオーナーに責任が及ぶ可能性のある問題が増えているような気がします。皆さんは、賃貸経営における危機管理について、どのようにお考えですか。
T 危機管理とは大げさな言い方ですね(笑)。15年前にハウスメーカーに進められてアパートを建てたときは、営業マンは「賃貸経営はバラ色だ」みたいなことを言っていました。実際には修繕も必要だし空き室の心配も出てきたし、家賃も下げなければならないし、想定外のことが多くおこりましたね。
S そういう意味では、司会者さんが言われるように、想定外の出来事に備えた危機管理、マネジメントリスクが必要だ、というわけですね。東京ルールに代表される紛争も増えたしね。
K 私は所有している36室のマンションを一棟ごとサブリースに出しているのでそんなに心配していません。満室時の収入と比べると確かに減りましたが、空き室や入居者との紛争に巻き込まれなくて済むので、そのための保険と考えています。
S なるほどね。サブリースというのも危機管理方法のひとつなんですね。
U 私は18戸のアパートと22戸のマンションを、不動産会社に管理をすべて任せています。トラブルが起きても私が知らない間に解決してくれるので楽ですよ。空き室や家賃の値下がりは確かに困りものですが、危機管理なんて、そんなに考えなくてもいいのではないでしょうか。
司会 Aさんはどうですか?
A 私は少し神経質かもしれませんが、最近の報道を耳にする度に、とても心配になっています。私のマンションのエレベーターは日立エレベーター製ですが、もしシンドラーだったらどうなっていただろうか、と。
S すぐに使用停止にしなければなりませんね。
A 使用停止どころか、もしあの事故が自分のマンションで起きていたらタダでは済まないと思うんです。
T オーナーが罪に問われる?
A その可能性もあるでしょうし、事故があったマンションではだれも住みたくないでしょうし・・・・。
U でも管理会社に任せておけば大丈夫なのではないですか。そのために定期点検をしているのでしょう。まずい事があれば管理会社が対処してくれると思います。
T 私は5年前にこんな事件がありました。退室した入居者から「敷金を返せ」と訴えられたのですが、その方とは入居中は挨拶も交わし関係も良かったので驚いたのです。
S はあ、そういう手のひらを返すような入居者はいますよね。
T いえ、そうではなくて、間に入っていた管理会社が問題を複雑にしていたのです。
司会 と、言いますと?
T 管理会社も私に良かれと思ったのでしょう。預かっている敷金以上の修繕費用を入居者に請求していたのです。かなり多額です。そこでかなり揉めて、交渉を何度も行ったようなのですが、裁判所から訴状が来るまで、管理会社からは全く報告がなかったので、本当に驚きました。そのときは、何でも管理会社任せにしても、最後の責任は自分のところに回ってくるのだと、つくづく思いました。
U 管理会社はあまり信用しない方がいいと?
T いえいえ、信用できる一生懸命の管理会社は我々に必要だと思います。でも、司会者さんが言われる危機管理というのは、すべて他人任せでは解決しないし、いざとなったときの責任はオーナーに来る場合も多いと思います。
K 私のようにサブリースしている場合ならどうでしょう。責任もサブリース会社にあるのではないでしょうか。
A サブリースといっても様々なので、契約の内容によるのではないですか。単なる家賃保証をサブリースと称しているケースもあるみたいですし。原状回復費用はオーナーとサブリース会社のどちらが負担するとか、建物や設備の管理責任の範囲と内容とか。
K そうですね。細かなところを再チェックした方がいいかもしれませんね。
S そのチェックは確かに必要だけど、でもサブリースというのはリスクを減らすという意味では、良い選択肢ですね。条件次第だけど。
司会 ガス湯沸かし器を使用している物件はご所有ではないですか。
S ぼくのは一番古くて16年ですから、もう給湯器の時代です。
U 私のも築12年ですから給湯器です。
A 私は父が残してくれた貸家が4戸ほど、築24年のものがありまして、皆さんガス湯沸かし器を使用しています。
司会 今回の件ではどうされました?
A 調べたら、元々付いていた設備ではなく入居者の方がそれぞれ設置したものでした。簡単な契約書なので何も書いてないので、ひとつひとつ聞いて回りました。
S それじゃ責任もないし安心ですね。
A そうなのですが、万一のことがあったら大変なので、ガス屋さんを呼んで調べてもらいました。そうしたら該当機種でもないし、変な工事もされてない、というので、やっと安心しました。
S Aさん、ほんとに心配性ですね(笑)。
T 確かに(笑)。でもAさんのお話を聞いていると、心配しすぎるくらいの方がいいと思えてきました。せっかく積み上げてきたものが、ひとつの事件で吹っ飛んでしまうこともあるわけですから。
S それでは賃貸経営はやってられませんね。
A そうは言っても、土地の利用方法とか投資を考えたとき、賃貸住宅の需要は、テナントや他のものと比べたら堅いですし、まだリスクは低い方の部類といえるのではないでしょうか。それ以外の方法は思いつきませんし。
U 大切なのは、そのリスクを私たちが意識することと、その気持ちを管理会社に伝えて共有することなんですね。そして方法を一緒に考える。それに応えられない管理会社なら考えないと。
S そう。そういう管理会社は考えないといけませんね。
司会 前向きなご意見が出ました。
これからもオーナーさんの前には色々な問題が出てくるかもしれませんが、そのひとつひとつに前向きに取り組むことが、競争に負けない賃貸経営を行う道なんですね。
本日はありがとうございました。